メインヒロイン、堂々登場!
すっかり日は暮れ、校庭を行き交う人はいなくなっていた。薄っぽい闇がわだかまるその中を、俺は一人で歩く。穏やかに漂う空気は春の花の香が漂っていて、大層気分が悪い。
俺は昔から新生活が嫌いだったため、出会いの季節を感じさせるこの香りが鼻腔をくすぐる度にストレスで腹の底がジリジリと傷んでしまう。一種のアレルギーのようなものだ。
時刻は二十時。見回りの先生が図書室に来たのと、俺が作業を終えたのはちょうど同じだった。日誌と図書委員の作業以外にも、その道中で俺のもとには頼み事が舞い込んできたせいで、結局こんな時間になってしまった。
ホント、自分のことは自分でやってくれよ。
そして、それを断れない自分もやはり情けない。
俺は空を見上げた。そこには星一つない夜空に煌々と満月が輝いている。
近づいてしまえば、でこぼこで歪な球体は今日も人を引き離すことでまるで自分が完全無欠で完璧な満月なのだと主張している。
そんな憎らしい満月を睨みながら、俺は校門を抜ける。
「うわっ!」
瞬間、俺の体に向かって何やら影が飛び出してきた。
それを俺が躱せるわけもなく、まるでラグビーのスクラムみたいな要領で俺はあっけなく尻餅をついた。全身の痛覚に衝撃が走る。
「ふぅー、やっときた」
その目の前の影は俺を見下している。
痛みでぼやけていた視界も徐々が徐々に晴れていく。
「藤咲、さん?」
「よしっ、これでラブコメのノルマ、『角曲がったらバッタリ運命の出会い!?』を達成ね」
何を言ってるんだろう、こいつは。
俺はいまだに困惑していると藤咲は月を背にして勝気に笑う。
「いやぁーね、あんたとは一回直接話したいとは思ってたんだけど、ほら私って人気者だからさ、休み時間に人が集まりすぎてて話す暇がないっていうか?」
「情けで話しかけてくれてる心優しい生徒たちに『あなたはラブコメには出てこなそうなキャラしてるわね』とか言って、顰蹙買いまくってる奴のどこが人気なんだよ」
藤咲に若干の興味を抱いた人は最初こそ話しかけたりしていたのだが、あまりにも藤咲が失礼な態度で返す者だから、よりその嫌われ具合は加速していた。
俺はそんな隣の席の様子を思い出しながら、立ち上がる。
「そこであんたを待ち伏せようって思いついたわけ。で、どうせならラブコメっぽく校門で健気にあなたが出てくるのを待ってたの。なのに一向に出てこないから、つい憂さ晴らしも兼ねれごっつんこしてみたの」
「そんな可愛い感じじゃなくてイノシシの体当たりとか、そんな感じだったけどな」
藤咲に倒されたことで、俺のいつもの外面の遠慮みたいなものは消え去っていた。
すると藤咲は急にビシッと俺を指さした。
「ちょっと、付き合ってもらうわよ」
「えぇ、もう八時だぞ。別に明日でも————」
「次のノルマは、帰り道ファミレスよ!」
こうして俺の、残業が確定したのだった。
*
「いやー、夢だったのよね。高校の帰り道で男女でファミレスに行くのって!どうかしら、傍から見てると、今の私達ってすっごくラブコメっぽいかしらね」
「あぁうん。そうだね、すっごーい」
「ちょっとは会話する意志を見せなさいよ。興味ない男子といる時の女子みたいな相槌打たないで!」
藤咲に連れてこられたのは一般的なファミレス。和洋中なんでもござれと言った品揃えで、店内は不規則な、それでいていい香りが充満している。利用客もみな、幸せそうだ。
沈んだ顔をしているのは体当たりで傷んだ尻がまだヒリヒリしてる俺くらい。
ちなみに俺は疲れ切ったら食欲がなくなるタイプなのでドリンクバーしか頼んでない。そしてメインヒロインを志している藤咲はというと。
「いやー、でもほんと。ズビビー!んっ、今日だけでもたくさん、のるふぁほふひあでひはは」
チゲうどんと熱々のドリアを堪能している。口はリスのように膨れている。
「飲み込んで喋れよ、汚い」
「ふぁーい」
そう笑って、藤咲はポテトに手を伸ばして三本同時に放り込んだ。
特撮とかで怪獣が市民を飲み込む時の映像が、なぜか俺の脳裏では再生される。
藤咲は口の中でぐちゃぐちゃになったであろう食材たちを飲み込むと、コーラーで喉を潤わせた。
「いやーでも、今日だけでたくさんのノルマをクリアでたなーって。てか、あんた私に冷たくない?」
「そりゃこの時間に強制連行もされたら悪態の一つでもつくだろ」
「へぇ、源元光も完璧じゃないのね」
藤咲は嬉しげにそう呟いた。
源元光は完璧じゃない。
その一言はどこかチクリと俺の胸を刺す。俺は完璧でなければならない、そんな自縄自縛が俺の体により食い込むように感じられた。
「勉強だってできるし、藤咲さんよりは友達もいるし、部活だって一年でレギュラーだったし、完璧とまではいかなくても優秀だとは思うけど」
「ふーん」
途端、退屈そうな声音。苛立って紡いだ言葉は、すぐに間違いだったと気づく。
「つまんないの。あのねぇ、まず誰かと比較してる時点であなたは自分の人生に熱中してもなければ満たされてもないの。幸せを指折り数える人なんていないでしょ?もしいたとしても、その人は不幸せな人よ」
「何が言いたいんだよ」
「つまり!私の方が、潜在的なヒロイン力が高いということよ」
パクリ、藤咲はまたポテトを食べる。次は五本同時。
俺はなぜ行きたくもなかったファミレスで、対して仲良くもない奴に説教をされているのだろう。そんなイライラが込み上げて、俺は小さく手をあげる。
面倒事は効率的に。雑用を任される中で磨いた精神をここで発揮する。
「ちょっといいかな。結局、何のようなわけ?」
藤咲は俺の質問にすぐには答えず、もぐもぐと口いっぱいに詰め込んだドリアたちを咀嚼している。
俺はコップに反射する歪んだ自分を見つめる。ぐにゃりと写る俺の虚像は、本来の自分がわからなくなるほどに歪で、輪郭がぼやけている。
俺はそんな自分を握り潰すように強くコップを手に取って、水を煽る。
「あのね」
コップが机に置いたその瞬間、藤咲は声を発した。
藤咲は退屈げに頬杖をついている。けれどその視線はずっと何かを狙っていたかのように、俺だけを捉えていた。
「私、あなたに教えて欲しくて」
その声は勝ち気な彼女らしくないか弱く、今にも泣き出しそうな声に聞こえた。
藤咲は反らしていた顔を正面に直すと、その眉は頼りなさ下に中央へと寄せられている。
「教えるって何を」
「それは・・・」
指先をいじらしく遊ばせ、うつむきがちな藤咲の頬は淡い朱に染まる。
そして上目遣いでこちらを見る。
俺はその潤んだ瞳に吸い寄せられると同時に、なぞの高揚感で固唾をのむ。
こ、これは——!!
「ヒロインの成り方、教えて?」
「何いってんだ、マジで」
「あああぁぁ!やっぱりあんたもそういう人間だったのね!」
「い、痛い!首閉まるから、襟を両手で掴みに来るのはやめろ!」
まるで唐突に威嚇してきた猫のような俊敏さで首元まで手を伸ばしてきた藤咲をなんとか払いのける。
咳払いをしながら俺はさっき藤咲が何を言ったのかを思い出していた。
「なんで男の俺にヒロインの成り方を聞くんだよ。てかヒロインってなに、厨二病的なアレ?」
「ちっがよわよ!私は本気で言ってるの。それにあんたは私が見るに一番学校で人気者だから、あなたならなにかコツを知っているんじゃないのかと思ったのよ。ヒロインってのは要は主人公という意味よ」
藤咲は自分の不機嫌さを表すように大きく椅子へともたれかかると、まるで俺が期待外れだと言わんばかりにかぶりを振る。
思い出すのは自己紹介のあと、俺をまじまじとみてこいつが言った言葉。
あんたがこの学校の主人公?
あの時から俺は目をつけられていたのか・・・。
「要はどうすれば人気者になれるのかってことか」
「ちがうわね。人気者じゃない、メインヒロインよ。二度と間違えないで」
どうちがうんだよ。
俺はつい本音が出てしまいそうになるが、それを必死に飲み込む。俺は『源元光』なのだから。
「なんでまたメインヒロインに成りたいんだよ」
「私の夢だからよ」
だめだ、まるで要領を得ない。
俺も藤咲に習って深く椅子に体重をかける。
そもそも藤咲は俺の知る限りでは学年一の変人だと評されているのだ。
もうすでにそんなイメージのある藤咲が逆転して誰からも好かれるメインヒロインになるのは、正直言って想像できない。それこそ俺は人気者だが、日常生活において一瞬たりともマイナスポイントをつけられないよう常に意識をしているのだから。それくらいの気概がないとこのポジションは務まらない。
「で、どうすれば私はあなたを超えられるかしら」
まっすぐに純粋な瞳を向けられ、俺はため息混じりに応える。
「別に、こっちはこっちで苦労があるんだよ。告白を振るときに少しでも言い方間違えれば調子に乗ってるだの言われ、誰かから少しでもヘイトをもらうような立ち振る舞いをすれば根も葉もない噂を流されて・・・みたいなことなんてザラだぞ」
みんなから注目される。それすなわち期待されると言い換えられる。
そして、期待だなんてものは酷く自分勝手な害でしかない他人の押し付けがましい知ったかぶりだ。
期待だなんて自分勝手で、不条理で、無益なものにどれだけこちら側が神経をすり減らしていることか。もちろん、そんな苦労すら見せないように振る舞ってこその、青春の主人公なんだけど。
「そんな事情なんて知らない。ただ質問に答えて」
「ヒロインになる方法なぁ・・・」
確かに俺は、主人公なんてものは誰だってなれると思っている。それは別に悟りだったり、謙遜だったりではなく、ベクトルとしてはその逆。俺みたいなのが今のポジションにいれるのであればそれ殆どの人間でもたどり着ける、その程度のものだという認識。
俺だって最初はモブだったわけだし、そこから努力はすれど基本的には運命に流されて、たどり着いたのがこのポジションだったのだ。
だから、主人公になる種みたいなものは誰だって持っているのだと思う。
かといって、その芽の育て方を知っているわけでもないのだけど。
正直めんどくさくなってきた。
俺はそんなことを思いながら、思考の先はどうすれば穏便にこの会話を終了させることができるかへとシフトしていた。このめんどくささは全部、相談に真面目に向き合おうとする俺の真っ直ぐな性根のせいだ。
俺は姿勢を正し、いつもの笑みを浮かべる。口を横に広げ、目を細くつむるイメージ。
「藤咲さんならすぐにクラスに馴染めると思うし、別にそんな焦らなくても大丈夫だと思うよ」
にこりと一層笑う。
「ふざけないで」
鋭利な声音に、俺は思わず笑みを絶やす。
大きな声ではないのにも関わらず、怒気のこもった声は薄い氷を踏んだときのようなピシャリとした緊張感を放つ。
藤咲の眼差しは少しの情けも、甘えも、怠けも許さないと俺に告げている。
そんな本気で俺を責める視線が、なぜだか俺は嬉しかった。
俺は自分のスイッチを切り替えるために大きく一回息を吐ききった。
「あのなぁ、誰だってなれるけど、狙って俺みたいなポジションにこれたら気苦労ないわけ。だいぶ藤咲は無茶言ってんだぞ。ただでさえ自己紹介でマイナスからのスタートなのに」
藤咲の熱にうかされるように、俺の口から滑り出てきた言葉はどれもが本物だった。
だいぶキツイ口調だったか、と不安になったが藤咲の表情はピクリとも変わらない。
「そんなこと知ってる。でも、だからってここで諦めたら絶対に後悔することは、もっと知ってる。私は自分を変えたい、だからこうやって汚い手段を使ってでもあんたにお願いしてるの」
「何がそこまで藤咲を突き動かすんだ」
単純な興味だった。
嫌いな今の自分を変える。それはきっと口で言うよりも難しくて、ほとんどの人は結局おだやかに人生を歩むうちに、自分の嫌いなところからどう目をそらすかだけが上達していく。
だが、今の藤咲は本気で自分の未熟さや理想との乖離に向き合っているように見える。
藤咲の澄んだ瞳は照明の明かりを反射し、その意志の強さがまるで壮大な夜空に見る一等星のように煌めいている。俺はその灯りに縋るように、藤咲を見つめる。
「私が私を誇るためよ。誰のためでもない、私のため。勘違いしないで欲しいんだけど、チヤホヤされたいとかそういう周りからの評価のためじゃないから」
「・・・そうか」
俺は下唇を噛んだ。目を閉じた。強く、固く。慙愧の思いがあふれないように。照明の眩しい灯りが入ってこないように。
俺は周囲が喜ぶから、それが正解だと思って「みんなの源元光」を貫いた。その結果が今のポジションだ。しかし、藤咲の真っ直ぐな思いの前ではそんな過去の選択が、それに伴う努力がすべて間違っていたかのように思える。
いや、きっと間違っているんだ。
その証拠に——
「———なら、俺を頼らないほうがいい。俺は、少なくとも今の自分を誇れないから」
「なんで?あんたはさっき自分は優秀だって言ってたじゃないのよ」
俺は藤咲の言葉に苦笑する。
だって、藤咲がさっき俺に言っていたことはまんま今の俺の不満を言い当てているんだから。
「藤咲の言い方を借りると、俺は周囲のために主人公をやってきた。だから、俺の口から出る言葉は全部が偽物なんだ。今の俺には、俺がいない」
ともすれば、今必死に紡いで届けようとしているこの想いですら、自分の本心じゃないのかもしれない。そう思ってしまうほどに、俺は自己不信になっていた。
「だから、この前藤咲は聞いてきたよな?どうして自分をクラス委員に推薦したのかって。あれは、正直めちゃくちゃな自己紹介を見て興奮したからだよ。この藤咲って奴なら、俺の退屈な学校生活を壊してくれるかもって。そんな、他力本願だよ」
言っていて悲しくなるほどに、無責任で情けない話である。変わりたいという思いを、他人に委ねているんだから。それこそ委員決めでダンマリを決め込んだあのモブたちのように。
「なら、あんたはどうなりたいの」
「俺は、きっと・・・」
続く言葉を、思いを、俺は知っている。けれどそれを言ってしまえばその思いが巣食って、今の自分をより嫌いになりそうで言い出せない。
握る拳の力が強くなって、震えだす。
俺と藤咲の間に言葉は交わされない。
しばらくそのまま、ただじっと俯いていると、カランと藤咲のコップの中の氷がぶつかる音がした。それは風鈴みたいに冷たく、心地の良い音。
「嫌われたい」
俺は消え入るようなか細い声で、そう紡いだ。
「期待されることもなく、呆れられて、諦められる、そんな人間に、俺はなりたい。もう、うんざりなんだ。嘘を言うのも、嘘で繋ぎ止める人間関係も。主人公だって言われる源元光でいるのも」
一息で言い切ってしまうと、気づけば手の震えは収まっていた。代わりにどっと疲れが腹の奥底に貯まる感覚。けれど大声を出したときのような爽快さも、入り混じっていた。
藤咲は俺の言葉を聞いて、笑うでも憂うでもなくただ平静に目を軽く伏せた。
からんからん
遊ぶようにストローで水をかき回し、コップの中の氷はぶつかり合って軽やかな音を奏でていた。からんからん。
「光」
ふいに名前を呼ばれ、俺は怒られる前の子どものように姿勢を正して藤咲を見る。
目が合うと、藤咲は彼女らしい意地悪な笑みに向かって徐々に口角を上げる。
「私に協力させてあげる」
「どうして」
「私があなたを超えるためによ」
前のめりで、俺の瞳の奥に眠る何かに告げるよう、はっきりと藤咲は口にした。
「要はあなたは高校で一番の主人公であることに疲れてるんでしょ?なら私がそんなあなたを超えてあげる。それならみんなは私に期待するし、逆にあんな変人よりも頼りない光はもう期待できない!ってなるでしょ」
「でも超えるってどうやって」
「光、だからあんたも覚悟を決めなさい」
途端、冷めた口調になって藤咲は腰を据えて俺を見る。
無表情なその顔は、まるで俺を試すような視線を送っている。
「あんたは周囲に嫌われるようにたち振る舞うの。そうすれば私もあなたも、目的が達成できるわ」
「俺が嫌われ、藤咲は好感度を稼いで、相対的にお前のほうが主人公になるようにするってことか?」
「まぁそういうことね。変わりたいんでしょ、ならその機会をあげるってこと。私だって一人ではヒロインにはなれないし」
藤咲は自信ありげにそこまで言ってから、思いついたように呟く。
「でもどうやってそれをするかなのよねぇ」
やっぱりそこは決まってないのか。俺はやや落胆しながらも、同時にその詰めの甘さに藤咲らしさを感じて安心してしまう。
俺が嫌われて、同時にこいつの株を上げる。かつ俺みたいな主人公に藤咲がなるには・・・。
「なら今俺達が抱えてる恋愛相談を受けるってのはどうだ」
「レンアイソウダン?」
訝しげに言葉を繰り返す藤咲。
けれど徐々に言葉の意味を理解したのか、藤咲は興奮気味に手を叩く。
「いいじゃない恋愛相談!まさにラブコメには欠かせないイベントね!しかも光たちが相談されてることってことは、私も光のグループに入って活動するってことよね?」
「まぁその予定だけど」
「もうっ、さっすが光様ね。頭の回転早いんだから!」
ぽんぽんと俺の肩を叩く藤咲。憧れのラブコメの世界に足を踏み入れられることが相当に嬉しいようだ。
ただね、力加減には気をつけてくれるかな。だいぶ痛いんだけど。
「なんならあのメンツの中から選抜して部活とか作ってみるのもいいわよねぇ!よくわからない部活で男女でいちゃいちゃするのってラブコメの王道だし!」
楽しげに色々と未来を妄想する藤咲。俺はそんな彼女を見ながら、不思議と頬が緩んでいることに気づく。それは久しく忘れていた、温かで和やかな感情。
初めて自分の本音を語るのが、まさかこんな変人転校生だとは。
けれど微かにコレまでのレールから逸脱しているこの感覚に、俺は妙に興奮していた。
この僅かなズレが、やがては大きなものとなって嫌いな今の自分から、何にでもなれるんじゃないか。
楽観的とは思いながら、そんな思いを抱かずにはいられなかった。
「よしっ、それじゃあ明日早速私を仲間たちに紹介しなさい。私達はもうバディーだからね。」
そう言って、藤咲は立ち上がると鞄を肩にかけて、拳を差し出してくる。
「ぜひ一緒に素晴らしい青春をしましょう」
「・・・あぁ、頼んだぞ。次の主人公」
俺と藤咲は拳をぶつけ合った、
勝ち気に微笑んだ藤咲は、俺に片手を上げながら颯爽と店を出た。
その背中はまるでハードボイルドな刑事のようで、さながら何かの主人公のように思えた。
そんな遠のく背中に、俺は言葉を送る。
「全部、俺持ちなのか」
こうして俺と藤咲の、不可思議な青春の日々が始まったのだった。




