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探索者試験に十回落ちた無資格の俺、人助けで捕まったら年下の人気配信者の補助にされ、なぜか毎回バズってる  作者: 余田ナツ
1期 十回落ちた無資格、補助になる

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幕間 切り捨て

 笑っていれば、たいていのことはうまく運ぶ。


 そうやって私は本部の階段を一段ずつ上ってきた。


 窓のない小さな部屋だった。机が一つに椅子が二つ。紙コップの水はとうにぬるくなっている。


 朝から同じことを何度も聞かれた。卵を巣から運び出したのは誰の考えか。式典の舞台の下でかえすと決めたのは誰か。館内放送の文を書いたのは誰か。


 どれも私だと答えた。


 あの方の名前は一度も口にしていない。口にしなければ、悪いようにはしない。そういう約束だった。


 調べの者が席を外したすきに上着の内側から電話を取り出した。あの方とだけつながる番号を呼び出す。


 呼び出し音が鳴り続ける。十回。二十回。


 切れた。


 もう一度かける。今度は呼び出し音さえ鳴らなかった。


『おかけになった番号は、現在、使われておりません』


 平らな声が同じ言葉を繰り返す。


 電話を机に置いた。画面の端にニュースの見出しが流れてくる。本部、安全管理部長を解任。開いた記事のどこにもあの方の名前はない。


 生態の調査。


 あの命令書にはそれしか書かなかった。卵をどこへ運び、どこでかえすのか。そんなことは一行も書いていない。あの方の判が余計なものに汚れないように。


 書いたのは、私だ。


 あの方は生態の調査に判を押しただけになる。そのほかのことは何もかも私の書いた文の中にしかない。


 権藤君は使いやすい男のはずだった。


 見たことしか言わない。だから証人には、あれほどうってつけの男はいない。あの男が、黒瀬はあの部屋にいたと言えば誰もが信じる。


 そのとおり権藤君は見たことしか言わなかった。盗んだとは一言も言っていない、と。


 特別班が客の前で子を片づける。七番の広間は支部の手には負えない――誰の目にもそう映るはずだった。罪を着せる相手には測定器に映らない力の男を選んだ。黒瀬の言うことなど誰も信じない。


 その黒瀬が生配信の前で、照明の枠を浮かせた。


 職人の道具箱の中までは気が回らなかった。まさか白石君が画面を切らずにいるとは。


 扉が開いた。


 調べの者が書類の束を抱えて戻ってくる。


「お待たせしました、氷室さん」


 氷室さん。


 昨日までは部長、と呼ばれていた。


 私はいつものように目尻にしわを寄せようとした。


 しわは、寄らなかった。


お読みいただき、ありがとうございます!


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