表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/34

第七話

第七話



修一たちが、ユズと戯れている頃。


「リッツェル、どうして俺を連れて行った」


ダンジョンから出て、町へと歩いている途中だった。

ローガンが真っ直ぐリッツェルを見つめる。


「言ったでしょう? 貴方よりもあのダンジョンの事を知っている者はいない。それに、強さだけでも、未だ貴方に勝る者はいない。そうでしょう? 元Sランク冒険者、銀郎のローガン殿」

「やめろよ‥‥その二つ名、恥ずかしいんだよ」


少し照れたように、後頭部を掻くローガン。


「あそこは―――俺が最も憎む場所であり、仲間が眠る場所でもある」

「そうでしょうね。貴方は、あのダンジョンで仲間をほぼ全員失った」

「ああ‥‥郷愁って言うのかね。あんなにも憎かった場所なのに、久しぶりに行ってみたら懐かしささえ感じた。だが、冒険者としてはもう無理だ。とっくの昔に引退してるしな」

「膝、ですか」

「そうだ」


ローガンが、懐かしむように自分の左太ももに手を当てる。


「冒険者時代に貯めた金がある。それで、あの場所に宿屋を作りたい」

「ほう‥‥宿屋ですか」

「俺はあのダンジョンで何度も死にかけた。その度に、あのセーフエリアで命拾いをした。しかも、今はあの銭湯がある。そこに宿屋もあれば、きっともっと多くの冒険者が命を拾える」

「無謀にも深層に挑み、帰ってこなかった若者も多いですからね。良いでしょう! その案、乗りましょう! 金銭面は、私が全面的に持ちましょう! その代わり、食材や備品などの仕入れはうちの商会を通してください。宿屋の下に酒場も作れば、あのドワーフたちが毎晩飲みに来るでしょう!」

「さ、酒場もか? 俺、料理は無理だぞ?」

「そこは私にお任せを。ちょっとした伝手がありますので」

「金の匂いに敏感なお前としては、そこまでするのは珍しいと言うか‥‥怪しいな」

「もちろん、先行投資ですよ! さあ、そうと決まれば、早く町に行きますよ!」


走り始めたリッツェルを、ローガンは慌てて追いかけた。





セーフエリアに、薪を割る音が響く。うちのボイラーの燃料は、薪だ。今までは、祖父さんの頃からの付き合いで、山で林業をしている知り合いから買っていた。だが、これからどうしたもんかと思っていたら、ガルドが採りに行くと言ってくれた。ここの上の階層に、森になっている場所があるらしく、丸太を担いで帰って来たときはびっくりした。

それを見たドゥガンが、半分貰えるなら薪に良さそうな大きさに切ってくれると言うので、ガルドの了承を得て快諾。今日も銭湯を開けた後、ガルドは木を伐りに行っている。


「結構キツイな‥‥」


ドゥガンが切ってくれたサイズは少し大きく、ボイラー用に斧で割っていく。


「斧は良い」

「下手くそ」

「腰が入ってない」

「うるせぇ!」


等と、散々な言われようだが、しょうがないだろう! 本格的な薪割なんて、数十年ぶりなんだよ!

うるさい外野が去ると、ガルドが新たな丸太を担いで帰って来た。


「おう、おかえり!」

「ただいま」

「シュウイチ! お久しぶりですね!」

「リッツェル! 戻って来るの、早かったな!」

「森で会った」


ガルドが森で木を伐っている時に出くわし、そのまま一緒に戻って来たらしい。


「よう、シュウイチ」

「ローガンもまた護衛か?」

「半分はな」


よく見ると、今日は人数が多い。

リッツェルとローガン、それに冒険者らしき人達が三人と、ローガンと同じくらい背が高い―――獣人か⁉ 真っ赤な髪のポニーテルに、犬のような耳と尻尾! 年はローガンと同じく五十代くらいの女性。ムキムキまでは行かないが、俺よりは確実に筋肉があるように見える。ってか、腹割れてんだけど!


「あんたが噂のシュウイチかい?」

「あ、ああ、はじめまし‥‥ぐふっ!」


挨拶をしようとしたら、バシバシと背中を叩かれた。


「堅っ苦しい挨拶なんざいらないよ! あたいは、シア! ローガンと同じで、元冒険者さ!」

「も、元?」


ガルドが慌てて、俺をシアから引き離してくれた。助かった‥‥背骨が折れるかと思った。


「シア、シュウイチは冒険者でもないただの人間だ。お前が叩いたら背骨が砕ける」

「あはは、悪い悪い!」

「シアはこう見えて、料理が得意でね。宿屋の一階で酒場をやってもらおうと思ってるんだ」


そういや、ゲームや漫画なんかだとそう言ったイメージがあるな。


「そんで、俺が宿屋ってわけだ。これからよろしくな、シュウイチ」

「ああ、よろしく!」


再び、騒がしい日々が戻って来た。いや、ドゥガン三兄弟だけでも、十分騒がしいのだが‥‥。

ローガンとシアの、宿屋兼酒場の建設は、ドゥガンたちが請け負う事になった。木造二階建て。部屋数は少ないが、普通の冒険者用宿屋よりはかなり広く、豪華なんだとか。


「ダンジョンの中層まで来れる奴は、中堅かそれ以上の冒険者だからな」


曰く、冒険者にもランクがあり、強さも異なる。そして、上の方に行けば行くほど、そこらの商人よりも稼いでいるらしい。


「じゃあ、ローガンとシアは?」


興味本位で聞いただけだった。ガルドは冒険者じゃなくて勇者一行の一人だったしな。

ローガンとシアが一瞬目を合わせ、俺を見てニヤリと口角を上げた。


「知りたいか?」

「‥‥やめとく」


弱い奴ほど、自分のランクや力を誇示したがる。そして、本当に実力のある人は、その力を誇示しない。まぁ、二人はそういう事だろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ