83話 四獣王本当にありがとう
地球。
アルティメット四獣王の中。
昇が戸惑った声を上げる。
「……は?」
「突然喋り出したと思ったら、何言ってんだよ……」
「お別れって……なんだよそれ……!」
沈黙。
その空気を破ったのは、四獣AIの声だった。
「――限界です」
守
「……え?」
「四獣王は四体合体できない状況でした」
「月での戦闘での機体損傷、出力状態では耐えられませんでした」
焔
「……は?」
昇
「じゃあなんで……」
「なんで合体なんてしたんだよ……!」
AIは静かに続ける。
「――理解しています」
「四獣王は、現在の状態では崩壊する可能性を認識していました」
「それでも」
「――適合者と共に勝つことを選択しました」
沈黙。
その意味が、ゆっくりと染み込んでいく。
昇の視界が揺れる。
「……ふざけんなよ……」
「そんなの……」
声が震える。
焔は歯を食いしばり、顔を背ける。
守は俯き、肩を震わせていた。
剣は――静かに座っている。
だが拳は強く握られていた。
その時。
四獣AIが続ける。
「本来、四獣王には感情は存在しません」
昇
「……え?」
「戦闘用兵器として開発されたためです」
「ですが」
「四獣バングルの完成後」
「四獣バングルと四獣王をリンクさせたことで」
「適合者の感情データを共有するようになりました」
守
「……それって……」
「四獣王は、適合者の感情を理解できるようになった、ということです」
焔
「じゃあ……」
AIが続ける。
「その結果」
「四獣王自身にも、感情が芽生え始めました」
昇
「……」
静寂。
その時。
優しい声が響く。
ドラゴンウェア
「昇」
昇が顔を上げる。
ドラゴンウェア
「お前なら大丈夫だ」
「どんな状況でも前に進める」
昇の目から涙が溢れる。
「……っ」
昇
「……ありがとう……」
「一緒に戦えて……楽しかった……」
次に。
フェニックスウェアの声。
「焔」
焔が顔を歪める。
フェニックスウェア
「お前の熱さは、周りを動かす力だ」
「それを忘れるな」
焔
「……うるせぇよ……」
笑おうとする。
だが、声が震える。
焔
「……ありがとな……」
「最高だったぜ……」
次に。
タートルウェア。
「守」
守が顔を上げる。
タートルウェア
「お前は仲間達のピンチを何度も助けてきた」
「自信を持て」
守の涙が溢れる。
守
「……ありがとうございます……」
「僕……ちゃんと守れましたか……?」
タートルウェア
「――ああ」
守
「……よかった……」
そして最後。
タイガーウェア。
「剣」
剣は、何も言わない。
ただ見ている。
タイガーウェア
「お前はよくやった」
「迷いながらでも前に進んだ」
「それが答えだ」
剣の目から――
一筋の涙が流れる。
剣
「……ああ」
短く。
だが、確かに感情が乗っている。
剣
「……ありがとう」
その瞬間。
四獣王の光が弱まる。
少しずつ。
ゆっくりと。
消えていく。
昇
「待てよ……!」
焔
「まだ……!」
守
「……!」
剣は何も言わない。
ただ、見届ける。
光が完全に消える。
沈黙。
そこに残ったのは――
動かなくなった四獣王だけだった。
――続く。




