第13話 忘却の契約
メニ「サーシャダメだよやめときなってば」
シャード「そうよ、貴女が一人犠牲になる必要なんか無いのよ」
オリバー「そうだよ、大変な事になるよ」
サーシャは決心した表情で皆んなに言った。
サーシャ「皆んなありがとう、でも、これは私にしか出来ないし、こうしないと皆んなを助けられないの、分かって」
おばあちゃんは怒っている。
あの悪魔のしでかした事の為にサーシャが記憶を失うという事が腹立たしかった。
床に座っていたニスロクが立ち上がってサーシャに言った。
ニスロク「では、始めよう」
サーシャはニスロクが居る玉座の間の中央へ行った。
ニスロクに向き合う。
サーシャ「いいわ」
ニスロク「先に言っておく、記憶は直ぐに消える訳ではない、徐々に消える」
サーシャ「分かったわ」
ニスロクは両手を広げた。
するとニスロクの身体から赤黒い意識が飛び出し、サーシャを包み込んだ。
サーシャは非常に悍ましい感覚に襲われた。
声も出せない程辛い状態がしばらく続いた。
やがてその儀式は終わり、赤黒い意識はイレイザの身体に戻った。
サーシャは床に両膝をついて、両腕で支えて呼吸を荒げていた。
皆んなが名前を呼んで駆け寄って来た。
メニ「サーシャ大丈夫?」
サーシャ「大丈夫、はぁ、はぁ」
オリバー「サーシャ、僕達の事覚えてる?」
サーシャ「うん、分かるよ」
皆んなは少し安心した。
シャード「良かったわ」
おばあちゃん「今のところ大丈夫そうだね」
その時、両手をついているサーシャは苦しそうに頭を下に下げた。
サーシャ「うっ、ううっ」
シャード「どうしたの!?」
サーシャ「頭が、苦し…」
サーシャは頭を両手で抱えてしまった。
ニスロク「記憶が少しずつ消えかかっているんだ」
サーシャは右手を握り締めて自分の頭を何回も叩いている。
サーシャ「うっ、ううっ」
ニスロク「しばらくすれば落ち着く」
頭を叩くサーシャの手が止まって、呼吸も落ち着いてきた。
メニ「サーシャ?」
サーシャ「あ、大丈夫です」
メニ「サーシャ?あたしだよ、分かる?」
サーシャ「えっと、あ、メニ」
皆んなは心配になった。
おばあちゃん「忘れかけてるね」
ニスロク「まだやる事がある」
そう言ってサーシャの側へ歩み寄った。
ニスロク「お前のアーク・フラグメントで私の意識を浄化するんだ、そうすればシャードを母親から分離させる事が出来る」
サーシャ「分かったわ」
サーシャは立ち上がり皆んなから離れた場所に立った。
その側にニスロクも移動した。
サーシャ「いい?」
ニスロク「構わぬ」
サーシャは胸のネックレスを両手で握り締め、目を閉じて集中した。
サーシャ「お願いアーク・フラグメント、ニスロクを浄化して元の姿に戻してあげて」
するとアーク・フラグメントから青い光が放たれ、部屋中が青い光で満たされた。
ニスロクは白い光に包まれて、少し宙に浮いた。
身体の中心から赤黒い光が出てきた。
身体は静かに着地してゆっくりと横たわった。
宙に浮いた赤黒い光の周りに白い光が重なり発光が強くなる。
そして赤黒い光は次第に小さくなって消え、白い光だけが残った。
その光の中に小さな青い光が現れて少し大きくなった。
青い光の中にネックレスの様な物が現れ、周りの青い光が消えネックレス自体が青く発光している。
そしてサーシャのアーク・フラグメントの発していた光も次第に収まり通常の空間に戻った。
だがまだ終わっていなかった。
サーシャのアーク・フラグメントとニスロクのネックレスが同時に青く発光した。
青い光の力で部屋の窓が全て勢いよく開き、国中が青い光で染まった。
そして今度はシャードが白い光で包まれて、少しだけ身体が宙に浮かんだ。
シャードは意識を失っていた。
身体の中心から青い光が抜け出し、空中に浮かんでいる。
アーク・フラグメントとニスロクの発光が強くなり、同時にシャードから抜け出した光も輝きを増した。
すると、その光の形が変わり始め、人型の光に変わった。
次第に全ての光は和らいだ。
ゆっくりと着地した人型の光は、見た目はサーシャにそっくりだが、髪と服装だけ違うシャードになっていた。
サーシャ「シャード!」
一斉にシャードの周りに皆んな駆け寄った。
シャードは周りを見たり自分の手足を見た。
シャード「今の何だったの?あ、着てる服が違う!」
メニ「凄い!」
オリバー「サーシャそっくり!」
おばあちゃん「ほんと似てるね」
サーシャは安心した。
サーシャ「シャード、良かった」
シャードはサーシャに抱きついて言った。
シャード「ありがとうサーシャ」
サーシャ「うん、良かっ、、う」
異変を感じたシャードはサーシャの顔を見て慌てた。
シャード「サーシャどうしたの、しっかりして!」
サーシャ「う、ううっ、頭が、」
サーシャはその場にうずくまり、やがて気を失って、倒れた。
皆んなはサーシャの名前を呼んでいた。
シャードは城の側近達にサーシャと母親のシェルシー王妃とイレイザを医務室まで運ぶように命令した。




