(03-3)部活
数日も経つと、夕子とはすっかり打ち解けていた。気がつけば、休み時間も昼休みも自然と四人で集まるようになっている。夕子のことを「ゆうこりん」と呼んでいた男子たちもいつの間にか距離をとるようになり、教室は落ち着いた空気を取り戻していた。
昼休み。話題は部活のことだった。
「クラブどうする?」と楓。
「強制ではないけどできればどこかに、って言われたよね」と美智。
「運動部は大変そうだし……」
明里が言うと三人そろってうなずく。スポーツが嫌いなわけではない。でも、毎日遅くまで練習するような生活を想像すると少し気が重かった。
ふと、美智が夕子の方を向く。
「夕子は何部に入りたいとかある?」
夕子は少し考えてから控えめに答えた。
「……天文部、かな。星を見るの、好きで」
「天文部!」
明里の声が少し大きくなる。その言葉を口にした瞬間、胸の奥がすっと明るくなった。夜空を見上げること、月の満ち欠けを感じること、それはもう明里の生活の一部だった。
(なんで今まで思いつかなかったんだろう……)
「それ、いいかも」と楓。
「星、きれいだよね」と美智も続く。
みんなで天文部。
想像しただけでとてもわくわくする。
ところが、夕子は申し訳なさそうに首をすくめた。
「……でも、この学校、天文部なくなったみたいで」
「え?」
「天文部、ないの!?」
夕子は小さくうなずく。
「前はあったらしいんだけど、部員が集まらなくて廃部になったって。入学式の日に先生に聞いたの」
一同、沈黙。
「……でもさ」
明里が顔を上げる。
「ここに四人いるよね?」
楓と美智が顔を見合わせる。
「四人いれば部活になるんじゃない? ダメ元で先生に相談してみようよ」
夕子は少し驚いたように目を丸くしたあとゆっくりとうなずいた。
「……うん」
四人は顔を見合わせて小さく笑う。そして、そのまま連れ立って職員室へ向かった。
春の光が差し込む廊下を歩きながら、明里は胸の奥で何かが静かに動き出すのを感じていた。




