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7:営業の仕事

 ページをめくる手が止まる。無邪気に笑う善継、その隣に立つ少女。なるほどと内心頷く。


(由紀と同等かな? こりゃ勇者がナンパする訳だ)


 可愛いくてスタイルも良い、絵に描いたような美少女にため息が出る。ちびな自分とは大違いだ。

 きっと仲の良い姉弟だったのだろう、写真を見るだけで解る。だが流石に近くはないかと少し邪推してしまう。自分だって兄にこんな風に引っ付いたのは小学生までだ。もしかしたら真理と同じタイプなのかもしれない。

 苦笑いをしていると背後から人の気配が忍び寄る。


「何見てんだコラ」


「うひゃ!?」


 不意打ちのような耳元の声に驚き、思わずアルバムを落としそうになる。


「な、なんだよ急に」


「急にって、ここ俺の部屋だぞ。そもそも真理が勝手に本棚漁ってんのが悪いだろ」


「うっ……」


 そう言われると反論出来ない。善継の言う通り、勝手に部屋の中を物色していたのは事実だ。

 申し訳なさそうに苦笑いをするも、善継は追及る事もなく顔を離す。そこでやっと彼の姿が見えた。


「スカートじゃないのか。ちょっと残念だな」


「一着だけこれがあったからな。ただ明日からは……スカートしか残ってないんだよなぁ」


 青いデニムのオーバーオールに可愛らしいピンクのシャツ。少々ボーイッシュだが充分少女らしい服装だ。これはこれで可愛らしい。正直スカート姿で恥ずかしがる姿を見てみたい気もする。

 それは明日にお預けだ。今はやるべき事がある。


「そっちの方が似合いそうだけど、いきなりはキツいか」


「……取りあえず仕事の話ししよう。社長からは真理に聞けってメールがあってな。今後の段取りを教えてくれ」


「あいよ。じゃあまず報告が一件だ」


 スケジュール帳を取り出しページをめくる。真理の目つきが真剣になり仕事モードに切り替わった。


「ワールドファンキーから連絡があった。今日魔王城の攻略を開始するって」


「随分と時間がかかったな。妹さんを向かわせてから何日だ?」


「そう言うな。あっちは海のど真ん中にある孤島だぞ。しかも島の周りに水生の大型魔物がうようよいたらしい。接近しても海上で船をぶっ壊されればどうしようもないし」


「水中戦型のヒーローは一番少ないからな。戦場が限定されるせいか、人気も低いんだよなぁ」


 苦笑しながらベッドに座る。


「でも海路の確保は優先すべきだな。俺も水中じゃ手も足も出ない」


「それを力技で可能にするのが勇者だ。由紀のやつ海面を凍らせて足場を作り、海ごと魔物をぶち抜いたみたい」


「…………相変わらずデタラメだな」


 勇者の規格外っぷりに言葉を失う。作戦を建て人員を揃え対策を考える、それがヒーローだ。この地道な努力を力技でひっくり返すのが勇者。力だけなら本当に世界を救える存在だろう。


「作戦は、ヒーロー達が周囲を封鎖し魔物を各個撃破。由紀は単身突撃し魔王の討伐。んで学者達の依頼で城は資料になるから保持しろって」


「彼女の負担が大きくないか?」


「あたしもそう思う」


「まあ、予め連携の取れる俺らならともかく、鮫肌丸達は即席チームだ。巻き込まれず確実に殲滅するとなると、こうなるか」


 仕方ないとはいえ、使い潰されているようで気分は良くない。頭では正しいと理解しても胸にモヤモヤした気持ちが残る。

 今は被害もなく魔王討伐が終わるのを祈るしかない。この件に二人が介入する余地は無いのだ。


「妹さんの状況はわかった。無事に魔王を倒したって報告を待とう。で、俺は何をするんだ?」


「これだよ」


 真理は本棚にあった雑誌を引っ張り出す。そう、ヒーローの雑誌だ。


「日本最大手のヒーロー専門雑誌、【ザ・ヒーロー】。ここの取材アンド撮影だ」


「まじか! すごいじゃないか。俺、一度も声かけられた事無いんだぞ」


「まっ、メタルスパイダーはかなり悪人面だからな。あたしも読んだ事あるけど、功績があって顔出ししてるヒーローやビジュアルに金かけてる人気ヒーローが多い」


 有名雑誌のオファーに年甲斐もなく興奮してしまう。取材を受けているのが魔法少女の方なのは少し残念だが、ヒーローとして嬉しい仕事だ。


「いやー、ほんの一二ページでも載れるとなると嬉しいもんだな」


 喜ぶ善継と違い真理はため息をつく。少し困っているような顔色だ。


「何言ってんだ善継。そんな小さな仕事な訳ないだろ」


「?」


「あんたは表紙だぞ」


「………………はぁ?」



11月10日よりコミックポルカ様から連載します。

ぜひ読んでください。

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