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INTJ の浪人  作者: siliconAEGIS
第二章:計画の破綻
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USPHS中将からの着信

実話が混ざってしまった。

ふいに、静まり返った自習室の空気を切り裂くように、花子のポケットから電子音が鳴り響いた。

ディスプレイに表示された見知らぬ国際電話の番号。怪訝に思いながらも通話ボタンを押すと、ノイズ混じりの、しかし有無を言わせぬ覇気を含んだ英語が耳朶を打った。

――"Hey, is there Taro? This is Jessica calling."

花子は思わず息を呑んだ。

彼女は国語教師でありながら、英検1級の資格を持つ。その語学力と反射神経が、相手のタフなアクセントとただ者ではない只気を瞬時に翻訳し、最適解を導き出す。

「――Yep. He's right beside me.」

返答を聞いた瞬間、電話の向こうの空気が変わった。ジェシカと呼ばれた女は、冷徹なトーンで言い放つ。

――"I introduced myself as Lieutenant General Jessica of the USPHS. Who are you? You'd better give up, since you'll never get it anyway."

(私は米公衆衛生局士衛隊中将のジェシカと名乗った。……お前は誰だ? まあいい、どうせ手に入らないんだから諦めることだね)

「USPHS……? 一体、どういうことよ……っ!」

返答を待たず、プツリと無機質な音を立てて電話は切れた。

心臓がうるさいほどに脈打っている。いま、耳の奥に残った「USPHS中将(Lieutenant General)」という単語の重み。それは国内の学校の枠組みなど遥かに超越した、国家の公衆衛生とバイオセキュリティーを司る最高峰の階級だ。

震える手でスマホを放り出し、花子は目の前に座る男を睨みつけた。

「……いまの、一体何よ、山田。アメリカの……それも士官、中将だなんてふざけた肩書の人間が、なんであなたの教え子なのよ……! あなたは一体、何者なの……っ!」

山田は相変わらず不敵な笑みを崩さず、古びたボールペンを指先で回しながら呟いた。

「んあ? ああ、ジェシカか。昔、向こうのプロジェクトで少しコードを書き換えてやったことがある。……まあ、出来のいい教え子の一人さ」

――教え子、だと?

高校生という仮面をかぶり、地方の私立高校に寄生している男の裏側に、どれほどの底知れぬ履歴とグローバルなネットワークが隠されているというのか。

知れば知るほど、この男というシステムの巨大な迷宮に、自分の魂ごと完全に絡め取られていく。

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