10歳の慣例
10歳になった。
この世界では10歳、20歳、30歳と10年ごとに精霊様のところに行き、
お告げを聞く慣習があるそうだ。
それに従い、俺達も精霊様のところへ旅立つことになった。
精霊様はこの世界に7種類、火・水・風・土・光・闇の精霊様とその上に大精霊様がいるらしい。
このサイージョ村から一番近いのは港町バリから船の定期便で行ける精霊都市シーマだ。
この村の人はだいたいシーマでお告げを受ける。
今年10歳になったのは俺とユイ、それにライカだ。
俺達3人をアスラが引率してシーマまで行く予定となった。
ベンが引率する案も出たが、結局旅慣れしているアスラとなった。
俺達4人は警備隊の地竜を借りて港町バリへ向けて出発した。
行きながら精霊様のお告げというのを詳しく聞いてみた。
要約すると、精霊様はその人がどういう人で将来どういう活躍をするのかがある程度分かるようで、
そのお告げに従うと幸せになれるということになっているらしい。
アスラも10歳の時にお告げを受け、剣士として冒険者となったらしい。
その後の努力で魔法も使える剣士として腕を上げたようだ。
さて俺達はどんなお告げがあるのか今から楽しみだ。
魔力量は常人よりもあるから魔法使いかな?
それとも剣気も纏えるし剣士かな?
もしくは自宅の風呂を作ったみたいに、実は建築士の才能があったり?
前世の記憶を使えば金儲けも出来そうだし、商人の才能があったりするのかな?
それとも食文化を広めようか。この世界の食事情はイマイチだからな。
夢が広がるぜ☆
そんなことを考えながら数時間で港町バリに到着した。
「お前たちも覚えていると思うが、依然世話になったギルドマスターのデンゼルさんに挨拶していこうと思う」
アスラのそんな一言でギルドに寄ることになった。
辿り着いた建物は意外に大きく、レンガ造りで頑丈そうだった。
となりにあるギルド専用獣舎によると乗ってきた地竜を預ける。
アスラは慣れているようで入り口からギルドに入っていく。
俺達も逸れないようについていく。
ギルドに入ると、左に通常受付、正面にクエスト品受け取り用っぽい大きめの受付、
右に冒険者達の交流スペースとクエスト依頼が張り出されている掲示板があった。
アスラは左手の受付に行くとその奥にある階段へと案内された。
一室に通されると、そこはギルドマスターの部屋だった。
「やあ、アスラ。久しぶりだね」
「こんにちわ、デンゼルさん。お元気そうで」
「おや?この子達はもしかしてあの時の子かい?」
「こんにちわ、デンゼルさん。以前はお世話になりました」
俺の言葉に合わせてユイとライカも頭を下げた。
「いやいや、お手柄だったよ。まさかあんなにちっちゃな子供たちが賞金首を捕らえるなんてね。あの驚きは今でもよく覚えているよ」
「デンゼルさん、この子達も今年で10歳になりました。これから精霊都市シーマへお告げを頂きに行くところなんですよ」
「そうかいそうかい。君たちならきっと立派な冒険者になれるよ!」
「お告げはまだですよ?デンゼルさんは気が早い」
「5歳で賞金首を捕まえれるんだ。間違いなく冒険者ってお告げになるよ」
「ではその時はよろしくお願いします」
なんだかいつまでも続きそうな会話をある程度で受け流した。
「そういえばアスラ、ここに連れてきたということは賞金を受け取りにきたのかい?」
「ええ、この子達もシーマに行ったらお土産の一つも買いたいでしょうし。いいですか?」
アスラったら、父親特権で子供のお金をふんだくるような真似はしない、いい親じゃないか。
前世の時はよくお年玉を親に取り上げられたもんだ。預かっておくとか言いながらね。
「もちろん。賞金首4人分で金貨40枚だ。すぐに用意させるよ」
「突然ですみません」
「いいって。あ、そうそう。あの人攫いが使っていた船なんだけど、あれが結構な金額になってね」
「船の売却益まで??」
つい聞いてしまった。
「もちろんだよ。まぁ、売却にかかる手数料は引かせてもらったけどもね。賞金首の持ち物は討ち取ったものに所有権があるからね」
「船なんかあってもお前たちでは操船できないだろうから売るようお願いしたんだよ」
「それが船自体はまぁ中古だということもあったが状態は悪くなかった。一部修繕は必要だったがね。それよりも帆先が光っていただろう?
あの光は約1年程度光続けていたものだから目立ちたがり屋が結構欲しがってね。光が消えたあとも帆先に光輝く魔法陣を付けて今でも使っているらしいよ」
なんと。確かに少しずつ光が強くなるようにって魔力は込めたけどもまさか1年もの間光続けていたとは。
「そういうこともあって船と積み荷を金貨450枚で売却できたんだ」
「そんなにですか!?」
アスラが驚いている。
「クレーンの修理や船内の修理で金貨50枚はかかったからその分さっぴいても金貨400枚が君たちのものだ」
この世界の通貨は
銅貨=100円
銀貨=1,000円
金貨=10,000円
大金貨=100,000円
白銀貨=1,000,000円
という感じらしい。だいたいだけどね。
「とりあえず賞金首と合わせて金貨440枚だ。少し待っていてくれ」
そういうとデンゼルは部屋を出てギルド職員に持ってくるよう伝えたようだ。
いきなり440枚もの金貨と言われても持っているだけで怖くなるのが小市民。
4人で単純に割ると110枚ずつということになる。
確かに人攫いを倒したのは俺だけど、ライカだって一人は倒している。
ユイだって人攫いを見つけるために動いてくれたし、アスラの救助が無ければ倒した後困っていた。
それに子供が大金を持っているのもどうかと思うので4人で話し合った結果、
俺とユイとライカがそれぞれ金貨70枚。
残りの230枚はアスラが持っていくことにした。
それでも70万円分の現金を持ち歩くなんて怖い。
しかしこの世界に銀行のようなシステムな無いらしいからしかたない。
ちなみに俺とユイの残りの取り分である40枚×2は両親の寄付することにした。
親孝行だよ。できるときにね。
しかしアスラは一部をダクティとレムザにも渡すと言っていた。まぁそれが妥当かも。
また、ライカの取り分である40枚は村に戻ったらアスラがベンに渡すということになった。
「失礼します」
ギルド職員が布袋をじゃらじゃら鳴らせながら入ってきた。
デンゼルに手渡すと出て行った。
「形式上、アスラしか冒険者登録をしていないからアスラに渡すよ。慣例で金貨で用意したがよかったかな?」
「はい、問題ないです」
アスラは受け取ると金貨を数えた。
「確かに、受け取りました」
「「「ありがとうございました」」」
「いえいえ、こちらこそ。それとシーマで冒険者になるようお告げを受けたらさっそくここに来るんだよ」
もう確定してるみたいな言い方だ。
「わかりました」
「シーマへ行くなら今日の定期便はもう終わっているだろう?一泊して明日いくのかい?」
「はい、その予定ですよ」
「そうかい、だったらケン君にひとつ仕事を頼みたいのだがどうだろうか。時間はとらせないし危険はないよ」
「内容を聞いてもいいですか?」
「もちろんさ。バリの港にある灯台、そこで魔法を一つ使って欲しいのさ。船の帆先に着けたやつをね」
「どうだ?できるか?」
もちろんですたい。
「わかりました。でもどうせなら効果がある方がいいでしょう?僕たち三人で魔法をかけますよ」
「ユイちゃんもライカちゃんも使えるのかい。それは助かる。では今日の夕方、灯台に職員を派遣しておくよ」
「分かりました」
アスラが代表して答えると席を立った。
「未来の冒険者に幸あれ!」
そういってデンゼルは見送ってくれた。
「さて、まずは宿を確保するぞ。こっちだ」
アスラが先頭でギルドを出るとすぐ近くの大きな建物に入っていく。
「4人一泊、夕食と朝食を付けてくれ。あと夕食後にお湯を頼みたい」
アスラさん、さすがに慣れている様子。
案内された部屋はベットが4つにテーブルが一つ。
4人パーティー用の部屋だそうだ。
「それじゃあ宿も確保できたし、これから港へ行こう。明日の船のチケットも買わないといけないしな」
「はい」
「それとデンゼルさん直々に依頼された仕事もあるしな。だが時間はまだあるから観光しながら行くか」
バリの町に来たのは2回目だが前回は人攫い事件でそれどころではなく、
まともに観光なんてできていなかったのだ。
港までの道のりには商店街もあった。
商店街ではやたらめったら香ばしい匂いに、一角兎の串焼きを銅貨2枚で購入。
食べてみたら意外に変なクセもなく旨かった。
続いて興味をひかれたのがアクセサリーの店。
魔法の威力を上げる効果のあるブレスレットを金貨1枚で購入した。
まさに衝動買い!でもいいのだ。3人お揃いだしね。
そのあと雑貨屋に行って布袋を購入。
なんせ大金を持ってるから小分けにしておきたいしね。
まぁ今使っているショルダーバッグが盗まれたら意味はないかもしれないが。
その他に武器や防具を扱っている店もあったけど、とりあえず今は必要なさそうなのでパス。
ちなみに、バリの町特産といえば塩なんだそうだ。
なんとまぁ、子供心を魅かれない特産品だね。
港に近づくと、ホタテの網焼きをしている屋台を発見。
ホタテじゃなくてホッタテらしいが。
とりあえず銅貨2枚で購入。
まんまホタテの網焼き。旨かった。
アスラは一緒にエール(この世界のビールかな)を飲んでいたが、まぁ気持ちはわかるよ。
そうこうしていると港に到着した。
明日のシーマ行定期便のチケットを購入。
出発時刻は11時、到着予定は13時らしい。
その足で今度は灯台へと向かった。
ちょうど日も傾き始めた頃だった。
灯台の入り口に着くとギルド職員が待機していた。
「はじめまして、ギルド職員のコスィーです。お待ちしておりました」
「「「はじめまして!よろしくお願いします」」」
うん、元気のいい子供たち。
我ながら。
「では、早速ですが灯台の中へどうぞ」
コスィーは灯台の中に俺達を招き入れると壁に沿って続く階段を登り始めた。
「ここの最上階には光輝く魔法陣があります。普段は私が毎日この時間に魔力を込めて光を出しています」
「毎日だと手間ですね」
「最初はそうでしたが、もう慣れましたよ。でも今日は皆さんがしてくれるということで私も久々に魔力を使い切ることなく眠れそうです」
「魔力を使い切るまで込めていたのですか?」
「そうですよ。この光輝く魔法陣は海の上からも見えないといけないので結構魔力を使います」
という話をしていると頂上の部屋についた。
最上階は直径3メートル位の丸形、天井は高さ1、5メートル程しかなく、四方は大きな窓が開いていた。
真ん中には大きめの魔法陣が一つ設置されていた。
「この魔法陣に魔力を込める仕事です」
「コスィーさん、灯台なら明るければ明るいほうがいいですよね?」
「確かにそうですが、、、」
質問の意味が分からないようだ。
「俺とユイが壁に【照光】を張り付けるから、ライカが魔法陣担当ってのはどうかな?」
「いいね!三人でやってしまおう」
ライカさんの許可も出ました。
「じゃあ一斉にやっちゃおうか。いっせーのっ!」
「「【照光】」」
「えいっ!」
徐々に使う魔力を増やしていく。
「まてまてまてまてーー!明るすぎてなんも見えんじゃないかっ!」
「父さまは降りていてください」
光量を増やしつつ、継続時間も長くなるようにどんどん魔力をつぎ込んでいく。
「も・・・もういいんじゃないか!?」
なんとか手探りで階段を降りていたアスラから声がかかった
「じゃあこんなもんで。コスィーさんいいですか?」
ハッキリ言って明るすぎて何も見えないから手を伸ばしてコスィーさんを引っ張る。
そして階段のところまで連れてくるとやっと我に返った。
「ななな、、何が起こったんですか??」
「とりあえず灯台を降りましょう。ね?」
階段まで降りると何とか周りが見えるようになった。
ふらふらしつつも全員で灯台の外まで出てきた。
「なんという眩しさ!これならば遠い海からもこの光が届くでしょう」
「まぁ、これでしばらくはコスィーさんも魔力を込めにくる必要なくなったと思います」
「どのくらい持つんですか?」
「さぁ、、、前船につけた時は1年位光続けたらしいので最低そのくらいは続くと思いますよ」
「い・・・一年????」
「あ、でも前の時はこんなに強く光らせてなかったのでやっぱり分かりません」
「ボクも魔法陣にたっぷりと魔力をつぎ込んだから、しばらくは持つと思うよ」
「さて、今回の仕事はこんなもんでいいだろ?」
まだ唖然としているコスィーにアスラが声をかける。
「あ、、、ハイ。大丈夫です。これ、ギルドマスターから預かった今回の報酬です」
そういって手渡されたのは銀貨3枚。
デンゼルからしたら子供のお小遣いには十分と考えたんだろうな。。。
魔法一回使うだけだし。
「ああ、でもこんなにしてもらってこの報酬はないです。改めてギルドマスターより追加報酬を出すよう伝えますので!!」
「でも、この光がどのくらい持つか分からないからこれが消えた後でいいですよ!」
ちょっと魔法使って3,000円も貰うなんていいバイトだと思うけど、取り合えずお金には困ってないしね。
おそらく1年は消えないだろうし。
「必ずあとでギルドに来てくださいね!必ず追加報酬用意しますので!!」
「コスィーさん、分かりましたから落ち着いて」
興奮気味のコスィーさんをアスラが落ち着かせる。
「大丈夫です!私はギルド職員として仕事に見合った報酬をと言っているだけですから!!」
うーん、興奮状態のままですな。
「僕たち明日からシーマに行きますので、帰りにでもギルドに寄るようにしますね」
「分かりました。それまでには必ずギルドマスターを説得しておきます」
いや、そういう意味じゃないんだけど・・・。
「では仕事も完了したことだし、我々は宿に引き上げますね」
これ以上の問答は不要と判断したアスラが話にキリを付けた。
宿に戻ると早速夕食となった。
宿の1階にある食堂に座ると、テーブルにドンッ!と鍋が出てきた。
流石に日本風土鍋とはいかないが、港町らしく海鮮鍋だった。
たくさんの魚介類にトマトが入って旨い事味が纏まった絶品鍋だ。
あるじゃない!この世界にもうまい料理が!
やっぱ魚介は最高だ!
「今日は奮発して旨いものにしよう」
と言っていたアスラは、俺達の食べっぷりを見て満足していた。
みんなでたらふく食べた後、部屋に戻って布で体を拭き就寝となった。
今まで毎日風呂に入っていたのに、一日入らないだけでやっぱり不快だ。
それも数日の我慢だと思い大人しく寝た。




