残された女達の闘い
Jessicaを悪者に仕立てる許可が降りたので書きます
「俺は帰る。花子先生、こんな国家規模のバグに付き合う義務は一切ない。一緒に店を出るぞ。……会計はいい。ココは俺の店なのだからな」
冷え切った一言を残し、山田は一切の迷いなく踵を返した。
カラン、とドアベルが鳴り、彼の巨躯が夜の闇へと消えていく。
――だが、佐藤花子は動かなかった。
恐怖に突き動かされて一緒に店を飛び出すなど論外だ。今の彼女の脳内を完全に支配していたのは、恐怖を凌駕する別の衝動――この場に留まり、あの国家中将から「山田太郎」という男の正体、その隠されたすべてのコードを聞き出すという、狂おしいまでの執着だった。
山田という絶対的な主が去り、場末のおでん屋の空間には、ふたりの女だけが取り残された。
ピタリと静まり返ったカウンター。
国家の圧倒的な闇と冷徹な知性を纏う絶対悪・ジェシカは、わずかに目を細めると、冷ややかな視線を残された花子へとスライドさせた。
その瞳には、一介のローカル教師に対する憐れみも、警戒心すらない。ただ、自分の盤面を乱す下等なノイズを見据えるような、底知れぬ威圧感だけがあった。
ジェシカは優雅にグラスを傾け、氷のぶつかる乾いた音を響かせながら、吐き捨てるように言った。
――「You're interesting... 微動だにせず、I'm not interested about u」
(面白い女だね……だが、ぶっちゃけ、私にとってお前は興味の対象外さね)
日本語と流暢な英語が混ざるその冷徹なマウント。
国家の頂点に君臨する絶対悪の圧倒的な格の違いが、花子のプライドを音を立てて粉砕していく。それでも花子は、引き下がらなかった――。




