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62:魔法少女サーシャ

 一瞬誰しもが耳を疑った。エラーではない。変身の音が鳴ったのだ。

 鮫肌丸の足下に砂が集まり肥大化。それは口を開いた巨大な鯨だ。オキアミを一口で丸呑みするように鮫肌丸をパクり。彼の身体が砂中に消える。


『魔法少女サーシャ! オーダープリーズ!』


 砂山が崩れ砂埃が舞う。崩れた鯨の頭、その中から少女が姿を表した。

 長い三つ編み。ベージュを基調としたクラシカルなメイド服。スカートからは長い尾びれが伸び、手には同じく尾びれを模したモップが握られている。


「まじか……」


 善継は思わず見入ってしまった。自分だけではない、その嬉しさと驚きに言葉が出ない。それはこの場にいた全員だ。


「…………ん?」


 鮫肌丸も自分の異変に気づく。身体に違和感がある。視点も先程までとは違う。顔を下に向ければ自分には存在しない二つの膨らみもあった。


「まさか……っ!」


 声色も違う。そんな驚愕し混乱する鮫肌丸の前に善継が駆け寄る。


「鮫肌丸、これを見ろ」


 善継はワイヤーを編み鏡を作り見せる。鮫肌丸もそこに映った自分の姿を見て目が点になった。


「おいおいおいおい。これ、沙羅じゃないか?」


 自分の顔を撫でながら鏡を凝視。己の変貌に唖然としている。


「妹さんの姿か?」


「ああ。たぶん……高校生くらいだな」


 確かに彼の言う通り、歳は由紀と同年代に見える。


「隊長が女の子に……」


「スパイダー以外にもいたんだ。すっご」


 女性陣も驚愕しながらスマホを向けて写真を撮る。まじまじと興味深そうに、前後左右しっかりと激写していく。

 そんな中、写真を撮られている事より自分の変化に夢中な鮫肌丸は全身をまさぐる。


「うーむ。肌の感触も別物だな。うわっ、マジで無くなってるじゃねぇか」


 右手が股間に伸び、ショックを受けたように震えていた。

 男なら当然の反応だ。今までの人生を共にした()()()がいない。男にとってこれ程ショッキングな事件は無い。

 そんな身体を弄る鮫肌丸を善継は諌める。


「その辺にしとけ。あんま身体触ると後から罪悪感がヤバいぞ」


「あー……マジ?」


「ああ。精霊癒着で一週間戻れなかった事があんだけどな。風呂入って自分の身体を洗うと……なんか罪悪感でいっぱいになる」


「お、おう……」


 どうやら善継の意図を察したのだろう。若干引いている。

 そんな彼らにイナズマも興味津々だ。


「へぇ。私らにはわかんないけど、そんなに違和感あるの? タマなくなるのって」


「「違和感ヤバい!」」


 二人の声が重なり大きな叫び声となる。それ程重要かつ繊細な事だと雰囲気だけで感じられる。ヒーローである彼女が気圧されるような覇気だ。

 更にバルドも寄ってくる。


「ほうほう。まじで性別変わってんのか。って事は……」


 彼の手はおもむろに鮫肌丸の胸部へと伸びる。何をしようとしているか考えるまでもない。

 手が触れるよりも早く鮫肌丸は手にしたモップで遮る。


「バ~ル~ド~」


「別にいいじゃね……うお?」


 バルドの身体が上下反転、ワイヤーが足に巻き付き宙吊りになる。見てくれが魔法少女姿のせいか、下半身が地獄絵図になり視線があがらない。

 寧ろその光景を爆笑しながらイッセンが再び写真を撮り出す始末だ。


「お、おいスパイダー! 何すんだよ」


「何じゃねぇだろセクハラヤロー」


「そうだそうだ。俺の妹だぞ。なーに勝手に触ろうとしてんだ」


 二人の言い分は最もだ。こんなセクハラを許す訳にはいかない。

 しかしバルドも食い下がる。


「別にいーだろ。中身は鮫肌丸なんだろ?」


「この野郎……。おいイッセン。こいつの写真SNSに上げろ」


「おっけー」


「うわー! 待った! すまん、わかった、俺が百パー悪い、もうしない! 許してくれ!」


 流石に今の痴態を晒すのは困る。慌てながら謝罪する姿が滑稽を超えて痛々しい。


「ったく。真理! 鮫肌丸に異常はないか?」


『問題無い……っと、三号に変わるよ』


 マイクが動く雑音が入る。

 ちょうどよかった。三号の見解も聞きたかったところだ。善継だけではない、もう一人の変身者が見つかったのだ。バイオメダルの開発に関わった精霊大使三号の意見も重要だろう。


『ヤア。鮫肌丸、気分はどうダイ?』


「変な感覚だ。精霊……だったっけか? 俺で二人目なんだろ? どうなんだ」


『フム。君の出現で、クロスギアが使えるのはスパイダー固有のものではないのが証明されタ。そこでボクの推測なんダガ……』


 軽い咳払いが響く。


『おそらく君達は姉妹と遺伝子情報が近いのだロウ』


「俺達が?」


『絵の具で例えれば解り易いイ。父を青、母を赤とすれば子は紫にナル。だが僅かに差異は出てシマウ。青紫か、赤紫か……同じ両親から産まれた子でもDNAは同じじゃナイ』


 言っている意味は解る。真理達黒井姉妹が良い例だ。姉妹なのに身長体格が全く違う。

 そう考えると三号の言い分も納得だ。


『まあボクの推測でしかないけどネ。きっと君達は姉妹と似ていたんだロウ』


 あくまで仮説。しかし納得できる説得力がある。

 善継達は顔を見合わし肩を竦める。どうなんだろうな。そうぼやくように。

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