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INTJ の浪人  作者: siliconAEGIS
第3章:再び動き出す歯車
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無駄な努力


花子は、執務室の窓辺でコーヒーカップを傾ける同僚に、そのアルファベットと数字の羅列を投げた。


「JA7WNY。……これの意味は?」


背後で、総務省の電波監理と無線法規を神聖視するような古いタイプの管理職が、乾いた笑いを漏らしながら割り込んできた。


「――古いな。戦後間もない日本の割り当てだ。最初の『J』は国家コード、続く『A』は世代の証明。すなわち、日本という枠組みが電波の統制を敷いた初期から存在する、最も古い血統のコールサインだよ。誇っていい。私個人の『JZ』などとは格が違う。国に飼い慣らされた周波数さ」


校長の戯れ言など、花子の耳には一文字も残らなかった。


彼女の脳裏で鳴り響いていたのは、国家が管理する携帯電話の暗号化された回線でも、GPSの監視網でもない。ただの、物理的な空中線を伝うむき出しの電波だ。


花子はデスクに置いた手帳を閉じると、冷徹な決意を瞳に宿した。


免許を取る。それも、国家の用意したお仕着せの資格としてではなく、あの男と直接、誰の監査も通さずに交信する為の「回線(ホットライン)」を自らの手でこじ開けるために。


携帯電話の基地局など不要だ。電離層を反射し、夜の闇を貫くその周波数こそが、二人の世界を繋ぐ唯一の法廷となる。

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