静かに終わるが一流の技
筋肉痛がヤバい。銀行強盗後に気にする事では無いとはいえ、痛い。ニュースでも話題になっているが、同時に仮想通貨への不正であると叩かれている。
そして始まったのは闇オークション、セキュリティは強盗団から奪った機器で解錠し、ロンダリング完了。最近は金属やプラ板にデータを刻んで再利用出来ない様にする所もある。電流や文字を利用した物が多い。
「合計売上は?」
「千万ドル相当、インフレと金融の結果だからあんまり比較出来ないが。」
「上出来か?」
「上出来・・・だな。しがない盗電家にしちゃ。」
儲けは相当だ、しばらく寝て過ごせる。熱りが冷める迄は待たなければいけない。
・・・本題が来る、警察組織は嗅ぎ付けるのが難しい。一方で仮想通貨に頼った組織は攻撃的になり、ある組織は尚更攻撃的になる。
「アジトは焼かれるぞ、逃げる準備をする。」
「売り尽くせってそういう事かよ・・・。」
「傭兵団は闇オクで武器を調達する、急ぐ必要は無いが『出来るだけ露呈させ』『出来るだけ被害を増やし』『出来るだけ多く損害を与える』そうすれば自壊していく。」
自分は、不殺に関していつもの様に遠回しに伝える。
「利益を逃す事になるじゃないか。」
ダンジグはそう言うといつも目を向けるが・・・彼女はそうしない。背けた儘だ。
「Aiは馴染みきった、生かすも殺すも変わらないだろうよ・・・だが、そうしたいなら都合が良い。『被害を最大化する』事において生存者を増やすのは最適な行為だ。」
納得はしているが、譲れない何かがある。それは理屈も、感情も込められている。
「私設軍隊とは敵対している奴等がいる。カガ、カジマ残党、クスノキ、コシイシ、ソカベも元五大組織は間違いなく動く。」
理屈から説明し始めた。・・・彼等に殺されるから無意味だ、と。
「歩いて逃げるぞ、走れば察される。選択肢内での優先順位を上げずに行く。」
自分の命を守れ、そう伝えた。彼女は確かに自分の事は考えてくれている・・・だが、己が命を捨て去った姿は見るに堪えない。
「・・・復讐か、人間の摂理だよな。」
攻撃の度合いは丁度良い具合には出来ない。最初の攻撃も抑圧として、次の攻撃も抑圧として・・・誰もが止める為に余計にやってしまう。だから復讐は過剰となってしまう。
「・・・対策にあたっては復讐を不可能にする絶対強者の配置と・・・。復讐を次世代に託す事だな。チェチェンは七世代後回しにする事で復讐を終わらせるらしい。」
主導権を奪う、彼女の暗い心に切込みを入れる。
「仮想通貨は、善意が常に上回っているから機能する。仮想通貨が崩壊する時は、稀代の大天才と言える悪人が一人以上出現した時か、悪が溢れんばかりに存在する時だ。」
君のその道は、善であると話す為に。さぁ、振り返りといこう。
「だからどの道そうなった時に社会はどうやっても維持出来ない。」
その上で・・・話は続く。
「仮想通貨は復讐をさせないシステムだ、それと同時に、善意で格差を作り善意で人々を苦しめる。」
君だけが違う、そう目を燻らせる。曇ったルビーは血を通わせて輝く。涙が溢れる事なく、熱と共に乾く。
「機械による道徳は、どれも人が忘れていく事で劣化する。だが、これだけは違う。これだけは異常なのだ。」
そうだ、君だけが違う。君だけは信じれる、と。
「・・・善意で全てが行われれば、その果てには攻撃が調整され、最低限の怨嗟で済む様にする為に。」
ヒトの言葉を交わさない、乾いた心に撃ち抜かれ。
「でも、君はそうしていない。焼き尽くそうと躍起になっている。」
否定して、責める。
「・・・止めさせてくれ・・・どうか、どうか・・・。」
だって、君はこんなにも善の色をしているじゃないか、と。
嫌々、彼女は承諾する。
「・・・分かったわよ。」
「・・・それなら・・・。」
「・・・一人だけよ。一人だけ。そいつは絶対に殺す。」
交渉は終えた、これで満足だ。
「・・・貴方に免じて他の奴等は許してあげる。でも、二度と活動出来ない様にこの一件を白日に晒す。」
これで大丈夫彼女は手を汚さなくて住む。
亜音速弾とサプレッサー付きの銃を大量購入、大量購入も多過ぎると軍隊相手だからとなり探られない。
報復の地に住む人々を買収し、そして弾丸は込められた。
「非殺傷弾か。」
「低速だから貫通はしない。その分怪我しやすいけど骨折するから止まってしまう。」
「レールガンピストルは弾速上げまくったから非殺傷になっている・・・まぁ、逆って事か。」
「それ、小型ミサイルの迎撃用でしょ?・・・盗むどころか型番も登録されてないし。」
「・・・そうなのか、貰って以来愛用している。」
ダンジグとアデンは屋上でそれぞれ待機、現在は斥候として敵を探す。
「・・・お前は、どうして復讐が嫌いなんだ?」
「そりゃ、儲からないから。」
「いや、どちらにせよ儲からんだろう。」
「戦争で利益を得るのは上だけだ。戦争をした国もされた国も疲弊する。その利益は上にしかいかない。ナショナリズムや愛国心が食えるなら話は別だが、食えた所で吐き気がする位不味いだろう。」
「・・・お前はそういう考えなんだな。」
「儲からないから、少しでも努力する。仕組みや状況を判断し、より良いものにする。変に善だなんだというよりも分かり易い基準だと教わった。」
「そうなんだな。」
カジマのバランスを取り続けた人間の教えだ、それは確かに変な理屈で乗せるよりは安定したものだ。
こんなにも平和的で牧歌的なのに、ワルで同時に優しい人。・・・彼は良い人だ、善として、同時に人として、理屈として・・・恋・・・。
「・・・どういう表情?」
「不甲斐ない自分に青筋立ててただけ。」
「大丈夫か?」
「大丈夫、気分として悪い訳じゃないから。くだらなくて良い悩みって奴。昼飯に迷う様な感じ。」
仮想通貨を握りしめた事はない、自分の身に加害をするしかない。煮えたぎる胸の内は、只管に燃えていく。
「・・・作戦を話す。」
「待ってました!」
「気を紛らわす為にしてるだけ、気にしないで。」
ASVal、マガジンが20発で30発に比べ扱いやすい。消音性能も弾速も今回においては向いている。
持って撃つと確かに使い易いが、精度が悪くて反動がキツい。射程も短い。
「UMPとか無かったのか?」
「ソビエトの奴みたいに安くないんだから、Aiによる偽物の家族がどれだけいると思っているの?」
「・・・これ以上は聞かないでおくよ。」
「カラシニコフにドラグノフ、優れ過ぎていないけど、欠点は少ないしカバー出来る。無駄金を使って失敗する銃とは違うから便利って事でね。」
「ああ。」
地図に沿って場所を探し、銃を渡した範囲と比較して小さい範囲を戦場にする。人数という弱点は包囲で漬けいる。初歩にして究極の戦術だ。戦争は開戦前の外交においても『どう包囲するか』探るもの。彼女は戦場を小さく見せる事で迎撃において強く出る。
「無人戦力がどう動くか、ドローンタレット、無人爆撃機、戦闘用ロボット。そこら辺が包囲を壊す可能性が高い。クラッキングの自動化をする為に初動でどうやって一機目を破壊するか、ね。」
「破壊し過ぎてもダメって事か。」
「型番偽造とかはしないでしょうけど・・・ならず者集めたんだから壊される可能性の方が高いわ。」
「自前で調達・・・かぁ。」
「殺さないって啖呵切ったんだから見本を見せてよ。私も守って失敗もダメよ。」
「・・・お安い御用で。」
マシンガンを構えろ、敵を覗き込め、その眼光が敵を穿つものであれ。
ダンジグは別の作戦も聞いていた、あの女が敵である場合、アデンは既に乗っ取れるので有り得ないが、念の為自壊プログラムも本人の同意の上で仕掛け、その上で原始的な自壊プログラムを追加で仕込み、裏切り対策もしてある。
しかし、あまりにも単純過ぎる手法だった。
作戦の意図が理解出来ない。
「・・・誰だ?」
相手が分からない、番号の入力?使用するツールは?・・・何も分からない。それに対し何でも良いと。
「・・・来た。」
砲撃、大砲は最も正確に狙える武器である。
推定出来る位置から狙い、撃ち抜く。
逆算すれば内乱を誘発させる様に暴力団やテロ組織の位置になる様に調整して撃ち抜くのだ。金がある限りどれだけ殺しても構わない。
外道を相手に立ち向かうは、小さな光だった。
取るに足りない小さな光が、眩しく、灼ける様に。




