カジット伯爵の館3
さってどうしよう。普通に回復魔法だといつまでたってもこのままだろう。
かといって、何ができるだろうか。。。
「ところで、いつも回復魔法は【小回復】なのですか?」
俺は御付きの侍女に聞いてみた。
「だいたいそうですね。過去には【小回復】と【中回復】を使ったことがあります」
「では、【小回復】と【中回復】を使った時に変化はありましたか?」
「【中回復】を使った後は発作がしばらくありませんでした」
「なるほど」
回復量の違いだけかと思っていたけど、持続効果?も高いのかな。それとも回復魔法のおかげで魔力の流れもしばらくはよくなるのかな?
だとすると、発作の無い時に回復魔法を使ったらその効果でしばらく発作が起きないとかないかな?
俺は試してみようと思い両手をダイナさんに差し出す
「光の精よ、慈愛に満ちたる天の光で癒しの力を!土の精よ、その大地に満ちたる命の躍動を!風の精よ、命の鼓動と生命の息吹を!癒しと躍動と息吹の力!今こそここに集い全て癒せ!【大回復】」
詠唱は実はちょっと・・・忘れたから短縮バージョンだ。途中途中小声にして回りにはバレないようにしてみたけど。。。
魔力を込めると俺の両手から眩い光が放たれダイナさんを包みこんだ。
「おお!?」
見ている侍女、兵士、それに他の当番の人も皆俺が【大回復】を使ったことに驚いたようだ。
しばらく光続けていたダイナさんだったが、だんだん光がおさまってきた。
「こ・・れ・・は・・?」
「ダイナ様!」
意識が戻り声を出したダイナさんに侍女が声を掛ける
「とても体が軽くなった・・・」
そういいながらダイナさんは上体を起こす
「起きて大丈夫ですか?」
つい、声を掛けた。
「あなたは・・・?」
「今、この者が【大回復】を使いダイナ様を癒したのです」
慌てて侍女が説明する
「そうですか・・・名前を聞いてもいいですか?」
「ケン・・・といいます」
「ケン殿・・・ありがとうございます。とても楽になりました」
そういいながらダイナさんは微笑んだ。
相手が子供であっても一人の人間として対応してくれる辺り育ちがいいのがよく分かる。
「いえ、しかしまだ完治したわけではありません。無理をなさらなずに」
「ありがとう。でも今は予兆も感じませんからしばらくは大丈夫だと思います」
「その予兆というのはどういうものなのでしょうか?」
聞いてみたがダイナさんは困った顔になった。
「なんといいましょうか・・・体の一部に何か黒いものが溜まっていくのです。そしてその部分が真っ黒になるほど溜まると、肉が軋んだり肌が爛れたり苦しいのが始まるのです」
「なるほど。おそらく、その部分の魔力が正常に流れずに溜まっていくのを感じ取っているのですね。では、逆にその黒いものではなくそれ以外の魔力の流れは分かりますか?」
「魔力の流れ…?いえ、残念ながらそれは分かりません」
魔力の流れを感じ取れるのは魔族とかエルフの一部とかって聞いたことがあるからやっぱり人族には感じれないのだろうか。いや、俺は分かるから人族でも認識できてコントロールできるようになればいいはずだ。
「感覚の問題です。今から魔力を流しますのでどんな感じか教えてもらえますか?ちょっと失礼します」
そういうとダイナさんと両手を合わせた。
「いきます」
俺の右腕からダイナさんの左腕に魔力を押し込み、ダイナさんの体を巡り最後は右腕に集まる。それを俺の左腕から引っ張り上げる。
「ぇ・・・・これは・・・・???」
「どうですか?」
「なにか、、、暖かいような・・・なんというか、、、力を感じます」
「それが魔力です。その力が本来体中を流れています。まずは普段からその力を感じ取るよう意識してみてください。それがてきるようになったら次はそれを自在に操れるようになればこの病気を予防効果出来るはずです」
「本当ですかっ!?」
「不自然な魔力の流れからいまのような症状が出ているとききました。自在に操れるようになれば、自然に循環させることも出来るようになるはずです」
「分かりました。頑張ってみます!!」
ダイナさんは涙ぐみながらも癸卯の光を見つけ微笑んだ
「わたし、頑張りますのでこれからも魔力の扱いついて教えていただけませんか?」
「そうですね、僕が当番の時は治療だけじゃなく今みたいに魔力を感じ取りやすくする位のお手伝いでよければ」
「ありがとございます!」
「お嬢様、そろそろ交替の時間です。この者は下がらせますのでお休み下さい」
「そう、、、もう時間なのね。でも私は今とても調子がいいからこのままで大丈夫よ」
「わかりました。お疲れになりましたらお休み下さい」
そういうと侍女はこちら側に振り向いた。
「では」
そういうと兵士が俺たちの入ってきた扉を開けて、出て行くように促した。それを合図に俺たちは部屋から出ると階段を降りてフリースペースに戻った。
一緒にいた当番は居れに何か話したそうだったが、面倒だったのでそのまま寝室のあるの部屋まで歩いて行った。
その様子を見ていた二人は、上級レベルの魔法を使って魔力切れ寸前だと勘違いしてくれたのか、何もいわずに見送ってくれた。
実際には上級とは言え魔法1回しか使っていないので全然へーきなんだけどね。
その後、特にすることもないのでそのまま寝た。
起きると外の様子が昨日とは何か違っていた。
よく分からないが取り敢えず水場で顔を洗い目を覚ましてから朝食にしようと食堂にいった。
「おい、あの子じゃないか?」
「ああ、間違いない」
「まさかあんな子供が??」
食堂に入ると何やら俺の噂をしていたらしい。
そんなもんスルーだ!
飯にしよー
「すみません、食事をお願いしまーす」
鉄格子越しに声をかけると、中から声がしてしばらくすると食事が出て来た。
俺は人のいないテーブル席につくと、ご飯を食べ始めた。
「起きたかー!聞いたぜ?おまえ上級魔法使ったんだってなー!」
やたらと大きな声で俺に話しかけてきたのキーマだった。
「うん、今まで上級レベルで回復魔法使ったこと無いって聞いたから試してみたんだよ。その後の様子って聞いてる?」
「ああ、それが今噂になっててさー、お嬢さんは起きてて一度も発作を起こして無いらしいぜ!」
「そりゃーよかった」
「今までに当番が一度も回復しなくていい時って無かったの?」
「あったぜ。けど、あの後の当番全員が回復魔法を使ってないってのは今までに無かった事だよ!」
「そっか。やっぱり上級レベルのほうが持続時間というか、効果時間が長いんだなー」
「あっ!!それより、時間はいいのか?そろそろ当番だろ?」
「え?当番終わって寝て起きたらすぐまた次の当番??」
「いや、普通はもう少し間が空くんだろうけどな・・・なんか知らんがケンの当番がやたら増えてたぞ?」
俺は残り少しになっていた朝食を掻き込むと、黒板のある部屋へと向かった。
すると、黒板に書かれてある当番表は更新されており6時間に1回の割合で俺の名前があった。
・・・多すぎね?
他には同じペースで書かれている人はいないのに。
直近の当番は・・・8時。今の時間は・・・7時50分。ギリギリじゃん!
でもま、遅れずに参加できそうでほっと胸をなでおろした。
落ち着いたところで、俺は部屋を出て階段のある扉に入り椅子に座った。
程なくして8時当番の3人が呼ばれ、俺は2度目となるダイナさんとの面会となった。
俺の姿を確認するとダイナさんはさっそく話しかけて来た。
「ケン殿、お待ちしておりました。私はあれから一度も発作がないどころかずっと調子がいいままなのです!」
少し興奮気味のダイナさん。
「それはよかったです。その後、魔力のほうはいかがですか?」
「それは・・・」
少し表情に陰りが見えた。
「まぁ、いきなり魔力をコントロールするなんて普通は無理でしょうからゆっくりやっていけばいいと思いますよ」
そういうと、また明るい表情になった。
全く、病人とは思えないような表情の変化だ。
「いえ、私は頑張りたいのです。でも、あれから魔力の感覚が分からなくなって・・・」
「では、もう一度魔力を流してみましょうか?」
「ぜひ!お願いします!!」
俺はベッドまで歩いて行くとダイナさんの両手を取る。
そして右手から魔力を押し込み、左手で引っ張り出す。
その間、いつもより大きな量の魔力がダイナさんの体を巡る。
「ああ!この感じ!!」
「このくらいでいかがですか?」
「はい、これをコントロール・・・・して・・・みます!」
「少しずつでいいので感覚を覚えていくのがいいと思います」
そんな会話をしている時だった。
ガチャッ
左手の扉が開いたと思ったら見たことのない男性と兵士3人が入ってきた。
「君が噂のケン君か。少し話がある。付いてきてもらおう」
そういうと、問答無用とばかりに兵士が俺を促す。
「なんですか、急に」
一応突然なので文句を言ってみたが、まさしく問答無用だった。
「いいから、付いてきなさい」
男が一言そういうと御付きの兵士の圧力が増した。
仕方ない、付いて行くか。
「分かりました」
そういうと、俺は男の後をついて行った。
左の扉を出ると通路になっており、そのまま進むと階段があった。
階段を2階分あがるとまた廊下を進み、ひとつの扉の前で立ち止まった。
「これから会うのはこのゴカジの町の領主、カジット伯爵だ。くれぐれも粗相のないように!」
コンコン
「カジット様、連れてまいりました!」
「うむ、入れ」
そう声が聞こえたところで扉が開いた。
俺はとりあえず部屋に入ってみる。
部屋っていうか・・・お城の謁見の間?みたいに広い部屋だった。
俺を連れて来た男は部屋の真ん中まで進むと膝をつき、
「カジット様、お待たせいたしました。ケンを連れてまいりました」
「うむ、ご苦労」
それを聞くと、俺達を連れて来た男は壁際に下がった。
「お主がケンか」
「はい、そうです」
「・・・・」
ん?聞かれたから答えたけど何か足りなかったか?
「ふむ・・・礼儀は知らん子供か」
えー、なんか挨拶的な事が必要だったのか。
「伯爵様、礼儀がなっていなかったのであれば申し訳ありません」
よく分からんけど、とりあえず頭を下げてみた。
「ふむ、構わんよ。見たところ貴族社会とは縁遠い者のようだ。それに大事な一人娘の恩人だしの。ワシの方から礼をいうのが筋かの」
「いえ、それには及びません。ただ苦しんでいる人を助けたいと思って勝手にしたことですので」
「ほほぅ?」
「それで、私に御用でしょうか?」
「ふむ、まぁいいだろう。話というのはもちろん娘の事だ。上級回復魔法で娘を治したというのは本当かの?」
「はい、一度上級魔法を使ったのは本当です。しかし、それで病気そのものが治ったかどうかと言われると微妙だと思います」
「どういうことかな?」
「初級回復魔法ではすぐに発作が再発しましたが、中級魔法ならば次の発作までの期間が長かったという話を聞きました。よって、上級回復魔法はその期間がさらに長くなっただけ、という考えも出来るからです」
「しかし、上級回復魔法など使えるものは滅多におらん。それほどの回復力なのだから完治した可能性もあるのではないかね?」
「確かにその可能性はあります。が、不自然な魔力の流れが起こる原因を取り除けたかというと、それもまた疑問です」
「では、君はその治し方が分かるというのか?今までいくつものパーティーを作って世界中に病気の治し方を探しに行かせている。それでも今まで一度も有効な方法は見つかっていないのだ。なにか手がかりはないものか?」
「根本的な治療というのは残念ながら分かりません。しかし、病気の症状が不自然な魔力の流れというならばその魔力の流れを自分自身でコントロールし、自然な流れに変えてやれば発作は発症しないと考えています」
「そんなことができるのか?」
「本来魔力の流れを扱えるのは魔族やエルフの一部ということです。しかし人族が扱えないというわけでもないのです」
「ほんとうかね?」
「例えば、魔力を自在に扱えるようになれば通常魔法と言われているものはすべて無詠唱でも使用可能です。お見せしましょうか?」
「それはここでは無理だな。この屋敷では娘の部屋以外に【禁魔法】の魔法陣をあちこちに使っておる。だからこの屋敷で魔法を使うことはできない」
「なるほど。しかし、魔力自体を封じられている訳ではありません。例えばこのように」
そういうと俺は右手に魔力を込め、誰もいない丈夫そうな柱に向けて【魔弾丸】を発射した
ガキンッ!
という音と共に柱の一部を穿った。
「なんじゃとっ!!」
伯爵の側近は慌てて伯爵と俺の間に割って入った。
「これは私のオリジナル魔法です。魔力を自在に扱えればこのようなことも可能なのですが、私が言いたいのは人族の私でも扱えることができるのですからご息女にも覚えてもらえば発作が起きないのではないか、ということです」
俺の話を聞いて伯爵はボディーガードっぽい人を押しのけた。
「それを、、、教えてくれるというのか?」
「場合に寄っては、それでもいいと考えています」
「では、それを頼みたい。なんとかあの娘を救ってくれまいか!何か必要なことがあるのであれば融通する」
「わかりました。つきましてはいくつかお願いしたいこと、お聞きしたい事があります」
「なんじゃ?」
「まず、私がこの町に入る時許可が出なかったため不許可で町に入りました。一つ目は通常の許可を貰いたいです。それとなぜ回復魔法の使い手をより多く集めるために外部からの者を制限していたのかお聞きしたいです」
「許可ならばすぐに融通しよう。外部からの制限をかけているのは・・・ラムサス!どうなっている?」
伯爵のすぐ近くに控えていた執事っぽい男性に声を掛けた。
「はい、手配しましょう」
「外部からの来るものを制限していたのは本当か?」
「はい、事実です。回復魔法の使い手は確かに欲しいのですが外部の者はすぐに出て行ってしまいます。しかしこの町に長居させるわけにもいきますまい、伯爵は娘のために旅の者をこの町に縛り付けるような人物などという悪名が広まっては困りましょう。よって、あくまで町の者を中心に回復魔法の使い手を協力者として募っておるのです」
「なるほどの。ラムサスの気遣いは流石じゃの」
「次に、町の外にいる私のパーティーにも同様の許可を。また、私と一緒にこの館に来たライカという魔法使いと合わせてほしいです」
「ラムサス、手配してやってくれ」
「分かりました、後ほど会って話をする機会をつくりましょうぞ」
「次に、ご息女へ魔力の指導はするにしてもこの館に軟禁状態ではこちらも困ります。自由に出入りしたいのですがそれは構いませんか?」
「軟禁状態?いやいや、出入りはしてもらって構わんよ。もちろん、すべてという訳にはいかんが、下の階ならば兵と一緒なら自由にしてもらってかまわん。なぁラムサス」
「はい、下の階には生活がままならない者のための設備も整えております。回復魔法の使い手はお嬢様の看護に必要なものですから」
「わかりました。ではしばらく回復魔法の効果を様子見しながら魔力の扱いについてご息女に伝授してきます」
「うむ、頼んだ。何か必要なものがあればラムサスに言うといい」
伯爵がそういうとラムサスは頭を下げた。
「では、私はこれで」
そういうと一度伯爵におじぎをして部屋を出た。
出ると同時に兵士が俺についていたが、すぐあとにラムサスという男も出てきた。
「ではこちらにきたまえ。ライカという魔法使いを呼んでこよう」
そういうと、ラムサスはどんどん通路を進みそして一つの部屋に入った。
普通の応接間・・・かな。
「ここでしばらく待っていなさい」
そういうと、一度ラムサスは出て行った。
しばらくして戻ってきたラムサスは俺の正面に座った。
「さて、今君のツレを呼んでこさせているがもうしばらくかかるだろう。その間に君には少し話をしておこう」
「はい・・・」
そういうとラムサスは真面目な顔をして話し始めた。




