62話 機体の名は麒麟...
『――聞こえるか』
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ノイズの向こう。
確かに聞こえた。
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昇の目が見開く。
「……父さん?」
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『ああ』
『無事か』
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「そっちこそ!!」
昇が叫ぶ。
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別の声が混じる。
『時間がない』
『手短に話す』
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守が息を呑む。
「博士たち……」
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剣が言う。
「状況は」
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『我々は月にいる』
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空気が止まる。
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『機械兵に拘束されている』
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焔が低く言う。
「やっぱり月か」
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『そして』
『我々はある物を作らされた』
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昇が眉を寄せる。
「ある物?」
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短い沈黙。
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父の声。
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『新しい四獣王だ』
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全員が息を呑む。
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「……は?」
昇が呟く。
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『名前は』
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『麒麟』
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四獣AIが反応する。
「名称を確認」
「データ照合不能」
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剣が言う。
「性能は」
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父が答える。
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『単体でも四獣王を上回る出力を持つ』
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守の声が震える。
「四獣王より……?」
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『だが』
『欠陥がある』
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昇。
「欠陥?」
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『稼働時間だ』
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『約三分しか動かない』
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沈黙。
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焔が呟く。
「三分……」
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『本来』
『麒麟は戦闘機体ではない』
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剣が目を細める。
「どういう意味だ」
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父が続ける。
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『麒麟の本来の用途は』
『四獣王の強化ユニットだ』
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守が驚く。
「強化……?」
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『機体を分解し』
『各四獣王に装着できる』
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昇。
「強化パーツってことか……」
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『そうだ』
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父の声が少しだけ強くなる。
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『そして』
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『お前たちが戦った機体』
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『あれが麒麟だ』
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沈黙。
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昇の目が見開く。
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「……は?」
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守も息を呑む。
「じゃあ……」
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焔。
「アイツが……」
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剣が静かに理解する。
「麒麟……」
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『そうだ』
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『四獣王を上回る性能を持つ』
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『だが』
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『三分しか動かない』
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昇が思い出す。
「……そうだ」
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「なんで追ってこなかった?」
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父が答える。
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『麒麟は稼働制限がある』
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『長時間戦闘は出来ない』
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理解。
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焔が言う。
「だから退いたのか」
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『そうだ』
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剣が静かに言う。
「勝てる可能性は」
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短い沈黙。
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そして。
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『ある』
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昇の目が変わる。
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「……どうすればいい」
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父の声。
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『麒麟を手に入れろ』
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空気が震える。
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『あれがあれば』
『突破口になる』
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昇が笑う。
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「上等だ」
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「奪えばいいんだな」
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剣も頷く。
「ああ」
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守。
「やりましょう」
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焔が笑う。
「面白くなってきた」
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父の声。
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『気をつけろ』
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『麒麟は』
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『危険な機体だ』
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通信が揺らぐ。
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『……必ず来い』
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ノイズ。
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通信が切れた。
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沈黙。
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そして。
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昇が拳を握る。
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「絶対親父達を助けるぞ」
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全員が頷いた。




