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ボルテージ・バンディット  作者: 伊阪証


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12/13

技術の善性、されど足りず。

ダンジグも、アデンも同じ意見だった。

「異常な位美人ッスねあの女。グリッター買い込んでるの多分あの女でしょー。」

「時間を止めたスノードームみたいな目、絵とは違う点と脈で繋がった肌・・・人間の良さを全面に押し出したみたいな女だね、ホント。こっちじゃ太刀打ち出来ないや。」

あの女には、ロボットも力も必要無い。計算すれば不可になり、セキュリティを突破される。人に見せれば見蕩れる様に、配列が完璧過ぎる。

美しい秩序と美しい混沌、その位置は真逆にあった。

初手から戦わせない。彼には価値がある。出来るだけ戦闘には巻き込まない。

「ナノマシンによる制御剥奪対策も無駄よ、そういうの、対策済みだから。」

これが未来の戦い方だ、派手である必要はない。だが、得体の知れない恐怖として相手の心に刻む。

銃声がした。自分の真横を掠める音だ。

「・・・鋼兵、血迷ったか?」

ナノマシン判定なし、メンタリティチェックも問題なし、嘘も裏切りもなく、計画でもない。

「悪いな、お前に復讐を果たさせて手を汚して欲しくないのさ。・・・事務職なんて二発撃っちまえば十分だ。」

「契約を違える度胸がある時点で褒めたいが・・・気分は最悪だ。信用だが、復讐と利益が交錯し、そして戦いが始まる。

「・・・ダンジグもアデンも紫月も杏香もナシだ。気にするな。」

今回の分け前で色々仕入れた。だが、銃を使うのは無粋。武道のデータチップと軽量アーマーで何とかする。どちらもダンジグと同じ違法品目、軽量とかいいつつ通常の銃弾は通用しないし、触れているだけでも危険な場合もある。

銃を使う向こうの躊躇いは鍵となる、そう思って突っ込んだ時に手に銃弾が食い込む。低火力、しかし腕の奥まで入っている。

「・・・は。」

「薬物対策の非ニュートン流体プラスチック。即座に動こうとすれば硬直を起こす。止血用だと壊れるサイズじゃないと膨らんで止めれないし、でもこれなら抜くのも難しい。・・・もう君が戦わなくても良い代物って頃だ。」

二発目三発目も容赦をせず、顔にも打ち込む。反射を一度でも起こせば硬直し、意図して素早くするにもかなり遅くしなければいけない。

だが、逆だ。銃弾を自分に向けて、ゆっくりと撃つ。

薬物と反応し、沸騰する様に暑くなる。内臓が滅茶苦茶に反応し、吐いて胃に穴が浮かぶ。

胃液と熱による放出、溶けたり出たり、意識が朦朧とするが、身体は動く。

「・・・意地でも止める、絶対に。」

馬鹿な位痛い、だが、自分は立った。それ以上に馬鹿な女の為に、全力で邪魔をする。

逆にこれは都合が良い、腕の一箇所だけ入れっぱなしにして打ち込み、着弾と同時に凝固し、衝突と共に自分の体内で貫かれた箇所が何個かあった。

目が上手く見えない、失血だ。内出血の箇所が多過ぎる。

「お前は何も分かってない。復讐の作法をだ。」

「・・・どういう事だ?」

「利益だよ、最終的な利益があるからこそ復讐は完璧なものになる。利益が無い破滅するだけの復讐は自殺が厄介になっただけだ。」

夥しい血量の影が、灰色の肌を黒に堕とす。

銃を緩めない相手の下腹部を二度打った。向こうも殴りかかり、固まり傷付いたり、分かり合えるまで殴り込む。

「生かす事が最大の辱めだ!殺してやるのは勿体無い!」

「私に対しての言葉としては最良だな!オイ!!」

「お前を辱める為に生かしてると!?そんな訳があるか!!お前に生きて欲しいって思ってやってんだよ!!」

「その結果が虚像の家族と一緒か!!」

「違う!」

語気が荒れ始めた、喉が苦しむ。

「善と悪なんて判断出来る人間は少ない、過程とか、結果とか、その後とか。これが善を織り成すものだ。」

「・・・。」

「ミスるんだ、お前には分からないかもしれないが。」

「分かんない。」

「そうか。そうだったか。」

「・・・だから、復讐はすべき。」

「復讐は結構だが手段を選べ。その選択をミスった儘完遂させるから駄目なんだ。」

不満気な顔を宥め、やり方を教えてはいないが、考え直すには十分だった。

かれこれ三十分後、紫月と杏香が引き剥がし、アデンとダンジグは指揮官を捕縛、神経を鈍らせるべく麻酔を打った。

「・・・分かり合うのに時間が掛かったらしいね。」

「ああ、本当にな。」

「でも、大丈夫だって?」

「こっちの方が楽しいって教えれる。」

そう立ち上がった。

一応言っておこう、彼の利益の最大化は金目当ての別に道徳がどうこうではない。儲かるから良いとしている。金にならない人はない。だから・・・利益があるなら非道・・・酷い事だろうとやってしまう。

ダンジグが慣れてきたのか、準備をし始めた。

「だから、お前に復讐の作法を教えてやろう。先ずは写真を撮る。音声も撮る。動画も撮る。」

稼ぐ為の準備は既にしてある。配信サイトを開き、金銭の受け取りハードルや利用規約が緩いものを探る。

「これをベースにAi生成で陵辱しまくって下層SNSに流しまくる。そしてAiにはこれをハッシュ値の暗号にし、注目してしまう様にする。」

具体的には、どうとは言わない。言わないのが本人の名誉の為だ。ダンジグおすすめのグッズなので生半可なものではない。

「こうすれば全世界に一瞬で広まるぜ・・・死よりも酷い恥って奴をな!!」

そしてついでに実際の映像を取り、偽造はしたものの本来の映像もコレであると公開した。

復帰するに支障は無い、それはあくまでプライドが無ければの話だ。退陣した所で情勢を過度に変えてしまわない様にAiで代用する。・・・だから、どう足掻いてもネットの玩具であり続ける。

純粋な絵の上手さで芸術だと評価されたり、同時に元々の人物の外見が良いと(ダメな方に)掘り下げられたり。

銀行強盗の利益よりは下だが、それでもバカに出来ない金額。何より、他への大損害により儲かる金額が跳ね上がった。当面は没頭だな。

そして、ラメ混じりの手が引っ張る。

「・・・ありがと、ホントに。」

復讐の色は、笑いと共に消え去る。高笑い出来る程の余裕がなく、制御出来ない笑いで満たされた。

「・・・またね。」

「またな。」

仕事の依頼をまたする、なんて言って去っていった。これで一件落着、今晩は少し豪華にする。

仮想通貨という善の為のシステム、技術は善に向かう・・・いや、少し前が悪の要素を持ち過ぎていた。インターネット内でもモラルや倫理が出来ていく。

そして、時代と共に忌避すべき悪徳を遠ざけ、蓋をされる。数理が作る時代の流れでは足りないと、彼が背中を押した。

「・・・少しはマシになれたかな、母さん。」

その美貌の似合う笑顔で、カメラの視線を奪って消えていく。

「・・・何これ。」

「一応やべータイプの犯罪者だからな。これで脅しとく用に持っておく。これさえあれば幾らでも活用出来る。」

写真を握り、その外見を忘れない。

「・・・これ、背景切り抜いたらexeファイルで解析出来るんですけど。」

「・・・本当か?見抜かれていたか。」

解析内容は・・・。

「『私の主は元異邦の傭兵団団長である。彼は人間を一切信用しない、Aiだけの世界を作ろうとする恐ろしい人間だ。・・・私は必要だから使われているだけで十分そう遠くない内に殺されるだろう。』」

「・・・次の問題発生だが・・・彼女から動くだろう。その時まで心配しなくて良いか。」

と、機械メンテに対応可能なバーに飯の予約を入れ、行く事にした。


一日経過した訳ではないが、その日の夜にて。

「・・・ふむ。」

私設警察カガの親戚、郎党を立ててクーデターを企てる一人。

彼の名は是枝義一、圧倒的手腕の財務家である。

彼の計画が始まる、その日がやってきた。

「メディアはどう潰します?」

「・・・そうだな、法的制限を掛け、その理由を主要なメディアの責任にする。そうすればメディア同士で潰し合う。血気盛んな馬鹿共だ、互いが互いを食って、自滅するまで終わらないだろうよ。変なのは残しとけ。」

今回の一件、絡んだ組織が多過ぎて公開するのは危険だ。そして、一人目につく存在がいた。

「・・・あのOiだけはどこかのタイミングで潰さなければいけない。その為にも彼女を派遣したのだ。ザクセン、アウステルリッツ、エカテリンブルク、ウラジオストク、アーイーン=ジャールート。準備を済ませろ。特殊部の連中と組んで二人一組でさぐれ。」

かなり焦燥し、痩せこけている顔をしていた。カガに対するサーバー攻撃があったのも事実。

この一件で、現政権は失墜し、カガはある提言をした。

『選挙給与』

議員が不在であるのは問題だ、しかし、無投票も多いのが事実。そこで信頼度を割り当て、無投票が少ない程給料が増える、国会全体の連帯責任制度。勿論交通費等の諸費用も大幅に下げる。

「これで、政権の掌握は可能だ。」

本格的に国盗りが始まる、同時に様々な組織や謀略が露呈される。・・・国盗りがタダではいかない、それは犠牲を多く払う事にある。

・・・彼は会わなかった、善を残すシステムだけでは足りない、善を教えるシステムが必要だ。

その顔は、善として生き、同時に善を知らぬ顔なのだ。

信用していたのにな(=ますます好きになりそうだ)


ダンジグ・過去編:失望なければ人は倒れず

マセマティカルに行こう:善されど善ならず

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