Code6
アイズリ―歴三三六年、七月十一日。
時刻は午後一時。
某ホテルであるお披露目パーティー会場にいた
「まずは、サラ・ユーベルト様、ゼイン・ラードベル様から皆様へお言葉をいただきたいと思います」7
コツコツ、とサラが歩くハイヒールの音だけが響く。瞳と同じ新緑のドレスがふわり、と揺れる。
「皆様にはこれから、サプライズを届けたいと思います」
手を上げるとスクリーンが降りてきて、映像が流れ始める。
『リーダー。なかなかやるな。<キサラギ>を手の中で転がせるなんて』
<あの両親、最初から鬱陶しかった。人工知能が日本を支配する日が来たら、あんな正義の味方はいらないからな。ユーベルト様もそう思うだろう?>
<あなたも、なかなか人が悪い。それに、娘を差し出したって?>
『あの子も私の駒でしかない。お前だった両親を自殺
に追い詰めたじゃないか』
<俺たちは会社と世間では善人なのに>
『私は日本の未来を思っているだからこそだ』
<仮の話です。 二人が手を組んだらどうするおつもりなのでしょうか?>
『必要になれば消す。それが、私のポリシーだ』
周囲の空気が揺らぎましたね、とサラは感じていた。一強だったレインの立場が、追い詰められているのだ。
他の誰でもない。
娘の手によって。
サラから視線が逸れて、レインへと突き刺さる。連行されるのを、ちらりと見てから前を向いた。
まだだ。
まだ、余興が終わったわけではない。
続きがある。
カイルの両親を殺したのではないかという、噂の誤解を解かなければいけない。サラが手を上げると、再び映像が流れる。
『ロット君、どうして!』
<俺はね。最初からあんたたちが気に入らなかった。あんたたちが台頭し始めて、俺たちの居場所を奪った! あんたたちのせいだ!>
『私たちはそんなつもりじゃないわ! カイルだってあなたに懐いていている! 私たちはあなたと衝突したいわけじゃない! 考え直して!』
<ロット君!>
<その優しさと正義ぶっているところが大嫌いだ! 死ね!>
どさり、と倒れる音がした。
映像が途切れる。
サラとカイルは視線を合わせると頷いた。
「僕――いえ、私はゼイン・ラードエンではありません。コールエン家現当主のカイル・コールエンです。まずは、晴れの日のこのような騒ぎを起こして。大変も申し訳ありません。ロット・ウィーズリーもユーズベルト公爵も間もなく逮捕されるでしょう。私は従兄弟とはいえ、両親を殺した彼を一人の人間として許せませんでした。私たちは未熟です。ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。最後に報道関係者の肩方にお願いがあります。過度な報道は控えていただきますようご協力ください」
州からあの暗殺家業の!? <キサラギ>か! と業額の声が上がったのをサラはきいた。一世一代の大芝居でもあった。
――私が欲しいと思ったら手に入れただけのこと。
――誰にも文句は言わせませんわ。
――それが、いけないのでしょうか?
サラは持っていた扇子を折りたたむ。
「確かに、現コールエン当主は人を殺し続けてきた。でも、彼は真実を知るために、殺しを続けるしかなかった。悪いのはレイズ・コールエンとユーベルト公――いや、元公爵なのでは?」
「そうよ。この子たちが悪いとは限らないわ」
「子供じゃないか。寛大な判断はできないのか?」
サラは細く微笑んだ。
勝者の笑みでもある。
当然、集まった大人たちからは、援護の声が上がるだろう。しかも、集まっているのは、それなりの家系ばかりだ。何かと動いてくれるはずである。それが、サラとカイルの策略でもあった。
――チェックメイトですわ。
――お父様。
――もう少し、遊べると思っていましたわ。
――私はお父様がカイルを陥れる計画をしていた事実を許しません。
――邪魔者にはここで退場をしてもらいます。
――ゲームは私たちの勝ちですわ。
――さようなら、お父様。
――楽しませてくれてありがとうございました。
サラは息を吐き出した。




