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四神伝説~散々支配してきたブリキ共に鉄槌を下してやんよ~  作者: 統氏


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98話 また遅刻してるよ

格納庫に警報音が鳴り響く。


四獣AI(青龍)の機械的な声が空気を切り裂いた。


「敵性反応接近。施設北西方向に機械兵を確認」


作業中だった博士達の手が止まる。


守も反射的に顔を上げた。


だが――すぐに視線は修復中のタートルウェアへ向く。


開かれた装甲。


外されたパーツ。


まだ戦える状態ではない。


タイガーウェアも同じだった。


焔は舌打ち混じりに肩を回す。


「また俺らだけかよ」


昇も小さく息を吐く。


「……行くしかねぇだろ」


剣は冷静にモニターを確認しながら短く言う。


「無理はするな」


その声は淡々としているが、いつもより少し低い。


守も不安そうに続ける。


「気を付けてください……」


昇は軽く手を上げた。


「分かってる」


焔は笑って見せる。


「任せろって」


数分後。


戦場。


ドラゴンウェアとフェニックスウェアが機械兵と向き合う。


敵は三機。


数自体は多くない。


ドラゴンウェアが前へ出る。


振り抜いた剣が機械兵を弾き飛ばした。


一機の機械兵を押し返す。


昇は操縦桿を握りながら舌打ちする。


「っ……やっぱなんかモヤモヤする!」


『戦闘中に考えるな』


ドラゴンウェアの低い声。


昇は少しだけ眉を寄せる。


「分かってるよ!」


その横を炎が駆け抜ける。


フェニックスウェアが炎を撃ち放つ。


機械兵を吹き飛ばした。


焔は少し強引に笑う。


「ほらほら!今は戦闘だ!」


連携自体は悪くない。


むしろ動きは噛み合っている。


敵を押している。


その時、通信越しに剣の声が入る。


「……今なら試せる」


昇と焔の動きが止まる。


一瞬だけ視線を交わす。


焔が口元を歪めた。


「やるか」


昇も小さく頷く。


「……ああ」


ドラゴンウェアとフェニックスウェアが並ぶ。


集中。


意識を揃える。


昇が叫ぶ。


「行くぞ、ドラゴンウェア!」


焔も合わせる。


「俺達もいくぞ、フェニックスウェア!」


だが――


何も起こらない。


一瞬の沈黙。


次の瞬間、警告音。


四獣AI(青龍)の声が響く。


「同期率低下」


「適合率変動」


焔は顔をしかめる。


「またかよ!」


昇も歯を食いしばる。


「なんでだよ……!」


数値が乱れる。


呼吸がズレる。


意識すればするほど、噛み合わない。


剣の声が鋭く飛ぶ。


「戦闘に集中しろ」


その直後。


機械兵の攻撃。


ドラゴンウェアが咄嗟に防ぐ。


『前を見ろ』


昇はハッと息を飲む。


「……悪い!」


切り替える。


ドラゴンウェアが斬り込む。


フェニックスウェアが炎で動きを封じる。


連携が上手く決まり機械兵を追い詰める。


最後の一機。


焔が叫ぶ。


「昇!パス!」


焔が叫ぶ前から動きで何をやるか理解してた昇


「ああ!わかってる!」


片方のドラゴブレードをフェニックスウェアに渡しそのまま二つの剣で同時に斬りかかる。


機械兵が爆散した。


戦闘は終わった。


だが――


勝ったはずなのに。


空気は重い。


昇は黙ったまま。


焔も珍しく笑わない。


「……なんで出来ねぇんだよ」


戦場に、悔しさだけが残った。

施設へ戻った後。


格納庫には修復音が響いていた。


開かれたタートルウェア。


損傷の激しいタイガーウェア。


そして、その奥。


静かに立つドラゴンウェアとフェニックスウェア。


昇はドラゴンウェアを見上げたまま動かない。


さっきの戦闘が頭から離れない。


勝った。


敵も倒した。


なのに――


胸の奥に残るのは妙な敗北感だった。


「……なんで出来ねぇんだ」


小さく漏れる声。


握った拳に力が入る。


その横で、


焔も珍しく静かだった。


フェニックスウェアを見ながら頭をかく。


「今まで出来てたのによ……」


言葉に苛立ちが混じる。


出来ていたものが出来ない。


それが二人を余計に焦らせていた。


昇は視線を落とし、


苛立ったように髪を掻き上げる。


「何が違うんだよ……」


そこへ、


工具を置いた昇の父が歩いてくる。


少し呆れた顔だった。


「焦っても出来るようにならん」


短く言って、


昇の頭を軽く叩く。


「まず頭冷やせ」


昇は顔をしかめる。


「でもよ――」


「でもじゃない」


父は言葉を遮る。


「焦った顔して出来るもんも出来なくしてるぞ」


少し離れた場所で聞いていた剣も静かに口を開く。


「……俺もそう思う」


腕を組み、


二人を見る。


「今のお前達は出来ない事ばかり考えて周りが見えてないんじゃないか?」


守も小さく頷く。


「焦るほど……難しくなる気がします」


焔は大きく息を吐く。


「んな事言われてもなぁ……」


昇は何も返さない。


ただ、ドラゴンウェアを見る。


しばらく黙った後、


ぽつりと口を開く。


「……どうすりゃいいと思う?」


ドラゴンウェアは少しだけ沈黙した。


そして低く答える。


『分からん』


即答だった。


昇は思わず顔をしかめる。


「分かんねぇのかよ……」


『だから考えている』


焔もフェニックスウェアへ向く。


「お前は?」


フェニックスウェアは少し考えた後ため息を吐いた。


『考えてるけどわからん』


焔は苦笑する。


「お前もかよ……」


誰も答えを持っていない。


時間だけが過ぎる。


格納庫に工具音だけが響く。


その時――


警報音。


全員の顔が上がる。


四獣AI(青龍)


「敵性反応接近」


空気が張り詰めた。


昇と焔が反射的に顔を見合わせる。


答えは出ていない。


何も解決していない。


それでも――


戦いは待ってくれない。

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