冒険者ギルド登録
バリの港に着くと、以前より銀のプレートメイルを着た憲兵らしき人が多くいたような気がした。
港で何かあったのかもしれない。
が、俺達は何事もなく船を降り次の目的地であるギルドに向かった。
ギルドに入るとアスラが受付に行き、しばらくして2階の部屋へ案内された。
「デンゼルさん、こんにちわ」
「やぁやぁよく来たね!まぁ座って座って」
席を勧められたので座った。
「で、冒険者になるお告げだったんだろ?」
「ははは、、まぁ、、そういう感じです」
完全に決めつけられていたが、まぁほぼ当たった形だ。
ウィンデーネのその方が都合いいでしょ!の一言で冒険者になることは内緒にしとこう。
「じゃあ早速登録手続きだな!おーい!」
デンゼルさんは部屋の外にいるギルド職員を呼ぶとすぐに入ってきた。
「じゃあこの子達の冒険者ギルド登録の手続きと試験を頼むよ!」
デンゼルは職員に告げると俺達には職員に付いていくよう手を差し出した。
「さて、アスラ。実は相談があるんだが・・・」
俺達が出ていく時にはもう既にいないものとして話が始まっていた。
ギルドマスター自らアスラに相談って、、、なんだろう。
いや、今はそれよりも、だ。
手続きってなんか署名すればいいだけじゃないの?
気のせいかな・・・試験って聞こえたような。。。
「ではこちらが冒険者ギルドの登録申請用紙です。字の読み書きはできますか?」
子供だからって舐めているわけじゃない。この世界の識字率は全体で5割程度なんだそう。
申請用紙には名前と年齢、性別と職業を記載。
そのあとずらーーーとギルド規則みたいなものが記載されていて
問題なければ最後に署名する形になっていた。
ギルド規則を要約すると以下の通りだった。
1、冒険者ギルドに登録すると、世界中の冒険者ギルドにて各種サービスを受けることが出来る。更新は3年に1回。
2、冒険者ギルドのサービスとは、仕事の仲介、報酬の受け渡し、素材の買い取り、パーティーの登録、情報の共有および売買。
3、登録した情報は冒険者ギルドカードにて自分で管理すること。また、紛失等の再発行は可能だがペナルティーあり。
4、滞在国の法令違反行為、ギルドの品位を貶める行為、他冒険者の依頼妨害行為、依頼の売買行為、ギルド建物内での攻撃スキルの使用、
以上を禁止行為とする。禁止行為が認められた場合、ギルドマスターの判断により脱退処置が科せられる。
5、冒険者ギルドに申し出ることで脱退は可能。ただし再登録はペナルティーがある。
6、冒険者はFからAまでの6段階のランクに分類される。(Aの上にSランクも存在する)
ランクの移行は別途規約による。冒険者は自分の上下1ランクしか依頼を受けることが出来ない。
7、ギルドが緊急事態となった場合、その時点で滞在しているギルドの命令に従う義務がある。
8、常日頃から冒険者はギルドに貢献する努力を怠らないこと。
以上が記載されていた内容だ。
「ところで、この情報の共有ってなんですか?」
「それはギルド間で行うことが出来る転移盤の使用ですね。転移盤では文字を他ギルドの転移盤へ写すことができます。
これを利用して遠方へ手紙を送ったりすることも可能です。有料ですけどね」
ファックスみたいなものか。
「なるほど。それと、ペナルティーがあるってのは?」
「ほとんどが罰金です。重大な違反行為で脱退した場合は罰金だけではなく再登録禁止措置などもあります」
「では、ランク移行についての別途規約というのは?」
「こちらです。確認しますか?」
奥からタウンページみたいなのを出してきた。
いや、それを読むのはちょっとご勘弁願いたい。
「えーと、僕読むの苦手だから簡単に教えてほしいなーなんて。。。」
苦笑いと共に子供特権発動!!
「簡単に言うと、登録時は試験で試験官が決めて、それ以降は依頼をこなした数や内容によって決まりますが
最終的にはそれらを評価するのは各ギルドのサブマスター以上が判断することになります」
「わかりました」
言いながら、最後の部分に署名する。
「これでいいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。では試験を行いますので地下1階試験の間へ行きましょう」
俺達3人が申請用紙を渡すとそのまま地下へ案内してくれた。
地下には扉が二つ。
そのうち一つを開けると、中に入るよう促す。
俺達が入ると、中には高齢の髭を蓄えた男性が一人いた。
職員はその男に申請用紙を渡すと出て行った。
「ホホホ、新規登録者が3人か。そう緊張せんでもええ。試験と言っても簡単なものじゃ」
部屋は広く、大きな魔法陣のようなものが床と四方の壁に描かれている空間だった。
部屋の中央には謎の大きな岩。部屋の隅に申し訳程度に事務用の机が置かれている。
「よろしくお願いします」
「登録時の試験は簡単じゃ。この岩に攻撃するだけじゃからな」
見ると部屋の隅に置かれた幅、高さ、奥行きが約1,5メートル程のほぼ正四面体の岩があり、その裏面には魔法陣がびっしり。
「剣士なら剣撃で、魔術師なら魔法をこいつにぶつけるんじゃ。こいつは周りは柔らかいが中心に行くほど硬くなっておる。
仮にA級の攻撃でも真っ二つにはできんようになっちょる。お前たちのようなひよっこでも多少は攻撃が通るから安心せい」
なるほど。そういう試験なのね。
いきなり対人戦とかじゃなくてよかった。
「さて、誰からでもええぞ」
職員から受け取った申請用紙をペラペラと見ると、
「ケン=アーノルド。お前さんからやってみるか」
「はい」
名前を呼ばれて前に出る。
「職業は・・・魔法剣士か。なかなか難しい職業を希望しとるの。では剣でも魔法でも得意なのでその岩を攻撃してみなさい」
「では」
俺は改めて岩の前に立つと、手を差し出した。
「火の精よ、我に力を!【火球】」
俺は岩に向けて放った
岩に命中した火の玉は少しだけめり込んで消えた。
ちなみに、魔法は詠唱したために威力も消費魔力も普通の人が使うのと同様レベルだった。
なぜ詠唱したかというと。。。
まぁ、この世界で無詠唱ってのがかなり特殊なことは分かっているからね。
無駄に目立つ必要もないと考えたわけ。
ちなみに命中した岩はしばらくすると元の形に戻っていた。
自動修復だろうか・・・。
髭のついた白い機械人形の一部だったりして。
「では続いてユイ=アーノルド。やってみなさい」
ユイは俺と全く同じ事をして同じ結果だった。
「続いてライカ。職業は魔術師か。やってみなさい」
ライカも俺達と同じことをして同じ結果だった。
「みな同じくらいの力ということじゃな。。。。ふむ・・・妙じゃの」
なんでせう?
俺達の顔を順番にじーーーーーくりと見られる。
「ふぉふぉふぉ、まぁよいじゃろ。では冒険者として認めよう」
冒険者登録申請書に何か書き込んでいく。
部屋の隅に置いてあったテーブルに行くと、その上にある魔法陣付きの箱の中に申請書を入れた。
「こっちに来て、ここに手を置きなさい」
促されたまま、俺は箱の上に手のひらを乗せた。
すると箱のの横に開いた隙間からカードが出てきた。
「これがお前さんの冒険者ギルドカードじゃ」
手渡されたのはグレーのカードだった。
受け取ってみると、前世の記憶にあるカードと同じサイズ。
なんだろう、統一規格でもあんのかよ。
そして冒険者ギルドカードと書かれており名前と階級が記載されていた。
「そのカードは身分証としても機能する。紛失した場合は有料で再発行可能じゃが、盗難等によりそのカードを悪用された場合はお前さんにもペナルティーが科せられることもある。よって、カードをしっかり管理することが冒険者としての最初の仕事となる」
なるほど。盗難には気を付けよう。。。
「なにはともあれ、我々冒険者ギルドはお前さんたちを歓迎する!偉大な先人達のおかげでギルドは世界中で信頼を得ておる。
今後はお前さん達もギルドに貢献できる冒険者になることを期待するぞ」
「がんばります!」
真面目な顔から一転、ほころんだ笑顔はしわが目立っていた。
いいおじいちゃんじゃないか。
「ふぉふぉふぉ、そう硬くならんでもよい。新人なんじゃから失敗を恐れずにどんどんぶつかっていくもんじゃ!」
「はい、ありがとうございました」
そうして俺達は冒険者となった。
部屋を出ると階段をのぼりながらライカが聞いてきた。
「どうして詠唱してしかも初級魔法だったの?」
「だって、無詠唱とか目立つじゃん。変に目を付けられて厄介事なんて御免だよ。それに・・・」
「それに?」
「せっかくの冒険者なんだ。全部のランクをじっくり楽しもうよ」
これが本音だった。
せっかくの異世界ファンタジー。今まではレベルを上げることに時間を費やしてきたが、
これからは冒険者としていろんなことができる。
となれば、いろいろ経験してみたいと思うじゃない。
大抵のことはなんとなくなんとかなるもんだしね。
「そっか、、、、そうだよね。うん。ボクも楽しむようにする!」
あら、ライカさん。いい笑顔。
キャッチフレーズ。守りたい、その笑顔。
コンコン
「どうぞ」
「失礼します」
ギルドマスターの部屋に入ると、アスラとデンゼルは世間話をしていた。
なにやら真面目な話は終わっていたようだ。
「父さま、冒険者ギルドへの登録手続きが終わりました」
「そうか、おつかれさん。ちょっと見せてみろ」
「はい。これです」
「グレー、、、ということはFランクか。意外だな」
「君たちがFランク?そんなバカな!ロイゼルじいさん耄碌したか?」
あのおじいちゃん、ロイゼルさんっていうのか。
そういえばちゃんと名乗ってなかったな。
「いえいえ、そんなことは無いですよ。冒険者としての心構えなど教えて頂きました」
「5歳で賞金首を捕まえる子たちにFランクはない。そろそろサブマスターも引退か・・・」
あのおじいちゃんがサブマスターだったんだ。。。
「いえいえ、ですから大丈夫ですよ!僕たちはまだ子供ですし、Fランクから頑張ります!」
「むう・・・君たちがそういうならそうしておくが・・・」
そうです。
それでいいんですよ。
「そういえば、コスィーから聞いたよ!灯台の話。おかげで毎日魔法陣を起動する作業が無くなったんだ。
大体はコスィーが担当していたが不在の時は誰かを用意しなきゃならなかったのが手間だったしね。
向こう1年位は光続けるんだろ?あの煩わしさが1年もなくなると考えると嬉しいねぇ」
「実はどのくらい光続けるのかは僕たちでも分からないんです」
「そうなのかい?まぁそれでも光が強くなってより遠くからでも港へ戻ってこれるようになったと船乗りたちからも好評だよ」
「あれだけ光ってたら当然だよなー」
アスラは魔法を使った時のことを思い出しているのだろう
「そこで報酬なんだが、申し訳ないが実はまだ決めかねていてね。というのもどのくらい光続けるのかが検討つかなくてね。
それでどうするかということで話し合っているんだが結論が出ていないんだ。本当に申し訳ない」
なんてこった。逆に都合がいいパティーンじゃないか。
これ以上現金を持ち歩くのは正直怖いと考えていた小市民ですから。
「いえ、先日頂いた報酬もありますし急いでいませんので大丈夫です」
「結論が出たらすぐに知らせるからね」
「はい、わかりました」
「ではデンゼルさん、我々は村に戻ります。何かありましたら連絡いただければ駆けつけます」
「そうかい、頼むよ」
アスラといえば今は田舎の村で警備隊をやっているが、もともとは上級ランクの冒険者。
たまにデンゼルさんにたのまれてお助けマンとして活動していたりする。
たぶん、その事があるからこそアスラの発言になると思うんだけど
もしかしたら俺達が登録手続きをしている時にしていた相談事と関係があるのかも。。。
「さようなら、デンゼルさん」
「はい、さようなら。気を付けて帰るんだよ」




