ゴカジにて
少しばかり更新に期間があいてしまいましたので、今回はいつもよりちょっと長めです。
「だから、魔力をそのまま固定してしまったらダメなんだって」
「そんなこと言っても難しいよ・・・」
「自分の体の中は魔力を固めるのをある程度に抑えて、表面から離れるほどより強く固める感じだよ。こんなふうに。」
俺はマストの上から甲板目がけて飛び降りる。
最近出来るようになった浮遊術の練習と、それをライカに教えているところだ。
「へぇ~、、ご主人様は人族なのにホントに器用なんですねー。魔族であるボクよりも魔力のコントロールが上手ですよ」
甲板に着地したところで俺達の様子を見ていたレンから声を掛けられた。
「そうなのかな?レンはどうやってるのか分かるでしょ?」
「もちろん、分かりますよ!ただ、同じことをやれと言われてもそこまで細かくコントロールするのはかなり練習しないとできませんよ」
「でも、ユイはすぐにできるようになったよ?」
「人族の中でもお二人は異常なんですよ」
まさか奴隷にこんなことを言われるとは。
「まぁ、浮遊術なんて言っても自力で浮き上がるのは少しだけで実際使えるのは落下スピードを殺す時くらいなんだけどねぇ」
そうなのだ。思いついて以降練習しているのだが、どうしても自由自在に空を飛べる程にはできないでいた。と言っても、まだ練習3日目だけど。
「いえいえ、それができるだけでも随分すごい事だと思いますよ?」
「ホントはもっとこうバシューッ!って飛べるようになりたいんだよね。カッコイーじゃん?」
「擬音だけの説明ではイマイチ分かりませんが、翼をもつ魔物でもそんな飛び方しないと思いますよ?」
「そっかー、まぁもう少し練習してみるよー」
「はい、頑張ってください。終わった頃におやつ用意しておきます」
そういうとレンは船の中に入っていった。
さて、じゃあもう一度マストの上まで上がるか。
俺はその場に膝をつき手を地面に充てる。
その場に魔力の板を作り出し物理的に干渉できるレベルにまで固め、そのまま上空へと移動させる。
もちろん、俺を乗せたまま。
透明のエレベーターに乗っているような感じだ。
これが、自由に空を飛び回ることが難しいと分かった後、試行錯誤して辿り着いた一つの結論。
これがなかなか使い勝手がいいのだ。とりあえずこれもオリジナル魔法ってことになるのかな?
俺達は【魔法板】って呼ぶことにしたんだ。
【魔法板】を操るのは俺とユイにとっては比較的簡単だった。
しかし、ライカにはこれも難しいようでそれならば一緒に浮遊術の練習をするの事になったのだ。そして、これがうまくいったら今度は飛翔術の練習ってわけだ。
いやぁ、夢が広がる!
そーらーをじゆうにーとーびたーいなー
うん、できるよ!
って言いたい。
よく考えたら空を飛ぶ魔物だっている。それらを地上から狙い撃つぜ!ってのは、それはそれでカッコいいけど普通に考えて不利だ。制空権を握れる有利さってのはやっぱりデカい。
そうこうしているとマストの上にまで辿り着いた。
「ライカ、どお?」
「ぅぅぅ・・・ちょっと・・・・待って・・・今・・・集・・・中・・・してる・・・から・・・」
あ、はい、ごめんなさい。
魔法を使うに当たっては事イメージが大事になる。そのため集中力ってのはかなり必要なんだよね。
「邪魔してごめんね」
ふと甲板の反対側を見た。
そこにはジーナとリンダがスピカ達に剣術を教えていた。
といっても、まだ初歩中の初歩。スピカに簡単な素振りを教えているが、横でカイロスとフィルも見様見真似でやっていた。まぁ、最初はそんなもんかもね。見ていて微笑ましいのでしばらく眺めていた。
「えいっ!」
ライカの掛け声がしたのでそっちを見ると、ついにマストから飛び降りていた。
落下速度をうまく殺してゆっくり降りている。
しまった!
俺が下にいれば
「親方!空から女の子が!!!」
って言えたのに。
というのは置いといて、ライカはあっという間に甲板に辿り着いた。
落下速度は一定で、ふわぁ~と降りて行ったので無事着地も出来た。
俺とユイも同じようにマストから降りる。
「やったじゃん!ついにできたね!」
「うん!できた!怖かったけどうまくできた!やったよ!」
一頻喜びあい、その後逆にここからマストまで浮遊術でなんとかたどり着けないかと練習を開始した。
俺とユイは一応たどり着ける。でも【魔法板】みたいにすぅー!とはいけない。
じわじわ浮き上がるのが精いっぱいなんだ。
それでも、この練習を続けて行けば少しずつ慣れていくんじゃないかなーと思っている。
ライカも落下速度を殺せたんだからきっとできるようになるはず。
そうやって練習を続けていると、レンがおやつができたといって呼びに来た。
ジーナ達も剣術の練習を中断しておやつタイムにした。
「しょれでね、みゃしたギユドにいってモグモグ・・・あちゃらしゅい」
「はい、飲み今度からしゃべろう!」
モグモグゴッキュン。
という音が聞こえて話を聞いてみると、
「それでね!明日ギルドへ行って新しいクエストを受けてくるつもりなんだ!」
と言いたかったらしい。
「だったら俺達も何かクエストを受けてみようか。できれば2~3日で終わる程度のものをね」
まだこの町には1週間程度は滞在予定だけど、カジット伯爵の館に様子を見に行ったりもしないといけないので何日も離れるのは無しで考える。
「じゃあ一緒に行こうか。もちろん、スピカのクエストは俺達は手伝えないし俺達のクエストはスピカにはまだ早いから見学だけになるけど」
「ほんと!?いいの!!??やったぁ~!実は一人で行くのはちょっと心細かったんだ」
という訳で、俺達4人は冒険者ギルドにやってきていた。
4人というのは、俺・ユイ・レン・スピカだ。
ジーナとリンダはスピカ達に剣術を教えていて初心を思い出したらしく二人で剣術の修行をすると言っていた。まぁ、本音のところは痺れ薬の効果があったとはいえ、剣士ではないラムサスに剣術で押されたのを気にしているらしい。俺やユイでは相手にならないから二人で稽古をするといって朝早く森の方に出掛けて行った。ちなみに俺とユイも剣術の稽古はやっている。・・・が、ジーナやリンダとは差が開く一方。転生前の体よりもよっぽど優秀なこの体でも、何でもできるってわけじゃないらしい。どっちにしても基礎体力は必要だからもちろんこれからも続けるけどね。
そしてライカはというと、スピカがいないからカイロスとフィルの家で子守りするんだっていってカイロスたちの家に行った。
そんなわけでクエストを受けるのは俺達5人となったのだ。
「このクエストなんかどうかなぁ」
「ん?どれどれ?・・・・ああ、ゴブリン討伐クエストか。常駐クエストだし、必ず初心者が通るクエストだからいいんじゃないかな。討伐した証拠にゴブリンの耳を持ち帰るやつだね。町から西にいった草原地帯から森のある地帯にかけて出没するってよ」
「よーし、がんばるぞ!」
意気込んでているスピカは置いといて、、、俺達はどうするかな。
「ご主人様、これなんてどうですか?」
レンが見つけて来たクエストを見てみる
「コモドリザード退治クエストか。場所は町の西の森林地帯の中ほどにある沼地ね。場所的にはスピカと同じ方向だからいいとして、コモドリザードって魔物はどんな奴か知ってる?」
「魔物ではなく、イグアナのようなワニのようなのの魔獣ですよ。ご主人様たちはべらぼうに強いから楽勝ですよ!」
え、ああ、うん。
俺達は強いのか。でもそれを鵜吞みにしてよく分からないまま戦うのはちょっと怖いな。
「じゃあとりあえずそのクエスト受けてくるね」
俺はユイとレンのギルドカードを受け取り受付に持って行った。
そこで一応コモドリザードの情報を聞いた。
森と沼地に生息する魔獣で討伐の証拠として尻尾の先を切り取って持ってくるというのがクエストだ。ちなみに、コモドリザードの肉は食用に、皮は素材になるようで買い取り可能という事だった。
火の耐性があり、【火球】を使う個体も確認されているらしいので注意が必要だそうだ。
レンよりは少しだけまともな情報を聞けたのはよかったものの、それ以上の情報は望めなかったのであきらめて出発することにした。
もちろん日帰りの予定だけど何が起こるか分からないから一応保存食なども用意して出発!
町を出るとスピカを先頭に俺達が付いて行く。
まぁ町の近くだと強い魔物もいないだろうし、雑魚敵が出てくればスピカのいい経験になるし。
とはいえ、見渡す限り魔物なんていないな。
「もう少し先までちょっと走るか。スピカ、おんぶしてやるからほら、背中にのりな」
「え?俺まだまだ元気だよ!?」
「いいからいいから、さっ!はよっ!」
腰を下ろしている俺の背中にユイがスピカを乗せる。
「よっしゃいくか!レン、付いてこれなくなる前に言えよ?」
「え?は、はい」
「よし、いくぞ」
俺とユイは【身体機能強化】を使うと一気に走り出した!
俺は背中にスピカを背負っているけどユイは自由なので両手を横にして「キーーーン」とか言いながら走っている。うん、たぶんそのくらいのスピードは出てるよね。
レンは「ご主人様はやいーーー」と言っているが、ちゃんと付いてきているあたりさすが魔族なんだなぁと思った。
しばらく走っていると、平原地帯を抜けて木々が増えて来た。
「よし、この辺でいいかな。スピカ、降りろっ!」
ん?なんの反応もない・・・?
後ろを見てみると、目を開けたまま固まっているスピカがいた。
「おーい、スーピーカー?」
「・・・・っは!あ、なんかびっくりしてその・・・」
「おいおい、これからクエストなのにそんなんで大丈夫か?」
「だ・・大丈夫!頑張るからみてて!」
頭をプルプル振ると気合を入れなおしたようで、やる気の顔になった。
「じゃあこの辺から俺達はスピカの後ろを付いて行くけど基本的には手出ししないから一人で頑張ってみるといい。危なくなったら手を貸すから安心していいよ」
「分かった!」
「じゃあユイ、レンこっちにきて。そうそう。【認識疎外】」
俺達3人は気配を消してスピカに付いて行く。
森にはいってすぐにゴブリンがいた。しかも丁度一匹、しかもこちらには気づいていない。
絶好の機会を得たスピカは気付かれないようにそーっと近づくと、背後から斬りかかった!
背中をザックリと切れたものの、まだゴブリンは生きており振り返るとスピカに襲い掛かる!
「うわっ!」
間一髪で攻撃をかわすと持っているナイフを振り回す。
・・・剣術の稽古はどこにいったんだ。。。型も何もない、ただ振り回しているだけじゃないか。。。
それでも振り回したナイフで少しずつダメージを与えているっぽい。
ゴブリンも負けじと攻撃してくるが基本殴りかかる、噛みつくの2択。何度か殴られたものの、噛みつかれることはなんとか避けていた。
「スピカ、剣術の稽古しただろ?型を思い出せ!」
俺が声を掛けると、どこから声がしたのか分からないのか一瞬びっくりしたようだけどナイフを正面に構えると振りかぶりまっすぐ振り下ろした。
それが見事ゴブリンの肩から胸にかけてザックリと入りそのまま倒れると動かなくなった。
「やった!やったよ!!」
スピカははじめて自分一人の力で魔物を討伐した喜びにはしゃいでいる。
「うーん、60点。そのうち20点は初クリアボーナスみたいなものだけどね」
【認識疎外】を解除してスピカに近づきながら俺が声を掛けると、はしゃいでいる動きを止めて頭の上に大きな疑問符を浮かべるスピカだった。
「まず、せっかく相手に気づかれないように接近したのだから斬りかかるのであれば首だよ。まず致命傷を狙うべきだよ。結果一撃で仕留めきれなかった場合一度相手の攻撃範囲から離れ隙を見て再度攻撃という方法のほうが安全だ。見たところスピカの得物だと火力よりも速度重視だろう?」
「速度重視というか・・・武器はこれしか買えなかったの」
そこには孤児としての同情を誘うには十分な理由があったのだが、この場合それを理由に戦い方を決めていい話ではない。
「だとしても、だよ。持っている武器の特性として正面から打ち合うものじゃないからね。それにスピカ自身も小柄な体躯を生かして速度重視で相手の虚を突く攻撃のほうが向いてそうなのは分かる?」
「そっかぁ。うん、わかった!」
自分の行動の反省点を告げられても即座に納得できる素直さというのはいいものだ。
「あとは、戦闘終了後周囲の警戒を怠らない事。戦闘に集中してて他の魔物が近づいて来ているかもしれないということは頭の片隅から外していけない。周囲の安全を確認できたら討伐した魔物から証拠品である耳の剥ぎ取りだね。他にも売却できそうなものがあればそれも取っておく必要があるけど、ゴブリンだととくにはないか。。。最低でも魔石の回収はしておこう」
「なるほどぉ~、わかった!」
そういうとさっそくスピカはゴブリンの耳を切り取ると、胸のあたりにナイフを入れて魔石の回収もした。
スピカのナイフはもちろんのこと、腕までがっつりとゴブリンの血でドロドロになっている。なかなかグロテスクなものだったがその辺は孤児だからか逞しい。嫌な顔することなく手際よくこなしてしまった。
「ナイフに血糊が付いたままにしておかないようにね。あと、ばっちいから手も洗っちゃいなさい」
そういうと俺は魔術で水の塊を目の前に出してやる
「ありがと!・・・なんかケンっておかーさんみたいだね」
世間のお母さんが魔物との戦闘方法を指摘したりナイフのメンテナンスについて話したりはしないだろう。
それにスピカにどこまで自分の母親の記憶があるのか俺は知らない。それでもおかーさんみたいと言ったスピカは嬉しそうに見えた。長男だから弟達の面倒を見ることはあっても、こうやって誰かに世話してもらうことは少なかったのだろうかと考えてしまう。
「じゃあ、ゴブリンの死骸は焼いておくか」
ゴブリンの死骸のすぐ横に貫通力のあまりない【魔法弾】で穴をあけると、そこにゴブリンの死体を入れ【火球】で燃やしておいた。
アンデッドにでもなられたら嫌だからそんな事をしておいたのだが、
「ご主人様、なんで燃やしたんですか?」
と、この世界の常識について知っているはずのレンから聞かれた。
「え?だってアンデッド化とかすると嫌じゃん?」
「え?」
せっかく答えたのに逆にびっくりしたような表情になるのはなんでだ!?
というのが俺の表情にも出ていたらしい。どうやらレンがいうにはアンデッドになるかならないかは死んだものの執念というか怨念みたいなものが原因らしく、燃やさなくてもならないヤツはならないし、燃やしてもなるやつはなる、という事だった。
魔物を討伐する度にいちいち燃やさなくてはならないなんて面倒だし、それに燃やしていると匂いも音も周囲に広がり時間もかかる。そのため冒険者はそんなことはしないのだそうだ。
そんな説明を今更していることに違和感漂う現場となったのだが、そこは咳払い一つして話題の転換をする。
「じゃあ、この調子で次の得物を狙っていこう!俺達はまた後ろから付いて行くから頑張ってな!」
俺達は再度【認識阻害】をかけて気配を消す。スピカはその様子を見ていたがさっそく次の得物を探して動き出した。
続いて見つけたのもゴブリン1匹だった。
今度は見つからないように接近したあと首元に一撃。それでほぼ致命傷を与える事が出来たものの完全ではなかったため追撃をかけて完勝。周囲を見回した後耳を剥ぎ取り魔石を取り出すと次の得物を探して動き出した。
先ほどの反省点を修正したところ一撃も食らわずに勝てたことに驚きと喜びの気持ちが湧いてきたスピカであったが俺達の気配が感じられないということは一人で森の中にいるのと同じ感覚である。そこではしゃぐのも違うと気づいたのか今度は次の得物を探し始めるまで時間をかけることはなかった。
次に遭遇したゴブリンは2匹だった。
今度はどうやって戦うのかを見ていると、1匹目は見つからないように接近して首元に一撃するところまでは先ほどと一緒だった。だが、一匹が攻撃されたのに気付いた二匹目がスピカを攻撃。何とか腕で防御しつつも距離を取り周辺の木々に隠れつつ追いかけてくるゴブリンの隙をみて一撃、すぐさま距離をとるというヒットアンドアウェー戦法でゴブリン二匹を仕留めたのだった。
さらに進むと今度はゴブリン三匹がいた。
今度はどうやって戦うのかを見ていると、相手に気づかれないように様子を伺っていたがしばらくしたあと気づかれないようにその場から離れた。
後で聞いてみたら、三匹同時に戦うのは厳しそうだったから別行動してくれないかとみていたが群れから離れる様子がなかったのであきらめたと言っていた。
ちゃんと敵わない相手に突っ込む無謀さも無いようで、それでよかったよと言いながらよしよしと頭を撫でてやったら嬉しそうにしながらも「おかーさんかよっ!」って言われた。
せめておとーさんにしてほしいものだ。って、俺もまだ子供なんだけど。。。
そのあとさらにゴブリン一匹を仕留めたあたりで一旦休憩を入れることにした。
森の中でも少し開けたところがあったのでそこに土魔法で四方を壁で囲い、一時的に安全地帯を作り上げた。ここに来るまでの道のりで見つけた食べれそうな木の実と、近くを飛んでいた鳥をレンが獲ってきてくれていたのでそれで昼食にすることにした。
食事ができるように簡易のテーブルとイスを作り出す。
レンが焚火をはじめたり食材の下処理をはじめ、昼食の準備をしている傍ら俺は壁の一角にパーテーションみたいな仕切りを作りそこに1メートルサイズの水球を作り出す。
「スピカ、とりあえず食事の前に体の汚れを落としておいで」
「うんわかったー、、、っておかーさんみたいだね」
「はいはい、アホなこと言ってないで全部脱ぐ!脱いだのはこっちで洗うからね」
俺は水球を操作しつつその隣にもう一つの水球を作り出し脱いだ服をそこに入れる。あとは洗濯機のように水流を作って汚れを落とす。スピカは最初に作った水球の中に体を浮かべ手で体に着いた汚れを落としている。よく考えたらこっちも水流を作ってしまえば早いんじゃね?と思いスピカが入っている水球に少しずつ流れを作ってやる。最初こそ
「おおーーー!!これすごいーーー!!」
と言って楽しんでいたスピカだったが、水流を強めたり流れを一定方向じゃなく体中の汚れを取るためにまさぐるような水流にしてからはくすぐったいといって騒ぎ始めた。それでも流れに逆らわず水球から出てこないのでどんどん強めていったら最後は
「やめっあひゃひゃ!やめっあひゃあひゃ」
などと訳の分からない言葉が口から流れ出て来たので止めて水球を消し去った。
水球をお風呂代わりにする利点というのが実は多々あって、魔法で作り出した水なので魔法を解除すれば水も消え去る。汚れが付いた水がその場から消え去るのだ。それは体に残った水ももちろん同様なので体を拭く必要が無かったりする。当然ながら服を洗っていたほうの水球も同様の事ができる。
これは解除するときに一つコツがあって、普通に解除すると魔力による制御が切れたただの水となるが、解除の時に消え去るように・・・というか魔力に戻るように操作しながら解除するとできるのだ。ちなみに、そんなやり方があるのはレンも知らなかったらしいのでこの世界でも珍しい方法なのかもしれない。
ただ、これができるようになると室内でも問題なく体を洗うことができるので結構便利だ。
「ひどいよ・・・やめてっていったのに・・・」
何やら息も絶え絶えで抗議してくる声に目を向けると、全裸でへたり込んでいるスピカだ。
「耐えきれない程だったんだらそういえばいいし、自分で水球から出ればよかったのに?」
「くすぐったくて喋れなかったんだよ!それに自分で出ようにも水の勢いが強すぎて身動きできなかったんだからっ!」
「あ・・・ごめん」
そこまで水流が強かったのかなぁ・・・と思うところはある。が、本人がこうしてへたり込んだままそういうのだから、そうだったのだろう。
「んじゃ、次は俺とユイが体を流すからスピカは服着て待っててね」
スピカはなんとか服を着て仕切りの外に這うように出て行った。
スピカがそこまで言うほどのことか試してみたくなり、ユイに水球を作ってもらい水流で体を洗ってもらった。以前の世界にあるジェットバスが全方向から水流が来るような感覚・・・が一番近いのかな。
正直、腕や背中や足に当たる分には気持ちいいものだった。が・・・脇や脇腹、お尻や股間へは水流が強すぎてこしょばいというかなんというか、、、
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と言ってしまう感じ?だった。
そして全方向から均等に加わる水流の圧力で【身体機能強化】などをせず素の状態では自分から逃げ出すのは結構厳しそうだった。
そんな俺の様子をニヤニヤしながら見ていたユイだったが、今度はユイの番だということに気づいてハッとした顔になったのを見逃してない。
「自分でするからケンはもう向こうに行ってもいいよ?」
となんとか自分は被害を受けないように持って行こうとしていたが
「そう遠慮するなよ」
と言って水流でユイを捕まえてからは覚悟を決めたようだった。
ちなみに俺もユイも狩りはしていないし初心者であるスピカの後を付いてきただけなので正直汗もかいてなかった。それでも水球風呂に入ろうと思ったのは単に風呂好きだからだ。
しっかり見られた分以上にユイのアヘ顔を見せてもらった。
そんな一幕があったものの、その後はレンの作ってくれた昼食を取って出発しようかと思ったがスピカの様子を仕切り越しに聞こえていたレンが自分も汗を流したいと言ってキラキラした目で懇願してきた。
大した手間でもないので別にいいんだけど、レンの場合に限っては汗を流す以外の目的があるだろうから一度断ってみたところ、自分は昼食の獲物を取ったり昼食の準備で火を使ったりして汗をかいているのだとアピールしてきた。
だったら自分で水球を作り出してそこで汗を流せばいいじゃないかとも思ったが、昼食をごちそうになった手前あまり拒否し続けるのも大人げないなーと思い人間洗濯機を経験させてあげることにした。
そんなわけで水球を作り出すと、昼食後で特にすることもないユイとスピカに見られながらレンを洗い始めた。
レンの場合に限っては、
「ああん・・・あああ・・・・あああ・・・ああん・・・うふっああ・・ふぁああ・・ああん・・」
と、とても子供には聞かせられないような声を上げ続けた。
5分位洗い続けて水球を消し去るとレンはその場にへたり込んだ。先ほどのスピカと違う点は洗っている途中の声質だけではなく、このへたり込んだレンの股間がおっきしている点も挙げられるが。
可愛らしいっちゃーそうなんだろうけど、まあレンだし。
「じゃあレンが用意できたら出発にするから、準備できたら言ってね」
それだけ言い残して仕切りから出て椅子に座る。
しばらくするとレンが着替え終わって仕切りから出て来た。
「ご主人様!ありがとうございました!こんな水責めがあるなんて知りませんでした。さすがご主人様の発想は一味違います!」
体の汚れを落とす目的だったはずが水責めて。などと思いながらもレンなりに俺を褒めてくれているらしい。あまりこの点を深く掘り下げる気もないのでとりあえず出発することにする。
スピカのクエストについてはゴブリンを倒すことが出来たし初陣でこれだけの成果が出せたのでとりあえずは達成したと言ってもいいだろう。そもそも最初は魔物討伐なんて依頼じゃなく町の中で完結する所謂お遣いクエストを熟して装備を整え、そのあと薬の素材なんかを取りに行くクエストを熟した後に魔物討伐クエストを受けるのが一般的だ。
スピカの場合、装備を整える前に魔物討伐してしまったのでちょっと頑張り過ぎな気もする。まぁ今回の報酬でちゃんと装備を整えればいいと思うけど。何せ現在の装備はあまり質がいいとは言えないナイフと左腕に装備された使い古された金属製の手甲のみだ。ちなみにナイフも手甲も廃品を回収し修繕して使っているのだとか。逞しい・・・と言っていいものか判断に迷う。
「さて、今度は俺達のクエストのコモドリザードの生息地まで移動するんだけどスピカには【認識疎外】と【身体機能強化】をかけておくから俺達について来てね」
「はい!」
やたら返事がいいな。まぁ、ここから先はスピカには危険地帯となるからいう事は聞くか。
ただ、普通に【身体機能強化】を使うと能力の変化に感覚が追い付かないだろうから現在値の2倍程度になるように調整して【身体機能強化】をかけてやる。
くれぐれも感覚ととの違いに慣れるためには、最初は臆病なくらいゆっくり歩くところから始めて少しずつ歩く、早歩き、軽く走る、と手順を踏んでから走るように注意し出発となった。
不定期更新継続☆
ダラダラと続きます。




