第15話 誇りの代償
シェルシー「あら起きたのね、気分はどう?此処はお城の医務室よ、私もさっき迄眠っていたの、でももうすっかり元気よ、ほらこの通りよ!」
シェルシーはイレイザに自分の肘を曲げて見せた。
イレイザは自分の両手を見た。
イレイザ「私は確かネックレスの悪魔に…」
シャード「その悪魔ならもう居ないわよ、あの子が貴女に取り憑いていた悪魔を浄化したから!」
シャードはベッドで眠っているサーシャを指差して説明した。
シャード「そのせいで、あの子は記憶喪失になったかも知れないのよ、一体どうしてくれるの!責任取ってもらうわよ!」
シェルシー「シャード待ちなさい」
シャードはイレイザを指差しながら言った。
シャード「この人はサーシャの仇なのよ!お陰でサーシャはあんな目に遭ってるのよ!本当に只じゃ済まないわよ!」
シャードは今にもイレイザに殴り掛かりそうだった。
シェルシー「殴るのは簡単よ、でも、そうじゃないわ、先ずお互いの話をするの、それからどうするか決めるのよ、ね?シャード落ち着いて、いいわね?」
シャードは腕を組んで不満そうな顔で答えた。
シャード「分かったわよ」
シェルシー「それじゃイレイザ、どうして悪魔なんかを利用したのか教えてもらえるかしら?」
イレイザは頭と気持ちを整理しながら話を切り出した。
イレイザ「私は前に街食堂の店で料理人をしていたんだよ」
シェルシー「知ってるわよ、昔母さんと食べに行ったもの。結構豪華なコース料理を作ってる店よね」
少し嬉しそうにイレイザは話を続けた。
イレイザ「その店で修行を積みながら二、三年に一度、城の宮廷料理人の採用試験を受け続けたんだよ、私の憧れの職場だったからね」
シェルシー「でもなかなか入れなかったのね、料理の世界も厳しいからね、で、どうしたの諦めたの?」
イレイザ「最後に、年齢制限ギリギリで受けて、落とされたんだよ、アンタに!」
シェルシーは驚いた顔をして一瞬戸惑った。
シェルシー「私?」
話を聞いていた一人が前に出て言い放った。
シャード「それは私よ!」
一同は驚き視線をシャードに合わせた。
シャード「訳あってその時は王妃の代役をしていたのよ」
イレイザに事情を話すのが面倒なのでシャードは少し話を変えた。
イレイザ「じゃあお前があの時、私の料理を馬鹿にした女か!」
シャード「馬鹿にしたんじゃ無いわよ、でもアレは食べられないわ」
おばあちゃん「どんな料理だったんだい?イレイザの店では肉料理がメインだったんだけど」
シェルシーも昔食べた料理を思い出した。
シェルシー「すっごく美味しかったわよ、いろんな料理がいっぺんに食べられるし」
シャード「二人が食べたのはそうだったのかも知れないけど…」
嫌な物を思い出す様に言った。
シャード「生焼けだったのよね」
オリバー「ええっ、本当に!?」
メニ「生焼けって」
おばあちゃん「それじゃねぇ」
シェルシーはイレイザに視線を合わせた。
するとイレイザは慌てて弁解をした。
イレイザ「そんな事はない、私は料理人だよ、生焼けの肉なんか出す訳がないだろ!」
シャード「じゃあ私が嘘ついてるって言うの?」
シェルシーは両手をシャードに開いて言った。
シェルシー「まあ待ってシャード」
くるりと向き直ってイレイザに言った。
シェルシー「シャードは本当の事しか言わないと思うわよ、それに本当は心当たりがあるんじゃないの?料理人も人間でしょ?」
おばあちゃん「あんた目が悪そうだけど、何か関係があるんじゃないのかい?」
メニ「やっぱり何か隠してるでしょ!」
オリバー「サーシャがこうなったのもイレイザのせいでもあるんだからね、正直に言わないと僕たち許さないよ!」
イレイザは囲まれた感じになり、観念して話し出した。
イレイザ「焼き上がった肉の温度を測る温度計があってね、城の厨房にある温度計の目盛りが小さい字で書いてあって、正直見えなかったんだよ」
シェルシー「誰かに代わりに見てもらえば良かったのに」
イレイザ「私にも年長者っていうプライドがあるんだよ、その辺のヒヨッコの手助けなんか要らないんだよ」
イレイザの話を聞いてシャードはこう言う。
シャード「そういう考え方だから毎回落とされたのよ!貴女のプライドの為に城の人達が皆んなお腹壊したらどうなるのよ!それに貴女の身勝手な復讐劇の為にサーシャは記憶喪失になったのよ!街の人達も手に掛けて自分の罪がどれだけ重いか分かってるの!」
イレイザの両手はプルプル震え出した。
イレイザ「じゃあわたの長年の夢はどうなるんだい!私は城の料理人になって上を目指したかったんだよ、それをお前は台無しにしたんだよ!今に見てろ、厨房から包丁持ってきてやる!」
イレイザは医務室から早足で出て行った。
それを見てシェルシーは廊下に居た側近にイレイザを探し出し、国王が戻るまで牢屋に入れておく様に命じた。
イレイザが部屋から出て行って、しばらくの間部屋の中は静かだった。
それに一番大変な目に遭ったサーシャはまだ眠ったままだ。
窓際のベッドに横たわるサーシャの髪は、吹き込む微かな風に、少しだけ揺れていた。




