39話 かつてこの世界には宗教は存在しなかった
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木造りの、シンプルながら大きな屋敷。ここはセックスの国の獣人王の住む家だ。
それぞれの国を回った僕達は、ここでもう一度会議をすることにした。
感想、学べそうなこと、是非とも自分の国でもこの技術が欲しいなど、活発に議論は進んでいき――
結論。
「五つの国に共通しているカナタ教から、ゆっくりと他の文化を広めるべきだ」
そうなるか。いやあ、そうなるよねえ……
カナタ教――それは、この二十年の間に全ての大陸で爆発的に流行りだした宗教である。僕を巫女として応援し、共にセカイ様の役に立つことこそ至上の喜び。それが教義だ。
「せめて宗教の名前が『セカイ教』なら喜んでこの宗教を広めるんだけど…」
これは自然発生した宗教だ。どの大陸でも、僕が初めての奥義をした次の日には、もうすでに宗教の起こりははじまっていたそうだ。
宗教が広がるのは素晴らしいことだと思う。文化的に成長している証拠でもあるし。
でも、僕だからなあ……
「それに、巫女って……僕は生物学上は男なのに」
まあ、僕ってそりゃあ男らしくはないけどさ。女と間違うのは違うじゃん。
「どの大陸でもカナタ教は生活に根付いているし、教義もほぼ同じ。カナタ教を通して文化的な交流をし始め、ゆっくり取り入れることができる文化を取り入れていくのがいいかのう」
「「「「「異議なし」」」」」」
ああ、やっぱりそうなるか。
分かるよ、推し活って楽しいもんね。でも、僕は僕自身を推してもらうんじゃなくて、セカイ様を推してほしいんだよ。僕自身を崇められても困るんだけど……
まあ、カナタ教が広まることは、セカイ様も喜ぶことに繋がるから、我慢するけどもさ。
別に僕だって推されること自体は嫌いじゃないんだよ。でも、なんかこうね。はあー。
◆
「よし! 話がまとまったところで……ちょっと別の話になるけど、僕からも提案していい?」
「なんだ?」
会議終わり、僕はみんなに向かってこんな提案を持ちかけた。
「じいじにだけは昔ちょろっと言った話なんだけど……みんな、そろそろ刈り上げ君を狩りに行かない?」
せっかくここに過剰な戦力が集まっていることだし、ちょうどいいタイミングだと思うんだよね。
僕は最初から刈り上げ君を狩るつもりだった。
僕の目標である、この二つ。
・刈り上げ君をぶっ殺して、セカイ様の肥料にする!
・ボロボロのセカイ様の傷を治し、完全復活させる!
そう、僕は刈り上げ君をセカイ様の肥料にしたいんだ。
この世界は白のシリーズにより、世界の淀みは徐々に消え、傷だってゆっくり回復している。
でも、これはただの対処療法で、根本的な解決ではない。実はこのままだと、この世界に未来はなかったりする。というのも、このセカイは長年の無理が祟り、老いている状態だ。世界の老いをどうにかしない限り、完全解決はしないってわけ。
「それを解決するには、現状だと神力の力に頼るしかないんだよね」
折角の機会だし、神力について少しおさらいしよう。
神力とは都合の良い力であり、若さを与える力である。
どんな世界だろうが、億単位、兆単位で見れば、ゆっくり老いていく。永遠の世界など存在しない。それを強引に解決できるのが神力の持つ力だ。
ただ、創造神にとって神力は別の意味を持つ。神力の量がステータスであり、お金のようなものらしい。
刈り上げ君は自らのバカな神力運営のせいで、どれだけ投資してもリターンが見込めなくなってしまった。そのせいでこの世界は廃棄されることになったというわけだ。
「ルナからもお願いしていい? ルナはいずれこの世界の神様になるつもりだけど、普通のやり方なら途方もない時間がかかっちゃう。このままだとルナが神様になる前に、この世界は終わっちゃうんだ」
ルナが神様に昇格する方法の一つに、神様の力を奪うというのがあるらしい。最短で神様見習いから神様になるには、神殺しが一番だそうだ。
ほんと、この世界では神様見習いですら物騒だね。
「ああ、移動方法も戦闘力も全く問題ないよ。ぶっちゃけじいじ一人でも、刈り上げ君に勝てるはずだし」
あの創造神は次元を超えるほどの強さのこの世界の戦士たちを、「代行者」として操り人形にするつもりだった。けれど、その計画は失敗。自らの戦闘力より強い者を傀儡にすることはできないと、刈り上げ君は知らなかった。
故に戦闘力という面において、刈り上げ君はそう大したものじゃない。
っていうか、この世界の戦闘力がぶっ壊れているってのが正しいか。本来一人の人種が創造神に勝てるなんておかしい気もするが……それくらいこの世界の戦闘力はインフレしているってことだね。
まあ、自業自得ってことで。
「で、みんな、どうかな?」
うん、見渡す限り、みんなやる気満々だね。復讐って、楽しいもんね。気軽に復讐できるなら、そりゃあやっちゃうよ。
ということで……
「にゅふふふふ、ビバ、神殺し!」
さあ、みんなを連れて次元を超え、瞬間移動するよー!
今の僕は五つの力を混ぜているからか、魔力は無尽蔵に使えると言っていい。どれだけ遠くても、どれだけ逃げようが、絶対大丈夫だからねー。
「【し】瞬間移動!」
「な、何をする貴様ら、ぐわぁー!」
はい、こんなやつ、描写もなしにボコボコにしましたとさ。本当に一方的な戦いだったぜ……
ルナによると、殺された神様は神様専用の輪廻の輪に流れ、記憶をなくし、また一からスタートするらしい。ってことはさ、死ぬわけじゃないんだから、殺したって別にいいよね。
まあ、僕に目をつけられたのが運の尽きってことで。恨むなら過去のバカな自分を恨んでね。
「ルナ、神力は吸収できた?」
「うん。ばっちり! 刈り上げ君を肥料にできるだけの神力はしっかりあるよ! この刈り上げ君の心臓があれば、セカイ様も若さを取り戻せるはず!」
どうもこの刈り上げ君は創造神としてかなり雑魚のようで、ルナは神力を生み出せるまでの経験値を得ることにはならなかった。
でも、セカイ様を若返らせるために必要になる神力は充分ストックできたらしいので、問題ないらしい。
「よしよし! これでようやくだね! さあ、帰ろうか」
僕達はそれぞれの生活に戻っていく――




