89話 なんか最近離れてる事多いな...
格納庫。
四獣神は、静かに並んでいる。
だが――
動かない。
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昇
「……適合率が足りないって、なんだよ」
苛立ちを抑えきれない声。
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焔
「意味わかんねぇだろ……」
「今までそんなの問題なかったのに」
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守
「僕たちが……原因なんですよね……」
視線を落とす。
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剣は何も言わない。
ただ、四獣神を見つめている。
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昇が吐き捨てる。
「じゃあどうすりゃいいんだよ!!」
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沈黙。
誰も答えられない。
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空気が張り詰める。
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焔が舌打ちする。
「……クソ」
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剣が低く言う。
「……一度離れろ」
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昇
「は?」
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「このまま続けても無駄だ」
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守も小さく頷く。
「……一旦、休みましょう」
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誰も反論しなかった。
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四人は、それぞれその場を離れる。
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――
別室。
昇の父たちと、四獣AI。
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昇の父が口を開く。
「原因は分かっているのか?」
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四獣AIが答える。
「はい」
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「四獣神は、四獣王と麒麟の融合体です」
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「従来の四獣王とは、別の存在です」
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剣の父が腕を組む。
「……つまり」
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四獣AIが続ける。
「適合者にとって」
「これまでの“相棒”とは認識できていません」
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守の父が小さく頷く。
「……無理もないな」
「見た目が同じでも、中身は別物だ」
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四獣AIは続ける。
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「さらに要因があります」
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「四獣王は、感情を獲得していました」
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焔の父が目を細める。
「……ああ」
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「適合者との別れの際の会話」
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「それが強く記憶されています」
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「現在、それが精神的負荷となっています」
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静寂。
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昇の父が低く言う。
「……トラウマ、か」
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四獣AIは淡々と続ける。
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「結論として」
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「相棒を失った事実」
「そして――別れの記憶」
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「これらが重なり」
「適合率が低下しています」
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沈黙。
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そして、AIは続けた。
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「補足」
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「感情は非効率です」
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「感情がなければ」
「この問題は発生しません」
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空気が凍る。
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「――それは違う」
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昇の父が強く言った。
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「感情があったからこそ、あいつらは戦った」
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「壊れると分かっていてもな」
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剣の父も続く。
「感情がなければ、あそこまでやれなかった」
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守の父が静かに言う。
「それを否定するのは違う」
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焔の父も頷く。
「……あいつらは、それで選んだんだ」
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四獣AIは沈黙する。
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やがて。
「……了解しました」
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短く、それだけを返した。
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昇の父が息を吐く。
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「結局は……」
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「乗り越えるしかない、か」
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場面が戻る。
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昇は、一人で立っていた。
動かない四獣神の前。
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「……なんなんだよ」
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視線を落とす。
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焔は壁に寄りかかり、黙っている。
守は手を見つめている。
剣は目を閉じている。
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答えは出ない。
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その時――
警報が鳴り響く。
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「――警告」
「敵性反応接近」
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全員が顔を上げる。
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焔
「……は?」
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守
「こんなタイミングで……!」
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剣が即座に言う。
「来るぞ」
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昇は四獣神を見る。
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だが――
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動かない。
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沈黙。
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戦いは、待ってくれない。




