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11:保護と支配

 全員が息を飲んだ。勇者から生まれた化け物が今もこの地球上に潜伏している。考えるだけで冷や汗が止まらない。


「で、でも勇者の力が遺伝したって訳じゃいですよね。ただの魔物の可能性もありますし」


「柳原さんの言う通りです。今はそちらに調査はお任せします。よろしいですね、鮫肌丸さん」


『勿論です。おそらく我々の管轄内に潜伏しているでしょうから、あぶり出してやりますよ』


 自信満々な声が頼もしい。人数も多いチームに頼むのが正解だし、遠方であり現状力になれない善継はむず痒かった。


「しっかし魔人の連中も何考えてるんだか。俺達人間の想像の外に生きているな」


「あたしらとは根本的に違う生き物なんだから」


「そうだな。しっかし……」


 考え込むように視線を伏せる。声も小さくなり眉間にシワを寄せた。


「どうした善……みうみう?」


「いや、保護した女性の事だ。状況的に魔王が契約し主人になっていたんだろう。だがユッキーが討伐した今は自由なんだよな?」


「そりゃそうだろ」


「なら契約を防ぐ手段を考えないと。勇者が何かやらかすぞ」


 一瞬何を言っているのか理解出来なかった。しかし少し考えるだけで言葉の意味を理解する。

 グラビアアイドル、奴隷、勇者。それぞれが線で結ばれればどうなるのか想像するのは容易い。


「尾崎さんを奴隷にするってか? うん、あり得る。こーんなボンキュッボーンであたしと真逆の女だからな。勇者が殺到するのが目に浮かぶよ」


「あー。それは無いかな」


 由紀に視線が集まる。


「えっと、実は尾崎さんは…………今、私の奴隷になってるの」


 想定外だ。善継も開いた口が塞がらない。しかし玄徳だけは厳しい視線のまま腕を組む。


「どういう事かな。一応勇者とはいえ尾崎さんは被害者だ。何故由紀が契約したんだい?」


『そこは俺が説明しましょう』


 そこに鮫肌丸が割り込む。意外だと誰もが驚いた。


『実は俺が彼女に契約するよう進言したんだ。勿論尾崎はるなも同意している』


「鮫肌丸が?」


『ああ。みうみうの言う通り、彼女が地球に帰還したと報告すれば勇者どもが彼女と契約しようとすると俺も読んでいた。奴隷の首輪が着いているのと変わらないからな。だから先手を取ってユッキーが契約すれば、他の勇者は契約できない。彼女を奴隷にしたがる馬鹿どもから守れるって訳さ』


「私なら同性だから、尾崎さんもお願いしたいって。同じように保護って建前で奴隷にしようとする勇者は絶対にいるし。グラビアアイドルを奴隷にするなんて……その、男の人からすれば夢みたいなものじゃないかなって」


 善継と玄徳に申し訳なさそうな視線を向ける。


「なるほどね。確かに彼女の帰還は芸能事務所にも伝えなければなりませんし、著名人である尾崎さんを秘匿するのは困難だ。それに同意の上なら問題は無いでしょう」


 玄徳も納得したようだ。だが由紀の表情は決して明るいものではなかった。どこか影があり、嫌悪感を感じられる。流石に善継も心配になる。


「どうした? 契約に何か問題でもあったか?」


「問題は無い……んだけど。ちょっとね」


 ため息をつき視線を落とす。


「私、奴隷って気持ち悪いって思ってた。勇者達が連れてるの見て、人形遊びみたいだなって」


「実際そんなもんだ。都合の良い言葉しか言わず、いくらでも身体を許してくれる美人。実態は勇者の餌だからな。俺は欲しいと思わないけど」


『ああ、俺もだ。男はこんなのが欲しいって思われるなんて心外だって』


 二人があからさまな嫌悪を示し玄徳も同意するように頷く。


「そう、気持ち悪いってのが一番だった。でも今は解らないのが大きいの」


「解らない?」


 小さく頷く。


「私達勇者は圧倒的な暴力を持っている。人の命なんか簡単に消し飛ばせるような力が。でも奴隷は違う。暴力じゃない、勇者の力じゃない。もっと命を軽くしているって」


 声だけではない、腕も震え始め止めようと抑えている。


「たった一言、死ねって言うだけであの人は何の躊躇いもなく自殺する。物みたいに、ゲームのデータを消すように」


「由紀……」


 真理が肩を抱き手を握る。

 彼女の気持ちは善継も察していた。ほんのちょっとの行動で簡単に命を奪える、捨てさせられる。地球の奴隷とは違う、命も行動も全て支配する文字通りの魔法。これを好んで使う神経が理解出来ない。

 だからこそ見えたものもある。やはり由紀はこちら側なのだと。世間に揶揄される勇者とは違う。少し家族想いが過剰なだけの少女なのだ。

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