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竜とセバスチャン  作者: らる鳥
初代セバスチャン

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14/21

14


 村に孤児院と幼年学校が完成した。

 竜が連れてきてしまった子供達も、これからは孤児院で暮らすようになる。

 孤児院の管理は、幾人かの村人が共同で行う。

 その中の一人には、子供達と関わるようになってから幾分は元気になったマーシャも含まれている。


 ちなみに幼年学校の方は、私の次女が責任者に決まった。

 まだ16にも、一人前として認められる年齢にもなってないのに無理だという彼女に、私は至極尤もだとは思いながらも、他に割ける人手がなかった為、どうにか頑張ってくれと頼みこんだ。

 しかしそんな状況を見かねたのか、医者のホリスと、魔物の研究者であるホーレンが、幼年学校の手伝いを申し出てくれて、彼らにはそれぞれ弟子もいたから、どうにか幼年学校も無事に運営の目途が付く。

 ホーレンのように癖の強い人間が、子供の教育に関わっていいのかという事に関しては、少し首を捻ってしまうが、それで人手が得られるならば背に腹は代えられない。


 次女は暫く私と口をきいてくれなくなったけれど、……まぁ、それは仕方ないと思って受け入れる。

 今回の事はどう見ても、間違いなく無茶を言った私が悪いのだから。

 ただ、次女は私の無茶な頼みに怒りはしたが、実際に幼年学校で子供達に何かを教えるの事は向いていたみたいで、苦労はしているが、どこか楽しそうな様子に見えた。


 これで竜が急に子供を連れてきてしまった問題は、どうにか片付いたと言えるだろう。

 もしもこの先、あの子供達の何かが問題になったとしても、それは村の一員の、つまりは身内として解決するべき問題だ。

 彼らはもう、他所からやってきた解決せねばならない問題ではなく、村の子供達なのだから。



 そうしてる間に春が来て、次は牧場の建設と、道の整備が始まった。

 これらは村の中の建築と同じく、二人の建築士がそれぞれ村人を率いて、二カ所同時に作業を進める。

 牧場の建築は兎も角、道の整備は厳密に言えば建築士の仕事の範疇という訳ではないかもしれないけれど、彼らは人を率いて大きな作業をこなす事には慣れているから、専門ではなくとも任せてしまった方が効率がいい。


 グレートホーン用の牧場も、道の整備も、村の中での建築よりも規模の大きい、時間もかかる大仕事だ。

 幾つもの季節を跨ぎ、場合によっては何年もかけて、この作業は続くだろう。

 そうなるとより力を入れて優先すべきは、完成しなければグレートホーンの家畜化という計画が進まない牧場か。


 この牧場に求められるのは、何よりもまずは頑丈さである。

 繁殖を行う親のグレートホーンは、角を折って大人しくさせるが、成長をさせねばならない幼体のグレートホーンは、角を折れない為に狂暴なままだ。

 この狂暴な幼体のグレートホーンを隔離して閉じ込めたり、そもそもの脱走を防ぐ為に、牧場の周囲は決して破られない防壁で囲み、内部も同様の壁で区切らねばならない。

 そうなると木製の柵なんて何の役にも立たないから、石積みか煉瓦積みかにするよりなく、いずれを選んでも建材の用意が大きな課題だった。


 この辺りには手頃な石切り場が存在しないから……、まだしも現実的なのは煉瓦積みだろう。

 しかし煉瓦造りもそれはそれで、量を用意するとなると中々に難易度は高い。

 煉瓦の材料となる粘土や砂は、近くの川で採取が可能だ。

 けれどもこれを石のように頑丈なものにする為には高温で焼成しなければならなかった。

 つまり煉瓦を焼成する為の専用の炉と、大量の燃料が必要になる。


 ……必要な煉瓦の量を減らす為、最初は牧場をもっと小さく建設しようか?

 いや、それだともっと広さが必要になった時、中にグレートホーンを抱えた状態で拡張をしなければならなくなる。

 できれば後からの拡張は避けたい。


 いっそ王国に建材の融通を頼もうか?

 いやいや、仮に王都から建材を運ぶとして、輸送に掛かるコストが莫大になってしまう。

 ただでさえ、王国に対しては以前に竜が借りを作っているのだから、あまり大きな支援は頼みにくかった。


 そうして悩んでいると、ある日、竜が不意に、

「どうした、セバスチャン。煉瓦を焼くのに困っているなら、俺の息で焼いてやろうか? 竜の息で鍛えた物は、剣でも盾でも鎧でも、なんでも頑丈に仕上がるのだぞ」

 何やら得意げに、そんな事を言い出す。


 ……うぅん、非常に悩ましいというか、魅力的な提案だ。

 基本的に私は、竜を労働力として扱う事には反対をしている。

 竜は人間には想像も付かない力があるが、安易にそれに頼ってしまえば、何でも竜がその力で解決してくれるんじゃないかと、期待するようになってしまうから。

 そして期待する事に慣れた人間は、竜を便利な道具として見てしまうだろう。

 私はそれは、竜と人間、両者にとって、悪い未来に辿り着く道だと考えていた。


 故にあまり頼りたくはないんだけれど……、いや、そういえばこの前、雪山に銀華草を採りに行くのに、竜に頼ってしまったなぁ。

 そもそもこのグレートホーンの家畜化という計画自体が、竜がそれを捕らえてきてくれる事が前提だ。

 牧場の建材も、魔物に関わる特殊な事例だと思うべきか。

 なるべく頑丈な防壁を作らねば、グレートホーンが脱走し、村人に犠牲が出る可能性だってあるし……。


 或いは、人はこうやって誘惑に負けて堕落していってしまうのかもしれない。




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