45:総力戦
マズイ、撃ち漏らした。青山の脳は焦りに埋め尽くされる。しかも気づいているのは自分だけ。最悪な事にこの中で一番力不足なのは自分だ。
「撃ち漏らし……!」
急げと身体にむち打ち手を向ける。一発でも漏らせば甚大な被害が出るだろう。
だが……
「は?」
消えた。街へと落ちていく途中で消えたのだ。当然爆発の一つも起きてはいない。もしかして不発弾だったのか、それとも見間違いなのか。困惑に脳が上手く動かない。
そんな青山の頭を明美の声が殴る。
「青山! どうしたの?」
「っ。いえ、問題ありません」
きっと見間違いだ。もしくは他のミサイルの爆発に誘爆して消えているのかもしれない。
それよりもファランクスだ。こんな大暴れを繰り返されてはたまったもんじゃない。大顎を打ち鳴らしながら威嚇しこちらを睨む。
「そうとう苛立っているようですな」
「そうか? 俺にはこっちを嘲笑っているように見えるぞ」
善継の頬を冷や汗が伝う。
近代兵器のオンパレード、ワンマンアーミー。称賛するならこんなとこだろう。しかしこいつは敵だ。街中で暴れさせて良いものではない。
「や……みうみうさん、どうしますか? 現状アームドギアのあるお二人が攻撃に出るのが得策かと。私達が囮になります」
明美の進言も尤もだ。現状の最大火力は善継と真理の二人。明美と青山を囮にし、隙をついて一撃を喰らわせるのが最適かもしれない。
「いや、こいつはアデイクショナーの一種だ。そう馬鹿じゃない。寧ろ意識を分散させる方が有効だろう」
「となれば、いつもの算段ですな。対大型魔物の対処法は決まっています。ですね、スパイダー?」
頷き空を見上げれば真理と視線が合う。そしてニヤリと青山に笑みを向けた。
「死角になる足から攻めて転倒させる」
「そして落ちた頭に一撃。でございます」
「よし。策だなんて言えるか怪しいが……」
そうしている合間にもファランクスは体内から新たに銃を生やす。またしてもショットガンだ。
どういった手品なのだろうか、ガシャンと自動でグリップが稼働し狙いをこちらに銃口を向ける。引き金が引かれようとした瞬間、銃身から煙が上り僅かに曲がる。
「させないっての」
真理の右腕の蛙がゲップをする。口から垂れる強酸が地面に落ちるとアスファルトを溶かす。
「マリリン! 背中の武装を集中攻撃! 再生も無限じゃない。攻撃をさせるな」
「あいよ!」
「アーミン、ダンディは左脚を。二……いや、一本でも脚を潰してくれ」
二人が一瞬たじろぐ。それもそうだろう、明美はアームドギアが調整中な上青山はこのメンバーで一番パワー不足だ。だがそれを言い訳に何もしない選択は無い。こんな所であきらめてはヒーローの名が泣く。
踏み潰そうと振り下ろされた脚を飛び退き回避。割れたアスファルトの破片が散らばる。
「タイミングはお嬢様に合わせます。私では少々力不足ですが、関節を同時に狙えば通用しましょう」
「わかった。二人でやろう」
ちらりと善継の方に視線を向ける。ファランクスの脚を避けながらギアを開けていた。中のメダルを取り出すと背中の蜂が離れ黒い塵となって消える。
何をしているのか理解出来なかった。この状況で加減をする余裕なんて無いはず。だがそれは杞憂だった。彼の手には新しいメダルが握られていたのだ。
百足のメダルが。
「俺は右脚だ。飛ぶより走った方が慣れているし、テスト結果も重畳。デビュー戦、頼むぞ! お前を俺に渡した事、あのクソ精霊に後悔させてやるよ!」
『セット!』
メダルを装填、レバーを回しカプセルが赤い魔法陣から飛び出す。カプセルが開くと中から巨大な百足が這い出えた。
半透明の黒いガラス状の百足。それも尾の先も頭となった双頭の百足だ。善継の周りを纏わりつくように走りガラスを引っ掻くような音を鳴らしながら威嚇している。
『warning warning I am not responsible for this』
「オーバートランス!」
『デコレーションアップ!』
ギアを叩き叫ぶと、声に応えるように百足が駆け寄り頭にかじりつく。
刃と見間違う鋭い甲殻に包まれ、一本一本が小さなナイフのような脚が全身をくすぐる。文字通り刃物の塊が頭から首へ巻き付き、マフラーとなり善継の周りを漂う。
額から伸びた長い触角を振り払い目を開ける。
『魔法少女みうみう! オブシディアンリッパー!』
『You may get hurt if you touch the debris.』
マフラーが右腕に添い第三の腕のように連動する。拳を握りゆっくりと引きながら構えた。
「第二ラウンドだ。四対一でも、卑怯だなんて言うなよ」




