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ランチデート
花子は確信していた。――山田はまだ、私を見限ってはいない。ならば、攻め手を間違えなければ主導権は握れる。
「山田さん。そろそろお昼だけど、お腹空いてない? 私は、山田さんの好きな店に行きたいな」
わずかに眉間を歪め、困惑の色を浮かべた山田に連れられて辿り着いたのは、煤けた看板を掲げた古びた中華料理店――『紅花』だった。
席に着くや否や、山田はメニューも見ずに言い放つ。
「焼き魚定食、2つ」
耳を疑った。中華の看板を掲げた店で、なぜ焼き魚なのか。思考の回路が一時停止した花子を放置し、山田は間髪入れずに畳み掛ける。
「ココはな、梅干しが美味いんだ」
――は?
中華料理屋の片隅で、男が真面目な顔をして語る「絶品の梅干し」。
一体何を狙っているのか、この男のアルゴリズムは微塵も読み切れない。




