(04-5)守られた?
週末、久しぶりに神社へ来た明里はいつものように神主さんとおしゃべりをしていた。境内は新緑が増え、風に揺れる葉の音がやさしく耳に入ってくる。
「それでね、天文部ができて。屋上のドームで活動してるんです」
月の観察。
太陽観測。
先生の話。
明里は最近の出来事を少し早口で話していた。
「ほうほう……」
神主は湯のみを手に目を細めながらうなずく。明里の話を聞くのが純粋に楽しいという顔だった。
「連休に泊まりがけで天体観測できるかもって思ってたんですけど」
明里はそこで少しだけ声を落とした。
「先生の予定が合わなくて結局できなかったんです。それだけは残念で。でも、夏か秋には合宿できそうなんです」
「そうでしたか」
神主は一度視線を庭の方へ向け、しばらく黙ってからゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。
「卯月というのはね、人と……人ならざるもの、その距離が近くなる時期でもあるんですよ。全国的に神事や祭りが増え始めるのもこの頃です」
明里は黙って耳を傾ける。
「そういう時期ですから……泊まりがけの予定が無いほうがいい、ということもあります」
少し微笑んで、
「守られたのかもしれませんね」
「……そうか」
明里は小さくうなずいた。
思い返してみれば、先生に「今回は無理」と言われたとき確かに残念ではあった。でも、どうしてもお願いしたいとか、何とかして実現したい、という気持ちは不思議と湧かなかった。満天の星空を望遠鏡で見てみたい気持ちは確かにあったのに――それならまたの機会でいいか。そう思える自分が確かにそこにいた。
もしかしたらどこかで感じていたのかもしれない。今は泊まりがけで出かける時期じゃない、と。
神主さんの話を聞きながら明里はそんなことを考えていた。




