45話 解析早すぎた?
拘束された機械兵は、静かにそこにあった。
暴れもしない。
だが、完全に停止しているわけでもない。
内部から、微弱な駆動音が続いている。
「……こうして見ると」
昇が、距離を取ったまま言った。
「やっぱ、今までと全然違うな」
誰も否定しなかった。
壊さなかった敵。
それを、こうして解析している。
それ自体が、初めての経験だった。
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「解析を開始します」
四獣AIが告げる。
光のラインが機械兵の装甲を走り、
内部構造がホログラムとして浮かび上がった。
「転移装置を確認」
「機械兵は」
「外部からの指示によって呼び出されています」
守が、静かに息を呑む。
「……自分で、移動しているわけじゃない」
「はい」
「機械兵は」
「“行かされている”存在です」
⸻
表示が切り替わる。
転移の座標ログ。
地球上ではない。
「この位置……」
焔が眉をひそめる。
「月、だな」
「断定は出来ません」
四獣AIは淡々と続ける。
「ですが」
「月軌道、もしくは月内部である可能性が高い」
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「やっぱり、か」
昇は、腕を組んだ。
「親父たちがいる場所も」
「そこだと考えるのが、自然だな」
剣は、黙って画面を見つめている。
⸻
「結論を述べます」
四獣AIが告げた。
「このワープ機構は」
「理論上、再現可能です」
一瞬、空気が張りつめる。
だが、続く言葉は冷静だった。
「しかし」
「現状では、実行出来ません」
⸻
「理由は二つ」
「一つ」
「必要なエネルギー量が、圧倒的に不足しています」
「二つ」
「座標制御および中枢信号に関する情報が足りません」
守が、口を開く。
「……つまり」
「行き方は、分かったけど」
「まだ、行けない」
「その通りです」
⸻
昇は、少しだけ笑った。
「届きそうで」
「届かねぇな」
「だが」
剣が、静かに言った。
「無駄じゃなかった」
全員が、剣を見る。
「何が足りないかが」
「はっきりした」
⸻
「追加の情報と」
「追加のエネルギー」
四獣AIが続ける。
「それらを得るには」
「さらなる実戦データが必要です」
「……敵は、まだ来る」
焔が言った。
「向こうも」
「俺たちが、何か掴んだのは分かってるはずだ」
⸻
拘束された機械兵が、かすかに音を立てる。
内部の光が、一瞬だけ揺れた。
「……完全に、沈黙してないな」
昇が、低く言う。
「はい」
四獣AIは答える。
「中枢との接続が」
「まだ、残っています」
⸻
沈黙。
誰もが、同じことを考えていた。
敵は、黙っていない。
だが――
こちらも、もう何も知らない側ではない。
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「行けるかどうかじゃねぇ」
昇が言った。
「行くために」
「何を集めるか、だ」
剣は、短く頷いた。
「その通りだ」
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月は、まだ遠い。
だが。
進む道は、はっきりと見え始めていた。




