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INTJ の浪人  作者: siliconAEGIS
第四章:stealthの深淵
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困惑

採点中、佐伯のレポート用紙に目を走らせた花子は、思わず息を呑んだ。


多くの生徒が箇条書きで無難に書き連ねている中、隣の私立高校で一番の問題児とされている佐伯の答案は、まるで一本の緻密な小論文だった。


――序論:幸福度について社会学科の視点から見た私の考察を論ずる。


1. マズロー心理学から見た私の立ち位置:先程の花子先生の講義を鑑みると、安全欲求までは既にクリアしていると考察します。今の私は“社会的欲求”の層にいます。頭の悪い私は勉強が苦手で、クラスにも馴染めず、他の生徒を妬むことでしか自分を肯定できず、グレていました。よく考えれば、勉強自体が贅沢であり、私はその機会をドブに捨ててきたという事実。下層の欲求は、とっくに満たされている。


2. 私の持ち物:それが特別であること。呼吸ができること。目が見えること。カレーが好きだということ。いつでもこの塾に通えること。山田先生、佐藤先生と出会えたこと。何より、命があること。難関大学を受験する権利を有すること。


3. 結論:生きてるだけで丸儲け、なんて誰が言い出したのでしょう。深く考えると、反論の余地は微塵もない。命があることが最大の幸運であり、私が持っているものは、実質的に無限である。


花子は絶句し、しばしその文字群から目を離せなかった。


何これ……大学の心理学の論文? コレが、塾で一番成績の悪い生徒の文章力?

頭が悪い?悪いものか、現役国語教師の私でも即興でこんなもの書けない。増してマズロー心理学?何それ、

隣の私立高校の授業をサボりココで山田が教えていたに違いない。高校の指導範囲には無いからね。ジェシカもかつてはここで学びハーバード(New college)に進学したと言ってたのも頷ける。

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