第12話 記憶という対価
そしてニスロクは現れた。
だが、その姿を見てサーシャ達は驚いた。
一番最初に声を発したのはメニ。
メニ「あん時の、うちの前の店のおばあさん!」
シャード「貴女は、イレイザ!」
皆「イレイザ?」
サーシャ「シャード、知ってるの?」
シャード「以前、宮廷料理人の採用試験を受けに来た人よ、でも、あの時とは様子が違うわ」
おばあちゃんが前に出てイレイザに聞いた。
おばあちゃん「あんた、ニスロクだね?」
ニスロク「そうだ、ニスロクだ」
おばあちゃん「あんたかい、街中の人達をあんなにしたのは?」
力無くニスロクは言った。
ニスロク「そうだ、だが、まだまだ、足りない」
シャード「何かを集めてるの?」
ニスロクは座り込んで片手を床についてしまった。
ニスロク「人間の優しさが私のエネルギーだ、それをイレイザは私にくれていた」
おばあちゃん「じゃあ何でそのイレイザに、あんたが入り込んでるんだい?」
ニスロク「契約だ、イレイザは王族によって最後の採用試験を失格とされ復讐を誓った、それを私が叶える代わりにイレイザは私に身体を差し出した」
サーシャは座り込んでいるニスロクの前にしゃがんで聞いた。
サーシャ「貴方ならイレイザも街の人達も皆元に戻せるの?」
ニスロク「それが私の本来の力だ、欠けた存在を完全に元に戻す事、だがその為には代償が必要だ」
サーシャ「どんな代償?」
ニスロクはサーシャの瞳を睨む様に覗き込んでこう言った。
ニスロク「慈愛に溢れる人間の記憶などだ、それを差し出せば全てを完全に戻せる」
サーシャ「その人間って例えば誰なの?」
引き攣らせた顔でニスロクは言う。
ニスロク「お前だ」
サーシャは恐怖の余り一瞬ドキッとした。
おばあちゃん「サーシャの記憶なんかダメだよ!」
オリバー「そうだよ!」
メニ「ダメに決まってるだろ!」
ニスロクは一瞬怯んだが続けた。
ニスロク「もう一つ、シャードの実体を作り母親から分離させることも出来る」
サーシャ「シャードを?」
メニ「サーシャに戻せばいいでしょ!」
オリバー「そうだよ!」
ニスロクは俯いて静かに言った。
ニスロク「それでもいいが、片方の意識が現れている時、もう片方は眠っている事になるがそれでいいのか?それにイレイザと街の人間は救えないぞ」
サーシャは少し考え、皆んなを見回した後、ニスロクに答えた。
サーシャ「いいわ、私の記憶を差し出すわ」
シャード「ダメ!」
メニ「サーシャやめときなよ!」
オリバー「ダメだよ!」
ニスロクの事を睨みながらおばあちゃんも言った。
おばあちゃん「これが救いだっていうのかい!」




