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10:報告会

 二葉製薬会議室。パソコンを横に置いた玄徳を中心に、彼の周りに四人の少女が席に着いていた。善継と真理、そして由紀と学校帰りの明美だ。由紀は精霊癒着により戻れなくなった善継が気になるのか、チラチラと横目で見ている。

 パソコンの画面にはオンライン会議のソフトが起動し、日焼けした肌に金髪に染めた髪の男性、鮫肌丸が映っていた。


『スパイダーは不在か。怪我したと聞いているが……』


「はい。一週間ほど安静にと」


 画面越しに一礼する善継こと魔法少女みうみう。彼……いや、彼女の姿に鮫肌丸は一瞬目を丸くする。


『君がみうみうか。はじめまして、ワールドファンキーの鮫肌丸だ』


「は、はじめまして」


 勿論初対面ではない。だが正体は秘匿されているから挨拶をしなければならなかった。


「さて、鮫肌丸さん。詳しいお話を聞かせてください」


『ええ。ですがその前に一つ』


 軽く咳払いをし姿勢を正す。


『今回、魔王城攻略の協力を感謝します。魔法少女ユッキー。君がいなかったら我々は多大な犠牲を出していただろう。そして誤解していた。君はそこらの勇者とは違う』


 整えるように深呼吸をし頭を下げた。その姿に由紀は思わず気圧されてしまう。


『君を悪く思っていた事を謝罪する。立派なヒーローだよ』


「…………いえ。勇者がそう思われるのは仕方ない事です。お力になれて、私も嬉しいです」


 微笑みながら頷く。善継も彼の変わり様に少しだけ驚いた。

 鮫肌丸も勇者の被害者遺族。少なからず勇者に恨みを持っていた。そんな彼の評価を変えた。由紀のヒーローとしての活動が影響しているのは明らかだ。


『んじゃあ仕事の話に戻ろう。まず魔王の討伐、及び魔王城の確保は成功。現在はうちで残党狩りを行いつつ、学者連中が城を調べている』


「魔人の文化調査ねぇ。言葉は通じるからって交流が出来るって訳じゃないのに。一部の○リ○レ連中みたいにならないと良いんだけど」


 真理がため息をつくのは尤もだ。動物愛護団体程過激ではないが、魔物を保護しろ、駆除するなと反ヒーロー団体はいる。更に最近は魔人が増え、連中が人語を解するせいか人権保護を訴える者が少しずつ現れ始めた。


「阿保の相手をするな。俺達の仕事は人々を守る事なんだから。どうせあいつらは、自分が被害に会わなきゃ理解出来ないんだから」


『ははっ、みうみうも解ってんじゃないか。あいつらは安全な場所で文句を言って、いざ危なくなったら助けろと叫ぶ。自己中が二本足で歩いてるような連中さ』


「あー…………。学校にもそういう人いたなぁ。動物虐殺だとかネットでも騒いでますよね」


 明美も納得しているように頷く。

 この問題は昔から変わらない。安全な場所から綺麗事を並べ、被害を見て見ぬふりをする。ある意味ヒーローの最悪の敵だ。


「まぁ、そういった輩は法務部が対応します。それよりも保護した奴隷勇者です。由紀、詳しい報告を」


「うん……あ、はい」


 立ち上がりタブレットを取り出す。正面のプロジェクターが光を放ち一人の女性を映し出す。若くスタイルの良い美人だ。鮫肌丸もほう、と声を溢す。


「尾崎はるなさん、二十歳。グラビアアイドルとして活動しながら、ネッチューブでコスプレをしてゲーム実況をしています」


 続けて彼女が布面積の少ない巫女服を着、ゲームをしている姿に変わる。どこに視線を向ければ良いのか困惑するような格好だ。


「お話を聞いたところ、勇者召喚後は貴族の……奴隷にされていたのですが、魔物の襲撃に会い魔王が主人に。その後は」


 言いにくそうに口籠る。憤りだ。彼女の全身から滲み出る怒りを感じる。


「……勇者の力の、遺伝実験に利用されたようです」


「はい? たしか勇者の力って一代限りのものですよね」


 明美の言う通りだ。勇者の力は遺伝しない、それが地球の常識である。


「ああ。俺達のように勇者候補は遺伝するが、勇者の力は当人のみの力。実験として何人も勇者の子供が生まれたし、勇者の死体から臓器移植なんかやってたな」


『ああ。ただ、今でも諦められずに粛清された勇者の死体を買って実験している連中はいるがな』


 年長者二人が同時にため息をつく。醜く非人道的な実験の数々。その遺児。想像するだけで胸糞が悪くなる。

 しかし真理だけは何か考えるように顔をしかめる。


「……なるほど」


「真理、何か気になる事でも?」


「うん。確かに人間での遺伝実験は失敗してる。けど、魔人だとどうだ? あたしら地球では出来ない実験だ。可能性はゼロじゃない」


『なるほどっと。すまない、緊急連絡だ』


 鳴り出すスマホに出て数秒後、鮫肌丸が重々しく口を開いた。


『少し嫌なニュースだ。この件に関わる事で一件報告がある』


「お願いします」


 玄徳に促され、頭を掻きながらため息をつく。


『もう一人奴隷勇者が発見された。死体でな』


「死体? 状態は?」


『腹の中から何かが飛び出し穴が開いていたらしい。んで、死後三、四日程だと』


「腹の中……おい鮫肌丸、まさか」


 善継の額に冷や汗が伝う。嫌な予感に息を飲んだ。


『お察しの通り。何かが腹を突き破って生まれたんだ。しかも()()()()



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