閑話 その61.7 「松本勇志」
今回は意外(?)なところで松本くん視点でお送りします。
俺は松本勇志、煌陵学園高等部1年生だ。
今日は朝早くからツレと海に来ている。
「ここが今日の俺のステージかっ!」
思わず叫んでしまうほど、最高の海だ。
智一の誘いで、海の家のアルバイトに来た俺は、朝からテンションも上々だ!
オリエンテーション合宿以来、俺たちの班は何かと一緒に行動する機会が多いけど、ほんっといい班に恵まれてるよな。啓太郎と葉月ちゃんがブレインとなってまとめてくれるし、智一も無口だけど周りを見て動けるいい奴だし。女子もタイプはばらばらだけどみんなかわいいから、クラスの男子も羨ましがってるもんな。それにしても、大樹は運が悪い……
海の家で智一のおばあちゃんに挨拶をした後、ちょっと時間ができたからその辺りをうろうろしてみたら、これまた可愛い子たちがいっぱいで、思わず声を掛けまくってしまったけど。
一緒に来た女子?そりゃ可愛いけど、みんなとは学校でも会えるから、今は今だけの出会いを求めなきゃ男じゃないぜ!
結局、バイトの合間に声を掛けた子たちがいっぱい来てくれて、海の家は大繁盛、俺頑張ってるなー。
バイトが終わった後、連れて行ってもらった旅館はなかなかいい感じのところで、智一のおばさんって人がまた美人なんだよな。
晩ご飯の前に風呂に風呂に行くことになったんだけど、この風呂がまた混浴露天風呂付きだったりして、それはもう行くしかないでしょ?みたいな感じ?そこで、昼間に店に来てくれた子たちがいたりして、思わずトークに花が咲いちゃったわけよ。で、明日一緒に遊ぶ約束もできて、上々の1日目だったぜ。
2日目は朝から海で遊ぶことになってたけど、俺は啓太郎に伝えて別行動の許可をもらった。何せ約束があるからなっ。
海の家に荷物を預けた後、すぐに約束の場所に急いだけど、まだ女の子たちは来てなかった。流石に約束したのに待たせるわけにはいかないし、間に合ってよかった。
少し待つと、後ろから肩を叩かれた。振り向くとそこには昨日約束した2人の子が笑顔で立っている。約束したカナちゃんとアキちゃんだ。
「ユージくんおはようっ!」
「ごめんね、待たせちゃった?」
「いや、俺も今来たとこだから」
「えー、ほんとに?」
「ほんとほんと!」
「ユージくん優しいね!」
何か勘違いされてるっぽいけど、俺も嘘をついてるわけじゃないし別にいいよな?
そのままカフェ風の海の家に入って、いろいろ喋ったりとしばらく盛り上がって、次は泳ぎに行こうってことになったんだけど、店を出たところで日生ちゃんっぽい子が裏手の方へ行くのが見えた。
「ねえ、今の子って昨日ユージくんと一緒にバイトしてた子じゃない?」
「ん?ああ、っぽいなー」
「あの子、お人形みたいで可愛かったよね」
1人っぽかったし、何でこんなところに来てるんだ?まあ、今はいいか……って海へ向かおうとしたときに、ちょっと雰囲気の悪い2人組とすれ違った。
それだけなら別に気にすることもなかったんだけど、何か気になって振り返ったら、そいつら日生ちゃんの後を追うように裏手に入っていきやがった。
「チッ、ちょっとまずいな……」
「ユージくん、どうしたの?」
「悪い、さっきのツレっぽい子が変なことに巻き込まれそうな気がすんだ……」
この子たちの印象が悪くなっても、日生ちゃん見捨てるわけにいかないからな……
「ええっ、どうするの?」
「ちょっと見に行ってきてもいいか?」
「ユージくん、かっこいい……!
わたしたちも何か手伝える?」
何か2人とも妙に協力的ないい子たちだ。でも、あいつら2人だったから、俺じゃいざって時に守り切れない可能性が……
「って、智一!」
「ん?ああ、ユージか」
「お前、ちょっと付き合え!」
「何だよいきなり……」
うわ、面倒臭そうな顔しやがって、ちょっと凹むぞ。
「いいから付き合え!
日生ちゃんがヤバイかもしれないんだよ!」
「何っ?!」
おろ?急に態度変えやがった……こいつ、もしかして……なんて言ってる場合じゃないな。
「こっちだ」
俺を先頭に、智一とカナちゃん、アキちゃんがついてくる。そのまま建物の裏手に行くと、日生ちゃんが男たちに掴まれてた。猶予はないかもしれないな……
「カナちゃん、アキちゃん、俺と一緒にあの感じ悪い奴らの気を引く手伝いをしてくれ。
智一は、その間に裏から回って日生ちゃんを助けろ。
行けるな?」
俺の問いかけに智一が動き出す。せめて肯定くらいしろよな……でもいつになく焦ってんな、あいつ。
「カナちゃん、アキちゃん、もしやばそうな状況になったら迷わず逃げてな」
そこまでは深刻な顔を作って伝える。彼女たちも真剣に聞いてくれてる。日生ちゃんもだけど、この2人にも絶対何かあったりしないようにってのが前提だ。
「さ、後は俺に合わせてくれればいいからね」
今度は気楽な声で言う。あまり緊張されても困るからな。
嫌な笑い声の男たちの後ろから声を掛けてやる。
「ちょっとちょっと、そこのお兄さんたち、嫌がってるんだからやめてあげなよ」
男たちが振り向いて、俺たちを見てその表情が更に嫌なものになった。
「あぁっ?」
「んだコラ?」
「うわー、ガサツな奴らだね……
見てよ、最低だと思わない?」
まったく下品な態度だな。俺は平静を務めてカナちゃんとアキちゃんの肩を抱いて2人に話す。が、これはどっちかっていうと男たちに聞かせるための言葉だ。チラチラとそいつらの方を見るとますますいきり立ってやがる。
「女連れてるやつが、人の話に絡んでんじゃねえよ!」
「じゃあ、俺がその子の関係者だったらどうすんの?」
「適当言ってんじゃねえ!」
だいぶこっちに気を取られてやがるな。って思った瞬間に日生ちゃんが暴れた。まずいっ!
「何勝手に逃げようとしてんだっ?」
片方の男が日生ちゃんに向かって手を振り上げた。最低だ……あいつも最低だけど、日生ちゃんの動きを考えてなかった俺も最低だ……どうするか……そう思ったとき、智一が何とか間に合ってくれた。振り下ろされた手を、余裕を持って受け止めてくれる。その音に日生ちゃんも顔を上げた。
「ひ、らおか、くん?」
智一が止めてくれたことで、俺にも余裕が戻ってきた。
「ユージくん、これ証拠に使えないかな?」
「ん?うお、アキちゃんナイスだ!」
アキちゃんがいつの間にかスマホで撮ってた写真は、男たちが日生ちゃんに絡んでるところがばっちりだった。
「ほらほら、その辺でやめといた方がいいんじゃね?
自分よりずっと小さい女の子を2人掛かりで虐めてるようにしかみえないよね、この写メ」
遠目でも何かが写ってるのは分かるだろう。それに、いかにも余裕のある言い方をしたから……
「ちっ、覚えてろよっ」
ははっ、ベタなセリフだよ。だけど、次の瞬間日生ちゃんは腰が砕けたみたいに座り込んでしまった。
「うわ……日生ちゃん、大丈夫?
怖かっただろ……ああいう奴らは男の風上にも置けねえわ。
俺、ちょっとハニーたちと一緒に、監視員のとこに報告してくるわ。
智一、日生ちゃんをよろしくっ」
まあ、ここは智一に任せてやるのがダチってもんだな。俺はカナちゃんとアキちゃんの手を取ってこの場を去ることにした。
「ユージくん、すごいね。
勇気あるんだなって思った!」
「ん?いや、俺より2人の方がすげぇよ。
完璧だった!」
「そ、そう?
でも怖くてわたし何もできなかったよ……」
「いや、十分だって。
ちょっとこの後監視員のとこに告げ口に行こうかと思うんだけど、2人も口添えしてくれると嬉しいな」
笑顔で快諾してくれる2人を連れて、俺たちは監視員のところへ向かうことにした。報告が終われば後は遊び放題かな?
あー、後で智一にいろいろ聞いてやらないとな!
アキ「それにしても、ユージくんのバイト仲間って、男の子も女の子もレベル高いよね……」
カナ「うん……ユージくん、本当は誰かが好きだったり……とか?」
ユージ「ん?まあ、好きっていえば好きだけど、あくまで友達……っていうか仲間だな。
それに俺、カナちゃんもアキちゃんもぜんっぜん負けてないと思うし。
むしろ俺なんかと遊んでくれるだけで最高だぜ!」
アキ「えー、もう調子いいこと言っちゃって!」
ユージ「何で何で?!俺信用ない?!うわぁ、ショック……」
カナ「そ、そんなことないよっ!
ユージくんも最高だよっ!」
などということがあったりなかったり……?




