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第二十四話

第二十四話



生きていたのかと、謎の心配をされた後、集まりは解散となった。俺はと言うと、説明の為に双狼の宿へと連れていかれた。


「それで?」

「あ~‥‥なんだ、その‥‥暫くの間、常連になるらしい」

「シュウイチは異世界から来たから知らないだろうが、アレは魔王だぞ?」

「ああ、それは聞いた」

「だったら‥‥」

「魔王だろうが何だろうが、うちの客だ。危害は加えないと言われているし、客である以上、魔王だろうがなんだろうが客は客だ」

「それは‥‥」


まさか、ヴァリスの呪いの事は言えない。客の個人情報だからな。


「この世界での魔王がどんなもんか知らないが、今のところ世界征服とかここで暴れる気はないみたいだしな。それとも、アイツに何かされたやつがいるのか?」

「いや‥‥」

「なら、いいじゃねぇか」

「はぁ‥‥分かったよ。だが、危険だと思ったら俺に言ってくれ」

「おう、ありがとな」


こうして、魔王という新しい常連が増えた。ついでに執事のハインツも。

しかも、セーフエリアには人が増え始めていた。

引退した元冒険者たちが、ここで店を出したいと言い始めたらしい。そして、それを先導しているのは商人のレッツェルと龍之介だというのだ。

ガルド、龍之介、俺の三人で晩御飯を食べているとき、ドゥガンたちがまた何か建て始めたという話から始まった。


「おいおい、どういう事だよ」

「見ての通りだけど?」

「見ても分かんねぇから聞いてんだろうが」

「はぁ‥‥アンタ、食べ物や備品はパソコンで何とかなるかもしれないけど、服は?食器は?」

「あ~‥‥」


考えてなかった、とは言いたくなくて、思わずニンジンを口に放り込んで誤魔化した。


「どうせアンタの事だから、考えてなかったんでしょ」

「ぐっ‥‥」

「だてにアンタの幼馴染を何十年もやってんじゃないのよ」

「うるせぇ‥‥」

「これはね、私達だけの問題じゃないの。アーロンやドゥガンたちだって、いつまでも戦えるわけじゃないのよ? ある程度、セーフエリアの中でなんとかできるようにしておかないと!」

「だが、職人がいたって、結局材料は外から持ってこないと意味ないだろ?」


服屋が出来たって、売り物の服や布は外から仕入れないといけない。


「ほんと、あんたって湯屋の事以外は興味ないわね! だいたい、今着てるその部屋着だって、高校から着てるでしょ!」

「いいじゃねぇか。着やすいんだよ」

「そんなんだから、彼女もいないんじゃない」

「お前だって相手がいねぇから、田舎に一人で帰って来たんだろうが」

「朴念仁のあんたと一緒にしないでちょうだい! あたしは、追いすがるイケメンたちを千切っては投げ、千切っては投げ、泣く泣くこっちに」

「ま、まあまあ、二人とも‥‥」


俺と龍之介が言い合っていると、ガルドが止めに入る。いつもの事だ。


「ふぅ‥‥素材の事なら問題ないわ。畑をやりたいって言ってる、アッシュ。引退後もテイムした動物達とゆっくり暮らしたいって言ってるテイマーも何人かいるし。そういう冒険者って多いらしいのよ。でも、地上だと大変でしょう?」

「ああ、確かにね。契約を結んだ従魔って普段は安全なんだけど、やっぱりご近所問題とかあるから」

「従魔のご近所問題‥‥」

「匂いとか、騒音とかね。それに、一般人からすると、知らないから怖いってのもあるわ」

「世知辛ぇなぁ」

「テイマー専用の宿もあるけど、大体の従魔は外の小屋で寝るかな」

「こっちの世界にもマンションみたいな貸し部屋があるらしいけど、従魔お断りって所が多いみたい」

「なるほどね。まぁ、ここなら殆どが現役か引退した冒険者だからな」

「誰も文句を言う人なんていないわ。場所も有り余ってるしね」


冒険者とか異世界って、なんでも自由なイメージだったが、そうでもないらしい。


「ドゥガンたちが大忙しだな」

「それも対策済みよ。建築に特化した魔法使いがいるみたいで、レッツェルが手配してくれたわ」

「レッツェルが‥‥? あいつ、商人だろ?」

「もちろん、見返りはあるわ」

「見返り?」

「採れた物の独占入手と販売。要は、ここで採れた物を買い取って、外でダンジョン産として売るって事ね」

「ブランド化って事か」

「そう言う事」


相変わらず、商魂逞しいなと半分呆れる。


「そのうち、観光地化しそうね」

「異世界に来てまで、オーバーツーリズムとか勘弁してくれよ?」

「そこは問題ないと思うわよ? ここまで来るには、ダンジョンの半分を通って来ないと来られないんだから」

「それもそうか」

「人が増えれば収入も増える。いいじゃない」

「取らぬ狸のなんとかにならなきゃいいがな」


とは言え、ここが発展するのは冒険者にとってはいい事なんだろう。最近ではガルドにもちゃんと給料を払えるようになったし、ユズやフラッフィーたちが清掃してくれるからかなり助かっている。


「このまま、何もなきゃいいけどな」

「アンタって、変な所心配性よね」

「うるせぇ。俺は慎重なんだよ」

「慎重な人間は、自転車でウイリーしようとしないわよ」

「なっ‥‥そんなガキの頃の事は関係ないだろ!」

「ちょっと、ガルドちゃん聞いてよ。コイツったらね」

「てめぇ‥‥それ以上言ったら」


思わず龍之介の顔面を鷲掴む。


「痛い痛い痛い! ちょ、放しなさいよ、バカ力! そんなんだからあの時も」

「う・る・せ・え」

「やめてよ! あたしの綺麗な肌が傷つくでしょ!」

「ふ、二人とも、落ち着いて」


段々と人も増えてきて、魔王なんてのも客としてくるようになった。

ローガンとリゼルはかなり警戒しているみたいだが、他の者達は半分諦めたという空気だ。

シア曰く、騒いだってどうにもならない。やろうと思えば、国一つ平気で壊せる力を持つ魔王相手に、何ができるのか‥‥と言った感じだ。

俺から見た魔王は、ただの美中年って感じなんだがな。


特にガルドは、元勇者パーティのメンバーだった事もあり、複雑そうな顔をしていた。

一応、ヴァリスを倒すのが勇者パーティの目的だったらしいからな。

とは言え、ヴァリスは世界の敵というわけでもないとローガンは言っていた。

ヴァリスが魔王になってからの数百年は、魔族による侵略などは起きていない。だが、その強大な力は他の種族を怯えさせるには十分であり、脅威でもあるとかなんとか。


俺にしてみれば、国を亡ぼせる力を持つヴァリスも、人を吹っ飛ばせる魔法を使うリゼルも、剣を持って戦う冒険者も―――客は客だ。その力が、俺や知人に向かない限りは‥‥。


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