派手に行こう
テロや強盗等の大規模犯罪には二種類存在する。
第一に金銭等の資源を入手する為、人員をギリギリまで削ぎ落として行う窃盗に近いもの。これ等は目立たない様にするのが基本だ。
第二に人員的な勢力を確保する為の広告的襲撃、思想を流布し、テレビが馬鹿みたいに広報する。それだけで価値がある。
対傭兵団、それに関しては予想通りかなり押されていた。一人殺すのに最低五十人は必要。敵の数自体は少ないが少数精鋭が極まっている。罠や近距離重火器は次々に破壊される。弾薬が尽きASValを強奪して200mという弾速的に予測不可能な位置を射抜く。
重装という隠れずに突撃する連中と、軽装という音を誤魔化し暗殺する二つに分断され、いつの間にか生命反応が消える。
「・・・速過ぎる。」
裏切り対策はもう役に立たない。不殺以前に全員死んで終わる位なら、こちらから手を打つ。
「任せた。」
そう彼は言った。ダンジグは連絡の意味を理解した。
まだ時間は掛かる、十分だ、十分。精鋭相手にどう駆け引きをするか。
罠は仕掛け終えた。
「ロボットも機器も同時に消灯する、一回だけだ、外されたとしても強い事を忘れるなよ。」
「ああ、分かった。」
目が向く、フラッシュを投げてそこに撃たせる。モーショントラッキングがギリギリ機能していた、視線も銃口も、跳弾以外当てれない。
呼吸一つ鳴らさず、消灯に入る。
暗闇で白い吐息を漏らす、硝煙ではないのに銃口が牙を放つ。呼吸を緩めただけでこれだ、反応が反応として機能していない、いや、寧ろその反射や反応の分泌物すら利用している。知覚過敏をものともしないのにものにしている、リアクションをしない事が一番の対処法だ。
多分普段ならば彼女はゴーグルを内部で爆発させて目を無力化するなりを行うが、実力試しと言わんばかりに使わない。周辺のロボットを優先するあたり、信用はしてくれている。
動作を減らせ、記憶を辿り、銃口を目視せずに真後ろかつ下方向やや斜めに撃つ。
「・・・。」
平衡感覚も支えている機器がある、それが乗っ取られる対策に寝て撃っている。確かに感覚が狂う対策にもなるし、壊れてなくても音の察知が床を通して行える。理に適っている、確かに、となる。
だから、自分は絵に直す。絵であればどう配置する、どう人に意味を持たせる。人の動きにどう説明をつける。映像化し、動きを与え、それを芸術に仕上げる。
馬鹿みたいだが、これが一番安定する。見ていないが、推測出来る。言語化する必要も無い、職人の直感だ、これが一番慣れた経験則である。
欠点もある、自分は軽量アーマー等もあるが銃弾に対する耐性が無い、純粋な身体の強さもあるが、鉛等の金属、火薬が身体の中に眠っている種々の薬品・・・つまり、残留したものに反応してしまう。嘔吐や目眩、幻覚幻聴を起こし倒れる。
どうすれば当てられないか、それに関してが厄介だ。動けば当たり、動かなくても当たる。被弾地点を変えても机程度だとインプラントかアーマーだと判断して撃ってくる。コンクリート・・・しかしそれを持ち運ぶにしても重い、持ち運んだとしても気付かれるか、小さ過ぎて防げないか。
選択肢が無さ過ぎる。
「仕方ないわね。」
動きが無さ過ぎて、彼女が思いっ切り妨害を仕掛ける。頼みの綱である音声に関してをノイズ混じりに流し、混乱させる。爆発を使うと脳死か即死、別に脳死は利益があるから構わないが・・・。
ロボット系が封じられ、どんどん音が減っていく。奇妙な位に減るが、彼女の実力であれば当然か、
「気をつけなさいよ、まだ人に関しては戦力の半分も削れてないんだから。」
あと、約二十人だ。渡した銃の数は万単位、その音も小さくなった。・・・二十人を犠牲にするのに千位の命を費やした。故に、逆に犠牲者を増やし負債を増やせるのだ。
「・・・もう取り返しはつかない、立派な共犯者だな。」
「・・・そうね、よろしく。」
銃を再び構える、真っ直ぐに、そこにいるであろう敵を見据えて。乱射が来る、声で生きていると察し、反射的に打ち始めた。
武器において狙いの無い銃弾程、弱い物はない。
恐れる事はない、真っ直ぐに狙え、その弱い武器を強くする為に。
轟音と共に飛び出る、廃墟の様で新しい空虚な街並みを走る。二十人の耳目は一斉に引かれ、数人が始末され、しかし十五人程度の足音がする。
「来やがれ!走りながら撃てばブレて補修箇所が増える!証拠は残るぞ!!」
傭兵団はもう破綻している、間違いなく勝利は出来ない。リカバリは出来るので現状消せる頭数を消し、終わり次第封鎖。後は政府に命じて封鎖どころか目視不可にする。
第一のトラップ、それはこれが広報的な戦争である事。異邦の傭兵団という怪しい組織がいる中、サーフェスウェブにはアップされない。
・・・その情報は、深層で瞬く間に広がる。追跡が不自然に絶えている人間から炙り出され、政府の金の動きから割り出した。
「偽造完了、と。」
仮想通貨の51%攻撃、それを政府が資金を誤魔化す為に使ったと演出し、実際に動いていた部分に結びつけ、兵力はともかく、スパコンで支配しようとしていたと嘘をつく。
「・・・さぁて、これで言い訳は出来ない。我々は不自由と秩序を嫌う、無法者・無秩序・無政府主義者だ。ルールさえなければ絶対なる生存競争が待っている・・・その日の為に。」
自動標準を揃え、敵の手足を撃つ。特許申請すらしていない最新鋭、ゼロイン調整を自動で行い、銃身の方向を変える、重さは拳銃だが10kgオーバー、反動は重い為ほぼ無い。
「致命傷を狙わない、確かに良いな。舐めプは御法度だけど、楽だ。」
銃声は無い、報復で殺す寸前まで追い込む。
「衛星兵器、軍艦、戦車周りも動員するか。」
一人でも出来た、だが、それでは足りない。
芸術的な勝利と、芸術的な価値を。それは自分には出来ない事だ。
先ず、異邦の傭兵団は数が少ない。時間も短く目立たない。映像として写しにくい。芸術的なものにする事でそれは価値のある広告になる。
「もし、それを君が出来ると言うのなら。それは何よりも輝かしい希望となる。」
白から灰へ、赤からルビーへ、結晶が如き肌を・・・生きていて忘れる者はいない。
学校はもう形だけだ、五年で全てを奪った世界へ。
さぁ、革命の火は灯された。
気分は良い、逃げる足に銃弾は届く。
だが、バトンタッチを達成した。
「カガ私設軍隊特殊部の電野杏香、漢字がコレでもキョウカだからね。アンカじゃないよ。」
「私は諜報部、電野紫月。今回ここで起きた問題の為に非番だったけど出てきたわ。」
片足が腐り落ちる様に外れて無くなりかける中、杏香が支える。
「一年も放置してこんなことよく出来るね。」
「そっち勢力に手ぇ出した訳じゃないから良いだろ別に。」
「だーめ、一応同じ業界だし。犯罪だからね。」
陰気臭い眼鏡を外し、ストックを開かずに散弾銃を構える。
「でも、今回は見逃しとく。」
「ああ、頼んだ。」
特大の犯罪組織が目の前にいる、その中で電気泥棒、違法改造容疑、推定銀行強盗程度では足りない。
一方彼女も戦闘が続く。だが、恐るべき事に圧倒していた。実力があった訳ではない。
「私が銀行強盗で盗んだのは機械だけじゃない、違法に持ち込まれた原子力電池もだ。慎重に進むだろうと見越したらこれを使うのが一番だ。気付けない程度に破壊してくれる。」
彼女は自分自身で動かない。Aiを複製して多数用意する。彼女は全て同時に動かす、外見は同じ、あまりに異質過ぎて逆に疑われない。
傭兵団の団長が出てくるまで無力化し続ける。情報を撹乱し、連絡を偽造し、それでも出て来ない奴を。
別に強くはない、だが、立ち回りが上手い。カジマと同じ奴だ。舐めて掛かったな。
「・・・個人で政府に匹敵出来る時代、そん中じゃお前は時代遅れなんだ。内輪揉めの強さなんて外じゃ通用しねぇんだよ。」
現場にいるな、痺れを切らしたな。大規模戦闘では指揮官を立てれない。全員戦闘に回した方が良い。
純粋な戦闘で戦力も兵力も減らした。ほぼ自分のスコアだが。まぁ、戦争で壁を用意するのは難しい。基本的に火力過多環境で回る戦争は耐久力をどう用意するか、どういう形状にするかである。安い壁を入手しただけだ。
「・・・さぁて、そろそろだ。彼の方には行かないだろう。だが、私は一人であると調子に乗って・・・。」
舐めて掛かった相手を踏み、そして、倒すのだ。




