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カジット伯爵の館8

「さて、君と二人きりで話をするのは二度目かな。それで、伯爵に話がしたいという事だがどういう事かな?」

ライカはダイナさんの様子を見に行っているため、今はラムサスさんと二人きりだ。


「実は、先ほど不逞の輩に襲われました。ダイナさんの病状も安定しているようであればこのような治安のよくない町は出て行こうと思うのですが、伯爵にも報告してから旅立とうと思います」


「そうか、わかった。私がそのように報告しておくから君はこのまま旅立ってもらってかまわんよ」


「それをお願いしようかとも思いましたが、伯爵には直接約束したことですしちゃんと報告してから行くのが筋かと思いますので時間を取ってもらえるようお願いできませんか?急な訪問でしたから伯爵の予定が空くまではダイナさんの様子を見ながら待っています」


「そうか。伯爵も予定が詰まっているからしばらく待ってもらう事になるが、それならばそうしていたまえ」


そういうと、ラムサスさんは部屋から出て行った。

俺も部屋から出てダイナさんの部屋へと近くの兵士に連れて行ってもらった。



「ダイナさん、こんにちは。体調はいかがですか?」


「おかげさまでずっと体調がいいの」

そう言って向けられた笑顔はとてもかわいかった。顔色も良くなってきたようだし発作も起こっていないようだ。


そしてもう一つ気になること、それはお付の侍女だ。

俺達を襲うように依頼して回っていた侍女はここにはいなかった。


「ところで、お付の侍女の人達って何人くらいいるの?」


「侍女?そうね、昔はたくさんいたんだけど今は6人が交代して私の看病をしてくれているわ」


「今はどうして減ったの?」


「私が病気になってからはラムサスが看病もできる侍女を集めてきてくれてたの。だから今いるこの二人も、そして交代の4人も回復魔法を使えるのよ」

話題に上がった部屋にいる二人の侍女はダイナさんの傍らで控えている。

ということは、この二人も交代の他の4人もラムサスの子飼いの者ってことか。


「ところで、あれから魔法は使っていますか?」


「それがね、ラムサスったら心配性で魔法を使うと体に負担がかかるからおやめくださいって言うのよ。でも、あなたの言う通り魔法を使った日は発作が起こっていないから使おうとするのだけどやっぱりラムサスは反対するの。だから今のところは体に負担がかからない程度に使うようにしているわ」


「そうですか。無理のない範囲で積極的に魔法を使ってくださいね。そうすることで発作も起きずに過ごせますよ。そのあたりの事、ラムサスさんにも伯爵にもこの後話しておきます」


それを伝えるとダイナさんは少し嬉しそうにしていた。


その後は取り留めのない話をしたり、俺達の冒険譚・・・と言えるほどではないけど冒険者となってからの話をしたり、ダイナさんが病気になるまえの話を聞いたり。いろんな話をしているとあっという間に時間は過ぎていき、陽が沈んだころに伯爵との面会となった。今回は以前の謁見の間みたいなところではなく、普通の応接間のようなところだった。

伯爵が奥の真ん中の席に座り、その斜め後ろあたりにラムサスも待機している。テーブルを挟んで俺達も促された席に座った。


「いやいや、遅くなったな。私も立場上なかなか自由に時間が取れなくてすまないな」


「いえ、お忙しいのに時間を取ってもらいありがとうございます」


「で、その後の娘の様子はどうかな?報告ではあれから一度も発作を起こしていないという事でワシは喜んでいるのだが、完治したのか?」


「完治しているかどうかは分かりません。が発作を抑える方法が分かりましたので今はそれを実践してもらっています」


「以前に話していた魔力のコントロールを娘ができるようになったということか・・・すごいものだな」


「いえ、魔力自体のコントロールではなくダイナさんの魔力を消費して暴走しないようにしています。この方法なら発作も抑えられているようですし、仮に発作が起こったとしても暴走する魔力が少なくて済みますから毎日の日課としてやってもらうようお願いしています」


「そうかそうか。いやー、本当に君たちが見てくれてよかったわい。それで、報告というのは?旅立つというのは本当か?」


「実は、この町で野党に襲われました。それも立て続けに」

チラッとラムサスの方を見たが、特に反応もない


「なんと。ワシはこの町の治安は他の町よりも良くなるように努めているのだがな・・・。ラムサス、治安部隊の強化を考える必要があるのではないか?」


「この町の治安は年々良くなってきているのは事実です。が、それでも100%の治安を維持できているかというと首を横に振らざるを得ません。少しずつではありますが着実に治安の向上には努めております」


「そうじゃな、ラムサスが来てからスラムも減ったし冒険者崩れが暴れるようなことも減っておる。これからも頼むぞ」


伯爵はラムサスの事を結構信用しているんだよなぁ・・・。


「それがですね、僕たちが襲われた者たちを捕まえたところ妙でして。どの野党も同じ者に雇われたというのです。そこで、その人を追いかけて捕まえ話を聞こうとしたのですが逃げられまして」


「ほぅ・・・君たちはその歳でなかなかのやり手冒険者だと聞いていたが、それでも逃げられたのか。しかし、同じものからの襲撃となると治安というより怨恨の可能性もありそうじゃな」


「はい。ただ、逃げられはしましたが何者かは確認しました。どうやらそこにいるラムサスさんの子飼いの者だったんです」


「なんじゃと?ラムサス、どういうことか?」

一斉にラムサスへ視線が集まる。


「さて、それは濡れ衣でしょう。ケンと言ったかな、君たちはお嬢様に恩を売りさらに我々に難癖をつけて何をたかろうというのかな?」


「僕たちは何の見返りも求めていませんよ。ただ、たまたま見つけたこの町を荒らすあなたを何とかしておこうという善意だけです」


「何をいいだすかと思えば、この私がこの町を荒らす?フフフ・・・どうやら君の事を買いかぶっていたようだ。この町にとって良いことをしてきた私をどう見たらそのように見えるのか不思議でたまらんよ」


「そうでしょうか?ではなぜ、スラムの子供たちをわざと敵対させて潰すような真似をしているのですか?しかも、ある程度攫って奴隷商に売り飛ばすのもこの町のためですか?」


「スラム?ああ、あれのことか。この町で労働するわけでもない何の役にも立たずひったくりや万引きを繰り返して正常な経済活動を阻害する者たちを減らして何が問題なのかな?むしろ、減らすべきだろう」


「問題は減らす方法にあります。敵対させて暴力で潰し合わせたり奴隷にしてしまったり。まぁ一部の子供たちにはあなたのための監視網として機能しているようですがね。あなたほどの人であれば孤児などを集めて教育し救済する方法があることも分かっているでしょう。それに町の出入りを制限しているのも正常な状態とは言えませんね」


「不法に町に入った君が言うか?」


「そもそも、旅の冒険者が町に入れないというのは問題ではないですか?人と物が出入りして経済活動な成り立ちますよ?」


「我々が制限しているのはあくまでも町にとって不敬をやらかす輩だよ。そういう輩を自由に出入りさせると益々治安が悪化するだろう」


「あなたは犯罪を犯しそうな人を制限しているのではないです。実際には回復魔法を使えるものと回復薬の出入りを把握して制限しています。ではなぜそのような事をしているか。簡単です。ダイナさんの病気を理由にはしていますがそれはあくまでも建前。実際には回復薬自体を高騰させてその利益が目的なんです。町にいたはずの回復魔法の使い手は全てここに軟禁されているため町ではケガや病気になった場合回復薬を買うしかない。多少のケガや病気ならば自然回復を待つのでしょうが、そうでない場合はどんなに高くても買うしかないですからね。もっとも、薬は買えない人はどうしているかというと聖水を買っているようです。それでこっちも少しずつ値上がり傾向ですね」

サーシェさんはそのあたりを商人の嗅覚で嗅ぎつけて儲けてるんだろうな。


「・・・ほぅ、続けなさい」

ラムサスがすっごい睨んでいるがそんなことはお構いなしに続きを伯爵に促された。


「回復薬で暴利を貪っているから、出入り制限とヒーラーを監禁してから収入が増えているはずです。ではなぜそのような状態にできたのか。それはやはりダイナさんの病気です。伯爵のご令嬢が病気でヒーラーが必要となれば伯爵には協力者を募るといえますものね。実際には軟禁ですが。そしてその病気についてですが簡単に治ってもらうと暴利を貪れる今の環境が崩れます。そこで病気を完治まではできなくても発作が起こらない状態にできてしまいそうな僕たちが邪魔になった。だから出て行くよう何度も言ってきましたね?それでもまだ町にいるから今度は野盗を使って襲うという嫌がらせまで始めた。そんなところでしょう」


「ふん!バカらしい。子供ならではの妄想だな。そもそも、お嬢様が病気になったのはたまたまだ。そしてその看病や治療方法など精一杯探しているのは私だぞ?」


「完治するための方法を探すように世界中に派遣している人達についても、この町の兵士・・・それもあなたの意思を理解したものにスラムで捕まえた戦闘できそうな者を奴隷にした人、それに軟禁していたヒーラーで反抗的の者を奴隷にした人のようですね。とてもまともに治療法を探すメンバーとは思えませんね」


「スラムの子供に仕事を与えつつ人手を確保しているにすぎんよ。どこが問題かね?」


「問題でしょう。何も奴隷にして反抗できないようにしてから使役しているのですから。それに軟禁しているヒーラーのほうも、町に家族がいるから出してくれと言った者も奴隷になって反抗できず旅立っているのです。これも問題じゃないですか?そしてそれ以上に伯爵にとって問題となることがあります」


伯爵をみると、続けろという意味で俺に注目している。


「ダイナさんが病気になったのはラムサスさんの仕業・・・というのをご存じですか?」


「なんだと!?」


これにはさすがに伯爵も驚いて声を上げた。

が、ラムサスはじっとこちらを睨んだままで特にリアクションはない。


「驚くのも無理はありません。そもそもこのキュリーゼフ病についてはかなり希少ですからね。しかし、それはあくまでも人族の中での話です。しかし、魔族であれば話は違います。伯爵は悪魔の芽というものをご存じですか?」

ずっとこっちを睨んでいるラムサスの目がピクリと動いた。


「悪魔の芽?・・・いや、聞いたこともない」


「これは遥か昔魔族がある植物を研究し作り出したものです。これを体内に植えつけられると魔力が増幅されるもので魔力の扱いに長けた魔族にとっては単純に戦力増強になるものですが扱いについては非常にデリケートなものだそうです。それが魔力のコントロールのできない人族に植えつけられると魔力が暴走し肉体に悪影響を及ぼします」


「まさか・・・それは・・・」


「そうです。人族にこれが植えつけられると魔力が暴走しキュリーゼフ病となるのです。しかし、悪魔の芽は先ほども言った通り扱いが非常にデリケートなため魔族といえども扱えるものは限られるそうです。たとえば、そういう研究をしていたラムサスさんとかなら可能でしょう」


「本当なのか!?ラムサス!!」


今度は一斉にラムサスに視線が集中する。


「ふふふ・・・ははは・・・・はーはっはははは!ただの小僧ではないと思っていたがそんなことまで調べているとはな!」

おお、見事に悪役の三段笑いを披露してくれたな!


「なぜ・・・そんなことを・・・」


「なぜ?なぜと仰ったか!?そもそも伯爵、貴方がだらしないからでしょう。この町の経済状況を強化し治安を強化するための手段として貴方の娘には一時的に犠牲になってもらった。しかしその甲斐あって回復薬を独占管理により莫大な利益がもたらされ伯爵もその恩恵を受けたでしょう」


「確かに今までラムサスの提案は大概許可してきた・・・が、それは娘の為と思って許可してきた。そんな話は聞いてないぞ!今すぐに娘を治せ!」


「娘を犠牲にするといって貴方が承諾するはずありませんからね。それにせっかくある程度人族の町の経済状況をコントロールできるようになったとはいえ娘を治したあとも同じ立場でいられる保証もないですしね。こんなガキのせいで!!・・・残念だがこの町は見捨てることに決めたよ」


ラムサスが部屋の奥にある扉から出て行こうとする・・・


バタンッ!!


「おっと、このまま逃げれると思ってるの!?」


出て行こうとする扉が開いたかと思うとそこに現れたのは抜刀したジーナだった。


「誰だ!?貴様は」


「まぁ、僕の仲間ですよ。このまま逃げれると本気で思っているんですか?」


「こんな小娘で俺を止められると思っているのか!?」


「だれか!出会えっ!」

少女剣士がそこに現れたことに驚きはしたものの、ラムサスの言う通りとても止められないと判断した伯爵が大声を上げる。その声により背後の扉から兵士がバタバタと入ってきた。


「・・・これは!?」


「ラムサスは反逆者じゃ!ひっとらえろ!」


「やれやれ・・・伯爵は私が魔族だということをお忘れのようだ」


そういうと入ってきた兵士や俺に向けて手を差し伸べた!


「うがぁ!!」

「がっ!!」


と同時に兵士たちからうめき声が聞こえる。

俺とライカの前には魔力でシールドを作っておいたため、それに弾かれて無事だった。


パリーンッ!

ラムサスは魔力を放出してすぐ今度は窓から脱出をした。


すぐにジーナが窓から追いかける!

俺もすぐ窓に行く!


窓の外は中庭になっているが、ラムサスはすでに地面に着地し走り出していた。

ジーナは着地と共に前方に何度か転がり着地の衝撃を逃がしつつラムサスを追いかけている。


ってここ、6階?くらいですけど!?

でもま、逃がすわけにもいかないし行きますか・・・。


「ライカ、行くよ!!」


「ええ??」

驚くライカを無視してお姫様抱っこをすると俺も窓から飛び降りた!


俺にはこれがある!!必殺のぉおおおお!


浮遊術!!!


あれ?、、、落下スピードは減速したものの思ったより浮遊できてない!


くっそ・・・ならば!!


体を浮遊させていた魔力を塊にして着地点に発射した!

発射の反動と着地点で地面と魔力塊の爆発?の衝撃でさらに減速、なんとか無事に着地できた。

が、、、足がジンジンする。。。


「も・・・もう!!無茶するんだからっ!」


足がジンジンしている俺を見て、ライカが回復魔法をかけてくれた。


「へへっ、まだ慣れてなくてうまく行かなかったよ。でもこれで追いかけられるよ、ありがとう」


そういうと【身体機能強化ブースト】をつけて走り出した。

ライカも俺に続いてくる。


中庭ではラムサスを中心にジーナとその反対側にはリンダが抜刀して構えていた。




ケンちゃんが予想以上の長台詞を覚えるのに時間がかかり更新が遅くなりました!

って、主人公のせいにしておきます。

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□頭脳派脳筋の異世界転生もよろしくお願いします。
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