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3:謝罪

 今後の事に一旦の区切りがついた所で明美が話しを切り出す。


「そういえば最後のミサイル。私には急に現れたように見えたのですが」


「ふむ。おそらく先に発射したミサイルの群。そこから一発撃ち漏らしたように見えたのですが、それのようですね。ただ問題は、撃ち漏らしたミサイルがどこにいたのかですな。いきなり消失し、再び現れる。少々不可解です」


 青山の言う通り、発射されたミサイルが不発のままさ迷っていたように見える。いきなり現れ怪物に直撃、そんな都合の良い事があるのだろうか。

 いや、ある。善継達は知っている。一人だけ心当たりがあった。


「なあ善継。あたし、ちょっと心当たりがあるんだけど」


「奇遇だな、俺もだ」


 二人に同意するように頷く玄徳。意味も解らない明美と青山。

 三人の視線を察知したように空間が歪む。警戒する青山を制止し、社長室の中に光の輪が拡がる。この光に見覚えがあった。


「……で、いつからいたんだ、片倉君」


 光をくぐって来たのは由紀と同じ学校の制服を着た少年だ。銀縁眼鏡と眉間にしわを寄せた堅ぶつな雰囲気が全身から滲み出ている。


「勝手に入って来たのは、今回は不問にしよう。君が由紀の言っていた生徒会長、勇者の片倉雄二君だね?」


 勇者と言われ明美達は当然警戒する。だが彼の事を予め聞いていた玄徳は威圧するような気配を崩さない。彼の人柄を知っていたからだ。


「はい。黒井さんから聞いていたようですね。それと、黒井さんのお姉さんと……八ツ木さんですね」


「俺がわかるのか」


「はい。全部見ていましたから」


 やっぱりと言いたげなため息。三人の予想は当たっていた事を確信する。


「つまり君は、俺があのデカブツの相手にヒーヒー言ってたのを眺めていたと」


「ええ。申し訳ありませんが、僕に攻撃力はありません。それに争い事は素人ですので、下手に手を出せば足手まといになると判断しました」


「って事は私達が合流してからも?」


「勿論です。連携の邪魔になりますから」


 少々鼻につく言い方だが筋は通っている。全ての勇者が戦闘力を持っている訳ではない。彼もその勇者だ。それに下手に介入され引っ掻き回されても困る。少し考えれば彼の判断は正しいのが解る。

 片倉も自嘲するように笑い頭を掻く。


「ただ……僕も自分なりに皆さんの力になろうと思い、ミサイルの対処に微力ながら協力させていただきました。守りに関しては自信がありますので」


「たしかに。まさか撃ち漏らしてたなんてな。あたしらのフォローしてくれて感謝してるよ」


「ですが……」


 眼鏡の奥、鋭い瞳が曇る。


「ミサイルの威力を見誤り、お二人を巻き込んでしまいました。ごめんなさい」


 頭を下げ謝罪する。たしかに今回の件に無関係とは言い難い。だが彼のおかげで被害を抑えられたのは事実だ。本来高校生の彼が威力を見誤るのも当然だろう。

 だからこそ非難するのはお門違いだ。


「顔を上げてくれ。俺達は君を責める気は無い。むしろ協力してくれたのを感謝している」


「そうそう。勇者の中には目立ちたくないとか言いながら派手に暴れる連中がいるけど、影ながら街を守ろうとしたのはカッコいいぞ」


 一瞬キョトンとするも、安堵するように頬を緩ます。

 直接争う力が無くとも人々を守る為に尽力を尽くす。勇者達が彼のようなら、そう願うも現実は甘くない。


「カッコいい勇者か」


 ふと善継は窓ガラスに目を向ける。映るのは少女となった自分、幼い頃の姉の顔をした己だ。

 瞬きをした瞬間、ほんの一瞬だが映る顔が変化する。最期に見た姉、血にまみれた自分の手の中で命の灯火が消えていく瞬間。

 忘れたくもない、忘れられない。大切な家族を失った日の事を。

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