クエスト開始
翌朝、約束の時間よりも少し早めに港に到着した。
「たしか、38番停泊所って言ってたよね」
「そうそう、第3サーシェ丸って船って言ってた」
「ここが32番、次が33番停泊所だからもう少し先にゃ!」
俺達は順番に並んでいる停泊所を歩いていく。
「ここが37番、次だね」
「ねぇ、あの帆先が光っているところじゃない?」
「38番だから次だよね、間違いない。帆先が光ってる船だ」
「これって、見覚えあるよねぇ・・・」
船は今にも出航しそうな感じで出港準備が進められていた。
「すみませーん、ギルドから依頼を受けて来たのですがサーシェさんはいますか?」
俺達は船にいた男性に声をかけた。
「私がサーシェだが・・・君たちが冒険者?」
「はい、そうです」
「確かCランク以上で海の魔物との交戦経験豊富だと聞いていたのだがね」
「僕たちはこう見えてもCランク冒険者です」
「ふむ・・・」
何か考え込むような素振りのサーシェさん。
「いや、分かった。では乗ってくれ」
という話で俺達は船に乗り込んだ。
船に乗り込むと、筋肉隆々のマッチョマンが4人ほど積み荷を整理していた。
その人たちに指示を飛ばすサーシェさん。
「ギルドで話を聞いていると思うが、君たちに依頼するのは乗組員全員と積み荷の護衛だ。乗組員は私と操舵室にいる女性、オーベルとあそこで働いている4人の奴隷達、あと船内にいる奴隷の合計7名だ。そして積み荷はシーマの特産品である聖水を中心に水の魔道具、その他食料だ」
と紹介してくれた。
以前は操舵室が甲板に直接あったが、今は2階建てみたいになっていて甲板にたくさんある積み荷で視界が塞がれることはなさそうだ。
「分かりました。挨拶が遅れましたが、私はケンと言います。そして、ユイ、ライカ、ジーナ、リンダです。全員Cランク冒険者で、クラーケンとも交戦経験があります。出来るだけ頑張りますのでよろしくお願いします」
「ケン?もしかして、ケン=アーノルドかい?」
「はい、そうですが・・・どこかでお会いしましたか?」
うーん、50代くらいのおっちゃん。全く見覚えはない。
「いやいや、この船の前の持ち主だろう?」
「やっぱり、そうなんですね。少し変わっていたからどうなのかと思いました」
やっぱり、俺達を攫おうとした人攫いが使っていた船だったのだ。
帆先の光はわざわざ【照光】の魔法陣を手に入れて張り付けたんだね。
「最初はこんな子供が来たので違約金をギルドに請求しようかと思ったが、5歳で賞金首を捕まえるようなやり手冒険者だと分かったら安心できたよ」
なんだよ、そんな事考えていたのか。
食えないおっちゃんだ。
「いやしかし、ケン=アーノルドがいるとなったらアイツがうるさいかもしれないな」
あいつ?
「ああ、いやあとで紹介するよ。それはともかく、もうすぐ出航の準備が出来るからしばらく待っていてくれ」
「わかりました」
「君たちには基本的に船首部分で監視してもらうようになる。それから地下1階は階段を降りて右手が水回り関係、左手が休憩室だ。好きに使ってくれ。ただし、地下2階は私達のプライベートルームがある。よって、ここへの立ち入りは禁止だ」
「分かりました。ただし、緊急事態に限り許可いただけますか?護衛に必要な場合があればですが」
「ああ、そのような事態に限っては許可しよう。他になにかあるかい?」
「いえ、大丈夫です」
「ならば、しばらく待っていてくれ。もうすぐ出航できるから」
そういうとサーシェさんは引き続きムキムキマッチョさん達に指示を飛ばし始めた。
しばらく待っていると、出航になった。
俺達は操舵室に呼ばれた。
そこには乗員すべてが集まっていた。
「今回の護衛を担当する冒険者を紹介しておく。ケン=アーノルド、パーティーを紹介してれるか」
サーシェさんが言った。
「はい、僕がケン=アーノルドです。となりがユイ、見ての通り双子です。その隣がライカ、魔法使いです。後ろの獣狼族の子がジーナ、獣虎族の子がリンダ、二人とも剣士です。我々のパーティーはこの5人です。今回の護衛依頼、頑張りますのでよろしくお願いします」
「では、こちらも紹介をしておこう。まず今操舵しているのがオーベル、私の性奴隷だ」
オーベルと呼ばれた女性は白の半分透けている素材のチャイナドレスみたいな服を着ていた。
見事にボンッキュッボンッ!としておりエロいおねーさんだ。
上から順に見入ってしまうじゃないか・・・
足首には鉄製の足枷が付いていた。鉄のアンクレットと言えなくもないがやっぱり奴隷の証なんだろうな。
「こっちの筋肉4人がガイン・グイン・ゲイン・ゴインだ。4人は兄弟で労働奴隷だ」
筋肉マッチョ4兄弟はそろって褌一丁で筋肉を見せつけているようだ。
足首には鉄製の足枷が付いているが鎖や錘はついていないところを見ると、奴隷の証ってだけなのかな?
「そしてこっちの・・・」
サーシェさんが視線を向けたほうには俺達と同い年くらいの少年がいた。整った顔立ちに少年にしては少し長めの髪。
褌一丁だけど、マッチョ4兄弟程筋肉があるわけでもなし。
足首にはやはり鉄製の足枷が付いていた。
「私がサーシェ様の性奴隷、レンです。ケン様、ライカ様、お会いできる日を心待ちにしておりました!」
誰だっけ?見覚えは・・・ないな。
ていうか、少年だよね?サーシェさんの性奴隷??
「性奴隷とは勝手に言っているだけだ。雑用奴隷だから気にしないでくれたまえ」
怪訝な視線にサーシェさんが答えた。
「きみ、レン君って言ったっけ?」
少年でありながらどこか変わった雰囲気を持っている。
「私のような奴隷、呼び捨てで結構です」
「じゃあレン、以前に会ったことがあったかな?申し訳ないけど全く覚えがないんだけど」
「とんでもありません。わたくしが一方的に羨望させて頂いておりました。数年前、賞金首を捕まえた時たまたま私も港に居りまして
ケン様とライカ様をお見掛けしたのはその時です。聞けばまだ5歳だったとか。見事な捕縛術で賞金首を捕らえていたのを見た時は戦慄が走りました。その後、この船をサーシェ様が購入されるというので、すぐにサーシェ様の性奴隷として志願したのでございます」
「雑用奴隷だ」
サーシェさんが訂正する。
「まぁ、とにかくだ。これからゴカジまで護衛を頼むよ。レンも多少は戦力になるから場合によっては連携して対応してくれ」
「分かりました。では我々は船首で監視を開始しますね」
そういうと俺達は操舵室を出た。
積み荷がたくさんある甲板を抜けて船首に向かう途中。
「あの子、たぶん魔族にゃ」
「そうだね」
「そうなの?確かに不思議な雰囲気だなと思ったけど、ジーナとリンダは魔族ってみたことあるの?」
「ないにゃ。でも間違いないと思うにゃ」
「私もそう思う」
「魔族って強靭な肉体と高い魔力でとても寿命が長いって聞いたことがある」
「そうにゃ。ただ、他の種族に比べて圧倒的に数が少ないのも特徴にゃ」
「そして変わり者が多いらしいよ」
「ボクは魔族だからって偏見はよくないと思うな」
そうだよね、ライカは昔ハーフエルフって事で虐められた事があるからそういう差別には特に否定的だ。
「偏見ってわけじゃないよ。初めて見たからちょっと驚いただけ」
「でも、変わり者っていうのはそうなのかも。だって奴隷に志願するって普通じゃなさそうだもん」
「確かに」
そんな話をしていると船首部分に到着した。
「ここからなら周りがよく見えるね」
「それじゃここから監視するってわけだけど、ずっとみんなで監視するわけにもいかないから順番を決めて交代で見張りをしようか」
「順番はどうするにゃ?」
「俺とユイは戦力的に同じだから分けるとして、ジーナとリンダも分けるか。間にライカを挟む形でどうかな?」
「それがいいね」
という訳で、話し合いの結果ユイ、ジーナ、ライカ、俺、リンダという順番に決まった。
4時間交代制で監視するのは二人。交代は2時間ズレで入ることになった。
最初の2時間はユイとジーナ。
次の2時間はジーナとライカ。
次の2時間はライカと俺。
次の2時間は俺とリンダ。
次の2時間はリンダとユイ。
という感じだ。
これなら4時間の監視が終わった後次の監視まで6時間ある。
仮眠をとるなり食事をするなり自由時間というわけだ。
ユイとジーナを残して俺達3人は船内に入ってみることにした。
階段を降りてすぐ左手の扉を開けると、3段ベッドが2つ並んでいた。
寝るときはここを使うみたいだね。
部屋を出て今度は右手の扉を開けた。
中に入ると筋肉男2人が掃除をしていた。
「これは、ケン様。何か御用でしょうか?」
まだ20代位とはいえ、俺達みたいな子供に敬語って。
「いや、この部屋はどうなっているのか見に来ただけだから気にしないで」
「分かりました。ゆっくりご覧になって下さい」
とそこにレンがやってきた。
「あ、ケン様!それにライカ様も!何か御用でしょうか?」
賞金首を捕まえたのがそんなにこの子を刺激してしまったのだろうか。
やったらと尊敬されている気がする。
「いや、この部屋がどうなっているのか見に来ただけだよ」
「そうですか。ちょうど私も下のフロアの掃除が終わり昼食の用意まで少しだけ時間が取れます。よかったら船内を案内しましょうか?」
そっか、この子は改装前の事も知っているのか。
「じゃあお願いしようかな」
「承知しました。では、まずこの部屋です。見ての通りここはキッチンとリビングを兼ねております。食事はこちらでご用意させて頂きます。また休憩時間等にはご自由に使ってください。ここは改装前とほとんど変わり無いと思います。あそこの梁もそのままでしょう?」
そうなのだ、この部屋は俺達が捕まって拷問された部屋だ。
流石に当時おいてあった魔法効果を撃ち消す魔法陣は無いようだし、当時【火球】で焦げた床や壁も見当たらなくなっていた。
「この船をサーシェさんが購入したときはまだ当時の様子そのままでした。あそこの梁に賞金首を捕らえていたのでしょう?周りには服や拷問に使うようなケーンもありましたね」
レンはなぜかうっとりしている。
こいつもしかして拷問好きのサディストなんじゃねーか・・・。
「その様子を見た時からどのような拷問があったのかぜひお聞きしたかったんです!教えてもらえませんか?」
拷問に興味を持つとか、やっぱりこの子にはあまり近づかないようにしようかな。。。
「ああ、両手を縛ってその梁から吊って棒で殴るって事があったな」
「それはそれでソソリますが、よくある方法ですね・・・」
何で残念そうな顔してんだよ。
「・・・まぁ子供には言えないようなもんだ」
俺はチラッとライカとリンダを見ると、レンに言った。
「そうですか。私はこう見えて魔族なので300歳を超えていますがそこの女の子たちには刺激が強いかもしれませんね」
「やっぱり魔族だったの?それに300歳を超えている??」
「はい、そうです。312歳ですよ。とはいえ、魔族は寿命が長いので300歳でもまだまだ子どもみたいなものです」
「そういうもんかねぇ」
「それでは、その話は後ほどゆっくりお聞きするとして船内、ご案内しますよ」
そういうと俺達は扉を出た。
先ほど入った部屋は寝室だと説明してくれたが一度見たというと簡単に終わった。
扉を出て今度は少し進んだところにある右手の扉を開いた。
「ここは先ほどのキッチンとリビングへの扉です」
というと、中では筋肉男たちが掃除をしている先ほどの部屋だった。
「で、こちらはトイレと倉庫になっています」
少し進んだところの、今度は左手の扉を開けた。
入ってすぐのところに個室が作られており、そこがどうやらトイレのようだ。
そして奥にはたくさんの木箱が置かれていた。
「この階はこれだけです。また、下の階は説明したいのですが護衛部隊は立ち入りが禁止されておりますのでご案内できません。ケン様にはいろいろご案内したいところもあるのですが、サーシェ様のご命令ですのでご了承ください」
俺にだけ案内したいとか、もうなんか嫌な予感しかしない。
「続いて、甲板をご案内しますね」
といって俺達は甲板に戻ってきた。
「改装した際、クレーンは修復だけですが操舵室が大きく作り替えらえました。これは甲板にたくさんの荷物を積んでも視界を確保するためです」
確かにクレーンは健在だし、操舵室は小屋が追加されて高い位置になっていた。
「大体ご案内できるのはこのくらいですが、ご満足されましたでしょうか?」
「ああ、だいたい分かったよ。ありがとう」
「とんでもありません。それではわたくしはそろそろ昼食の準備に取り掛かりますので失礼します」
そういうとレンは階段を降りていった。
「丁寧な対応だしよく気が付くし、いい子みたいだね」
ライカが言った。
「そうだね、拷問に興味を持つところ以外は」
念のため補足しておいた。
「船についてはだいたい分かったにゃ!それよりも二人とも!釣りしよう!魚釣りにゃ!」
「そうだな。交代まで時間あるし釣りでもするか!」
俺達は甲板の左側の端までくると魔法で棒を作り出し釣り竿代わりにして釣りを始めた。
「さっかな♪さっかな♪」
「ところでライカさんや」
おじいいさん風にライカに話しかける。
「なんですかな、ケンさんや」
おばあいさん風にライカが返してくれる。
「ワシらは一体なにをしておるんじゃったかいのぉ?」
「いやですねぇ、ケンさんたらもう忘れたんですかぃ?釣りに決まっておるでしょうに」
そうなのだ。
俺達は3人ならんで座っている。釣り竿を海に向けて持ち、糸はちゃんと海にまで届いている。
が、先ほどからさっぱり手ごたえはない。
「エサがないのに釣りって言えるのかーーー!!??」
「まぁまぁ、こうやって海を眺めながら日向ぼっこもいいじゃない」
うーん、まあいっか。
「でも、そろそろボクは交代の時間だから行ってくるね」
「わかった、頑張ってね。何かあったらすぐ声かけるんだよ」
「わかってます」
そういうとライカは船首方面へと歩いて行った。
そしてしばらくするとユイがやってきた。
「こんなところで何してるの?」
「見ての通りだよ」
「釣り竿もって日向ぼっこもいいけど、これ使って釣りでもしたら?」
ユイが見せて来たのは豆アジなどの小魚や岩ガニの小さなヤツなど、釣り餌に使えそうなものだった。
「おお!どうしたの、これ?」
「見張りで暇だったからキラーフィッシュとか獲ってたんだけどね。捌いたら出て来たの」
「なるほどね。ありがたく使わせてもらいます!」
そういうと、糸を手繰って釣り針に餌を付けた。
「おーい、リンダ」
「お・・・さ・・・か・・・な・・・」
いつまで待っても魚が釣れず、悲しそうなまま座り込んでいるリンダに声を掛けた
「ユイが餌を持ってきてくれたぞ。これを付けて投げればきっと釣れるよ!」
「にゃにゃ!!本当かにゃ!?」
涙目になっていたリンダはいそいで糸を手繰ると、釣り針に餌を付けそして投げ入れた。
すると、さっそく手ごたえがあったようだ
「きーたにゃ!!」
勢いよく釣り竿を上げる!
スポーーンとがっつり餌に食いついた魚がリンダが釣り竿を上げるのとリンクして海面から上がってくる!
そのまま放物線を描いて・・・
ボチャン
海に落ちた。
「さかながーーーー!!」
リンダは身を乗り出して手を伸ばす。
が、
落ちそうなので引っ張り上げる
「危ないって。ちょっと勢いよく上げすぎたんだね。今度はもうちょっとゆっくりあげるんだよ」
「そうにゃ!次こそはっ!!」
気を取り直してもう一度餌を付けている。
俺の方は全く手ごたえがない。
途中からはじめたユイもさっきから動きがない。
唯一、リンダだけはアタリがあるようだがどうも引き上げるのが下手でまだ一匹も釣れずにいる。
アタリがあった時の嬉しそうな顔から、逃げられて死にそうな顔をもう何回みただろう。
そもそもそれだけアタリがあるというだけで羨ましいのに、その上なぜ逃がした後慰めてやらねばならんのか。。。
結局、俺は交代時間まで一匹も釣れなかった。
最近釣りしてないなぁ・・・
釣り、したいかなぁ・・・
いや、お外は寒いから別にしなくてもいいかな・・・




