(03-4)天文部
職員室の入り口で四人はいったん足を止めた。明里が代表するように軽くノックをする。
「……失礼します」
思っていたよりも声が響いた気がして少しだけ肩に力が入る。扉を開けるとずらりと並んだ机と紙の匂い。あれこれ書類を見ながら忙しそうにしている先生たちの中で、奥の席に座っていた新城先生とちょうど目が合った。
「あれ? 私?」
新城先生はすぐに表情をゆるめて手招きをする。
「どうぞ、入っておいで」
その一言で、他の先生たちの視線がふっと集まる。四人は顔を見合わせ、少しもじもじしながら新城先生の机まで歩いていった。
「どうしたの?」
やさしい声だった。
「部活のことで……」と明里。
一瞬喉が詰まる。でも、ここまで来たのだから、と気持ちを整える。
「私たち天文部に入りたいんです。でも……今は無いって聞いて……それで、相談に来ました」
言い終えた瞬間、心臓がどくんと鳴った。
新城先生は一瞬目を丸くしてから少し楽しそうに言った。
「天文部? あなたたち天文部に入りたいの?」
四人はほとんど同時にうなずく。
「そう……四人、ね」
先生はそう言って少しだけ視線を上に向けた。考えている顔だった。
「今は確かに天文部は無いの。この学校はね、基本的に五人いればクラブとして認めているの」
そう言ってから少し間を置く。
「でも……四人か」
また、少し考える。
四人は息をひそめるようにその様子を見つめていた。
「……うん、わかったわ」
新城先生は顔を上げた。
「すぐに返事はできないけど先生方と相談してみる。だから少し待ってて」
その言葉に、四人の肩の力が一気に抜けた。
「ありがとうございます!」
声が少しそろってしまい、四人で顔を見合わせて照れたように笑った。
放課後の帰り道。
「なんか……可能性、ありそうじゃない?」と楓。
「うん、最初から無理って言われなかったし」と美智。
夕子は少し控えめに、でも確かにうれしそうに言った。
「相談してみて……よかったね」
明里は空を見上げた。まだ明るいけれど少しずつ日が長くなってきている。
「ダメもとでも言ってみるもんだね」
その言葉に三人がうなずく。
まだ決まったわけじゃない。でも、何かが動き出した気がしていた。




