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負債ダンジョン ~その代行者は能力も負債も超一流~  作者: 広瀬みつか


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2.銀の代行者

シュナーグは基本紳士的な男です。

ただ今は気が立っているだけなのです。

どうか嫌わないでやってください。


この度は読んでいただき、ありがとうございました。

もし面白いと思われたら「いいね」を押してください。

「ちょっといいか?」


 小麦畑の農作業を一通り終え、昼休憩をとっていた壮年の村人。

 日陰で座り、流れ出た汗を拭き取っていると、背後から男に呼びかけられた。


 村人が背後へ振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。

 年頃は20代半ば。革鎧を装着し、腰にはロングソードが提げられている。

 そして、右肩にはボロボロの布袋を担いでいた。


「俺はシュナーグ・ザラタイア。代行者をしている。ある依頼を受けてここに来た」


 シュナーグと名乗る代行者は淡々と自分の素性と来訪目的を口にする。


「ほう代行者。こんなド田舎にお仕事とはご苦労なこって」

「すまないが、この村で小屋をひとつ借りたい。倉でも構わないが、できるだけ誰も近寄らない場所がいい」

「それだったら村長に言ってくれ。よかったら案内してやろうか?」

「ありがたい。頼む」

「ちょっと待ってく、うっ!」


 壮年の村人が腰を上げると、異様な悪臭が彼の鼻孔を襲う。

 その元凶はシュナーグの担いでいる布袋だった。


「あんた、そんなか何入ってるんだ? えれぇ匂いがするぞ?」

「まあ、そうなるよな」


 シュナーグは想定していたであろう壮年の村人の反応を受け、頭をかく。


「村の中に変なもん入れたら、オラが村長に怒られるわ」

「安心しろ。変なもんじゃない。これはその………人間だ」

「…………人間?」


 シュナーグは頭を傾げる壮年の村人の足下に肩に担いでいたモノをドサッと下ろす。

 すると、袋と思われていたボロ布の中から銀色に輝く髪の子どもが目を回した状態で姿を現した。


 子どもとシュナーグを交互に見て呆然とする壮年の村人。

 その姿を見て、シュナーグは苦笑いを浮かべる。


「あはは。それで村長にだが……」

「と、盗賊じゃあああああああ!!」


 壮年の村人はそう叫ぶと、村の中へ走って行った。



 ***



「ああ。酷い目に遭った」


 シュナーグは村長から借りた村はずれにある飼料倉で腰を下ろし、頭を抱えた。


 あの後、村は蜂の巣を突いたような騒動になった。

 壮年の村人が村中に「盗賊が現れた」と触れ回ると、村の女子どもすべてが家に籠もる。

 逆に自衛団の青年10人程度がシュナーグの前に集結すると、問答する間もなく農具で襲いかかってきた。今までいくつもの盗賊団を相手にしてきたシュナーグはそれらの攻撃をかわしつつ、青年たちを無力化していく。

 すると、今度は村長が男爵家に救援の伝書鳩を飛ばそうとしたところをすんでの所で止める。

 そして、怯える村人たちに自分の素性と経緯を伝え、やっと騒動は鎮静化された。


「盗賊を狩りに来た俺が盗賊呼ばわりされるとは。こんな屈辱はない。これも全部こいつのせいだ」


 シュナーグは小屋の真ん中に倒れ込んでいる子どもを睨んだ。

 歳は10代、場合によっては10歳にも満たないかも知れない。

 身長は150センチも満たないほど小柄。

 髪は銀色のショート。しかし、なぜか襟足だけ腰まで伸ばしていて、三つ編みをしている。そして、その先を赤いリボンで括っていた。

 服装もかなり妙で、デニムのショートパンツとへそが見えるほど丈の短いシャツを着ていて、申し訳程度に革製の胸当てを着けている。

 その上、両腰にはナイフが1本ずつ提げられていた。そのナイフは村に運び出す前にシュナーグが回収している。

 どう見ても村の子どもではない。

 胸当てとナイフを持っているということは少なくとも荒事目的の格好であるといえる。


 森の中で見つけた少年は小屋に運び込むまで意識を取り戻すことはなかった。しかし、しっかりと呼吸はしている。死んではいない。

 なぜわざわざこの子どもを村に運び込んだかというと、彼にある疑惑があったからだ。


「傭兵にしては軽装過ぎる。騎士はもっての外。となると俺たちと同業者。もしくは……。まあ、その辺は本人に聞くのが手っ取り早いか。おい起きろ」


 シュナーグは子どもの肩を軽く揺する。

 すると子どもはうなり声を上げつつ、目を開ける。その瞳は快晴の空のように青く澄んでいた。


「やっと起きたか。どうだ? 意識ははっきりしてるか?」

「ここは……どこ?」

「ここは【アバルタ】という村だ。お前がこの村の近くの森で倒れていたのを俺が見つけて、ここに運んだ」

「そうか。君が助けてくれたのか。ありがとう」

「いや。俺に感謝するかどうかの判断はまだ早い。俺がお前にとって敵かも知れないからな」

「敵? それはどういう……あれ?」


 子どもはある違和感に気づいたのか、全身に力を入れてくねらせる。

 彼の手首足首が縄で縛られていたのだった


「悪いが、お前を拘束させてもらった。妙な動きをされても困るからな」

「こんなことをしてもいいと思っているのか! 今すぐ放せ!」

「俺の質問に答えたら解放してやる。まあ返答内容次第では解放できないだろうがな」

「くっ……。質問ってなんだよ。早くしてくれ」


 今の状況に観念したのか、子どもは抵抗をやめ、シュナーグを睨み付ける。


「まずはお前の名前からだ」

「ふん。人の名前を聞くならまずは自分から、ひゃわっ!」


 シュナーグは子どもの目の前の床に大型ナイフを突き立てる。


「子どもに危害を加えるようなことはしない主義なんだ。だが生憎、今の俺は腹の虫どころが悪い。その上、用があって緊急を要している。ふざけるようなら子どもでも容赦はしない」

「ぼ、ボクは子どもなんかじゃないよ!」

「そうか。子どもじゃないなら、この状況でどう立ち回ればいいかわかるな?」

「…………はい」


 シュナーグはナイフを床から抜き、涙目になっている子どもの前で胡座をかく。


「改めて聞く。お前の名前は?」

「レイン。レイン・アークライツ」

「歳は?」

「先月で18歳になった」

「……お前、死にたいのか?」

「嘘なんてついてないよ! 正真正銘の18歳! お酒だって飲んでも許されるれっきとした大人! ………この前酒場で飲んでたら、店主につまみ出されそうになったけど」

「お、おう。そうか。わかった。お前は大人なんだな」


 声を荒げたと思ったら、急に意気消沈するレイン。

 思わずシュナーグの怒気が薄まる。


「質問を続ける。お前は何者なんだ?」

「何者って、どういうことかな?」

「最近このあたりで【白虎の尾】という盗賊団が村々を荒らし回っていてな。俺はそいつらを討伐しにきた代行者だ。そしたら、お前がこの村の近くの森で身を潜めるように倒れていたところを見つけた」

「なるほど。それで君はボクがその盗賊団のメンバーで、この村の物見をしに来たと疑っているんだね?」

「どうなんだ?」

「残念だけど、ボクはその【白虎の尾】のメンバーじゃないし、そんな盗賊団の名前すら知らない。全くの無関係だよ」

「だったらその身なりは何なんだ? どうしてナイフを持っていた? まさかこの村の住民だとは言わないだろうな?」

「違うよ。ボクは盗賊でも村人でもない」


 レインは一拍空けると、キメ顔でこう言い放った。


「ボクはレイン・アークライツ。第一級(ファースト)代行者(エージェント)のひとりさ!」

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