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冒険者達への罰は、協議の結果、一カ月間の村への奉仕と決まった。
二人の剣士は新たに発足したばかりの自警団のメンバーに、剣や槍、武器の扱いを教える事。
知識が豊富な女魔術師は、竜爵としての税を納めてもまだ残り、溜まっていく魔物の素材の鑑定と、私の仕事の手伝いだ。
その一カ月間、冒険者達の食事や住む場所はこちらで用意するが、それ以外に村からの報酬はない。
彼らは亜竜とも呼ばれる魔物、ワイバーンを討伐した実績もある冒険者で、真っ当に雇えば相当の金が必要になるんだろうが、この一ヵ月は無料奉仕である。
これは犯した罪への罰なのだから、当然だろう。
貴族に武器を向け、あろう事か魔術で攻撃を仕掛けもしたのだから、これでも本来ならばあり得ない程の温情に満ちた罰だった。
あのまま王都に引き渡していたら、今頃は三人ともが首だけになっている。
しかし竜がただ働きは可哀想だとしきりに言うので、奉仕期間が終わる時、冒険者達には幾つかの魔物の素材が渡される予定だ。
まぁ、あの魔物の素材は竜が狩ってきたものだから、そこは竜の好きにすればいいと思う。
王国の方でも、この件に関しては調査が行われるらしい。
冒険者達が依頼を受けたギルドがある町の領主は、ウォートルアス伯爵という、外務を担う貴族の一人だった。
彼が他国との関係を憂慮して竜への工作を目論んだのか、それとも他の誰かがウォートルアス伯爵を利用したのか、陥れようとしてるのか、その辺りは、今後の調査で明らかになるだろう。
いいや、明らかにならない可能性もあるが、……そこは王国側の問題だ。
少なくともこの手の工作は、今後は竜に対して仕掛けにくくなるのだから、私としてはどちらでも構わなかった。
さて、そんな事よりも村にとって重要なのは、新しい住人達の到着である。
もう間もなく、具体的には後数時間程で、王都から旅だった新しい住人達は、この村に到着するだろう。
どうしてそうも正確に到着の時がわかるのかといえば、このところ待ち切れない竜が毎日毎日、新しい住人達が旅をしているところまで飛んでいっては、どこまで進んだ、どこまで進んだと教えてくれていたからだ。
威厳もへったくれもない行動だが、到着の日時がわかったお陰で、出迎えの準備はやり易かった。
また新しい住人達にも、竜が彼らをどれ程に歓迎しているのかは、恐らく伝わった筈である。
竜曰く、案内兼護衛の兵士を除けば、もうすぐ到着する住人達の人数は、七十八人。
わざわざ竜が指折り数えたのかと思うと笑ってしまうが、目録に記されていた人数よりも、少しばかり多い。
多い分は、技術者たちの家族だろうか?
念の為、新しい住居は余分に用意していたから、恐らく足りはすると思うのだけれど……。
そしていよいよ到着が目前となれば、竜と私と村人達は、村の外で新しい住人の到着を待つ事にした。
こういうのは、最初がとても肝心だ。
新しい住人は、王国からの開発の支援として、この村にやってくる。
だがどんな事情であっても、この村にやって来たなら、そこから先は共にこの村で暮らしていく仲間だった。
故に、我々が彼らを迎える意志があると、歓迎していると態度で示す事は、この上なく重要だろう。
やがて視界に、こちらに向かって歩いてくる集団が現れる。
彼らは一様に、まず竜を指差して驚いて、それからその横にずらりと並ぶ私達にも驚いていた。
本当に、竜と人間達が同じ場所で、同じように行動して、自分達を待っているというのが、彼らにとっては信じがたい光景だったらしい。
しかし驚いて貰うのはこれからだ。
到着した彼らの目の前で、竜は魔法で己の姿を変える。
「遠路遥々ご苦労。俺が竜爵、グラファールだ。お前達を受け入れる準備は整っている。まずは今日からお前達が暮らす住居に案内しよう。そこに荷物を下ろしたら、村の広場で歓迎の宴だ」
そして以前の祭りでも見せた人間の姿で、竜は両手を広げて、彼らの受け入れを宣言する。
ちなみに、当然ながら住居や宴の準備をしたのは主に村人であり、竜はあまり働いていな……、あぁ、いや、宴の為に今日もグレートホーンを狩ってきたので、十分に働いてはくれてるか。
いずれにしてもここからは、私の仕事だ。
住居へ案内、割り振る際に、新しい住人達の名簿を作っていく。
一般の移住者と技術者は、異なる待遇で扱わねばならない。
彼らの顔と名前は、一目で誰と分かるように覚えておく必要があった。
技術者は、医者に薬師が一人ずつ。
建築士は二人で、木工職人も二人。
それから鍛冶師が一人と、仕立て屋が一人と、醸造家が一人と、料理人が一人で十人と……、あと一人?
目録には載ってなかった技術者が一人、魔物の研究者を名乗るホーレンという男が、新たな住人に混じってた。
どうやら前回、竜が王都を訪れた時に、多くの魔物の素材を引き渡すとともに、グレートホーンの家畜化を予定している話をしたらしく、その為に必要な人材として、また本人も魔物の研究が捗ると考えて、この村に来る事になったんだそうだ。
うぅん、魔物の研究者か。
なんというか、物好きだなぁとの感想しか出てこない。
グレートホーンの家畜化や、溜まった魔物の素材を活用するなら、この上なく有用な人材ではあるのだろうけれど……、私の理解の範疇外だ。
まぁ、いいか。
少なくとも害がないなら、多少の変わり者でも受け入れよう。
予定より多かった人数は、このホーレンと、他は技術者の家族、それから弟子達だった。
家族といっても小さな子供等は居ない。
子供連れで王都からこの村までの旅は過酷が過ぎるので、当然の話である。
しかしこの村に根を下ろすなら、彼らにも安心して子供を作って欲しいと思う。
それは技術者だけでなく、新しい住人の全員に対してだ。
技術者ではない新しい住人達は特に伴侶がいる様子はないが、若い男女ばかりなので、彼らの間で結ばれてもいいし、元からいる村人の誰かと結ばれてくれてもいい。
早めに馴染んで貰う事を考えるなら、幾人かは元からいる村人と結ばれて欲しいが、それは私が、もちろん竜も、強制するところではなかった。
新しい住人達は、自分の住居を得て嬉しそうだったり、これからの生活に不安そうだったりと、様々な表情をしているが、今日のところはまず宴だ。
旅の疲れもあるだろうが、飲んで食べて、それからぐっすりと眠って貰おう。
私も村人も、それから竜も、彼らとの宴を楽しみにしているのだから。




