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呪われた記憶  作者: 眠兎あみ
本編
37/92

番外編:だいすき!ダン先生

!こちらは番外編です。

読んでいただかなくとも本編には差し障りございませんので、お暇な方や、まだセルディアの面々とお別れするのは名残惜しいという方がもしいればどうぞ!


!思いつきで書いたので、深く考えていません。オチも強引です。

時系列としては、門から旅立つ直前と捉えていただいても、完全に別世界だと捉えていただいても構いません。

「ダン先生…本当に素敵……」

 あれほど気が強くいつもつんけんしているユウリが、別人のようにうっとりとした瞳で虚空を見つめている…


「…ローシュさん…何故ユウリさんはダン教官を…?」

 セシリオ達三人全員が持っていた疑問を、フィミリーはローシュに投げかけた。


「…僕とユウリはセルディア出身の幼なじみなんだけどね…」

 ローシュは少し迷った様子を見せてから、ヲトメモードのユウリを見、まぁいいかと語り始めた――



 ~~~



 今から10年以上も昔―まだローシュ達が少年と少女だった頃のことである。

 セルディア生まれセルディア育ちのローシュとユウリは、それほど人口の多くないこの町で、同じ学校に通う幼なじみであった。


「ローシュ!あんたまた勉強してんの?そんなのムダよ!才能がすべてなの!」

 当時から気が強かったユウリは既に高い魔力を有しており、少女とは思えないレベルの魔法を扱えていた。

 そして周りの大人や同学年の友人たちも彼女を高く評価したため、ユウリは多少高飛車な少女へと育っていた。


 一方のローシュは幼い頃から心優しく穏やかで、争いを好まない性格の持ち主であり、ユウリとは対照的に地道な努力を積むタイプであった。


「ユウリ、努力や鍛練だって大事だよ…」

「フン!強ければ何だって良いのよ!強さこそが―」

「は~い、授業を始めますよ。おしゃべりはやめて」

 気が付けば始業のベルが鳴っていた。

 ローシュ達の担任は見飽きた光景にいつものように注意する。

 ユウリは明らかに不服そうにツンとした様子で席へついた。


「今日は特別講師をお招きしています。ガーディアンのマスター、ダン先生です!」

 ローシュがふと視線を上げると、女性担任の二倍はあろうかという大男が教室に入ってくる所であった。

 ダンの迫力に教室の空気が一瞬で変わったのが分かる。


「…みなさん、おはようございます!ガーディアンマスターのダンといいます。よろしく」

 ダンは(セシリオ達には想像もつかないような)優しい顔を作り、なるべく穏やかな声で子供たちに挨拶した。

 子供たちはダンに対する怯えから、それぞれに出来る本気の挨拶を返した。


「将来ガーディアンマスターやガーディアンの職員さんになりたい子たちも、世界を冒険したい子たちも、ダン先生からいっぱい学びましょうね」

 こうしてダンによる一時間の特別授業が始まった。


 ―――


 とはいえ少年少女相手にガーディアンで行われた合宿のような過酷な授業をするなんてことはもちろんなく、ダンからのガーディアンという施設やマスターの仕事に関する軽い授業の後は、生徒たちからダンへの質問タイムに移った。


「はい!」

 ユウリは誰よりも早く、高く手を上げた。

「ガーディアンに挑戦するのは、何歳から出来ますか」

 いまだ誰もがダンに多少の恐れを抱いていたが、この時のユウリは無敵だったため、ダンに対してもいつもと変わらない態度で食ってかかる。


 ダンは大きな声で笑った後、ユウリをまっすぐ見つめてこう言った。

「いくつでも良いぜ!!お嬢ちゃん、威勢が良いじゃねぇか!!」

 ダンの無責任な返答に、思わず担任は彼を二度見した。


「…だがな、お嬢ちゃんがたとえどれだけの魔力を持っていても…まだまだ学べることはいっぱいあると思うぜ」

 ダンは周囲の反応などまったく気にせず、勢い良く教卓を叩いた。

「良いか、力だけじゃないんだ!力も知能も応用力や運さえも!全部誰にも負けねえ!って思った時に挑戦しな!お嬢ちゃんが来るまで俺様がマスター張っててやるよ!」


 …子供相手だということを完全に忘れたダンの勢いは、ほとんどの生徒たちに強い恐怖を植えつけた……

 だがこの時、少年ローシュと少女ユウリの心にだけは、ダンの熱くて乱暴な言葉が強く強く響いた。


 初めはかったるそうに足を組み、頬杖をついて話を聞いていたユウリは、これまで接してきた誰とも違うダンの力強さに驚いた。

 しかしそれは通常、ユウリと同年代の少女が抱くそれとは違った。


「…私…ほんとは勉強、出来ないの……でもこれから頑張って、ダン先生の所へ必ず行きます!」

 いつもの強気なユウリとは別人のように顔を赤らめ、もじもじとしながら話すユウリ。だがその大きな瞳はまっすぐにダンを捉えていた。


「…だから…私がダン先生の所へ行けたら……お嫁さんにしてください!!」

 ローシュは漫画のようにずっこけた。

 周囲もユウリの衝撃的な告白に目が点になっており、はやしたてる者すらいなかった。

「ハッハッハッ!!お嬢ちゃんみたいな可愛い子なら大歓迎だ!頑張って大きくなれよ!!」

 ダンは腕を組み、校舎の外まで聞こえんばかりの大声で笑った。


 この時すでにダンはニルと夫婦であり、もちろんこれは冗談なのだが、初めて“可愛い”と言われ、運命の相手に出会ったと思い込んでいる少女にはそんなことは分かるはずもなかった――



 ~~~



「………」

「…僕はダン教官にも罪はあると思っているよ……」

 セシリオ達は一言も感想を述べることは出来ず、相づちだけ打ち下を向いていた。

「…もちろん今はニルさんのことも分かっているけど、想いは断ち切れないようだね…」

 ローシュは深いため息をついた。


「…教官は…力こそ全てだと思っている訳ではないのですね」

 さすがに無言が続いたので、フィミリーは別の角度から意見を述べた。

 するとずっと呆れ顔だったローシュは笑顔に変わり、満足げに頷いた。

「そうなんだよ!極度の照れ屋だから普段は分からないけどね、たまに見せるそういう熱い所が、本当にカッコいいんだよなぁ…!」

 それを皮切りに、いつも穏やかな彼が早口でダンの魅力を語り始めた。


 セシリオ達はここでようやく気が付いた。

 ユウリだけではなく、一見分かりづらいがローシュもまたダンに異常に惚れ込んでいるのだ…と……


 やはり好き好んでセルディアで生活する者に、まともな人間はいないのかもしれない……

番外編も読んで下さりありがとうございます。


次回からは名前ばかり出てきていたジャジュ村編です。

もう物語全体の折り返し地点に来ているはずなので、どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。


では失礼します。花粉症にご注意下さい。

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