30話 この世界に情報交換は存在しない。
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こうやって僕達家族はじいじの縄張りを増やしていき、傘下に加わった戦士から、僕達が見つけていなかった新たな戦士の縄張りを聞いていく。
結果、天使族総勢二十人を傘下に加え、あっという間にこの大陸の統一を果たしたのだった。
じいじと母がたくさん家を建てていたので、天使族のみんなにはそこに住んでもらうことにした。
今まで殺し合いしかしてこなかったのだ。最初はこんな風に集まって集団生活するなんて不可能。かなり骨が折れるかと思っていたが……
何故か案外すぐ、みんな仲良く暮らし始めた。
その理由が分からなかったので、みんなに直接聞いて回った。
(あれほど次元の違うチタン様と、ひ弱なカナタ様が仲良くしているんだ。それを見て、思い知ったんだ)
(家族……いいなあって)
(そりゃあ、カナタちゃんがカナタちゃんだからよ)
なんか、みんなだいたいこんな感じのことを話す。
正直僕にはよく分からなかったけど……仲がいいのはいいことだ。
そうして平和に暮らす中、僕達が最初に積極的に行ったのは情報交換だ。
(この毒キノコを食べると三日三晩苦しむ代わりに、その後どんな毒も効かなくなる)
「ほえー、そうなんだ! 教えてくれてありがとう!」
(美しい爆発のコツは――)
「あ、ごめんね、それは興味ないかな」
(地から湧き出る温かい湯につかると、傷の治りが速い)
「って、それ温泉!? そっか、温泉があるんだ、教えてくれてありがとう! お詫びにギューってしてもいい? ていうかするね!」
(!!!!????!?!?!?!? あっあっあっ――きゅぅ……)
(爆発の色に――)
「僕はあんまり爆発に興味ないんだ、ごめんね」
(しゅん……)
(筋肉を限界までいじめた後に肉を食べる習慣をつけると、力が強く、身体が大きくなる)
「ほえー、天使族にも筋トレって効果あるんだ。教えてくれてありがとう!」
(小さな爆発、大きな爆発、そんなの人の勝手。本当に強い天使族なら――)
「爆発が好きなのは分かったから!」
……まあ、こんな感じだったよ。
この世界を生きのびてきた戦士達は、自分だけの「色」を持っていることが多い。じいじが魂力の最適化を見つけていたり、母が生まれてから一年の間は黄金期間と知っていたりね。
他にも、効果的な瞑想方法、火事場の馬鹿力の意図的な起こし方、天使族共通のツボ押しなど、そういう貴重な情報を交換していく。
もう争い合う必要はなく、周りが敵ではないということはみんな理解してくれたので、抵抗なく教えてくれた。
そんな様々な貴重な情報の中、宝石に関する情報を持っている戦士がいた。
(この結晶は魔力を貯蔵する性質がある。予備の魔力として持っておくことをおすすめする)
「え、それって……」
その情報、僕にとってはかなり重要な情報だ。
僕は現状魔力総量の都合で、さしすせそ魔法は上級までしか発動することができない。でも、宝石に魔力さえ貯めておけば、超級や奥義も使うことができるってことだよね。
……これなら、計画を早く進めることができるかもしれない。
そしてもう一つ。僕達がその天使族の縄張りに行く前に、自ら志願してやってきた天使族の女性がいた。
どうやら母は過去に彼女と戦ったことがあるらしい。そのためか、この二十人の中で、唯一母が警戒を示した強者だった。決着はつかなかったことから、どうやら母と同じくらいの強さがあるようだ。
……うん、分かる。あのお姉さんは絶対に強者だ。スカウターなんて使わずとも一目瞭然。明々白々。火を見るより明らか。
だって、だってさあ。
この天使族の中で、誰よりもおっぺえがでけえんだもん!
あれはヤバい。あんなの、ずるじゃん。
(うふふ、カナタちゃん。私もあなたのママになりたいなあ。なんて)
ふらっと僕達の前に現れて、エチエチお姉さんは僕を抱きしめる。
柔らかい感触が僕の脳を犯す。甘い香りが僕を溶かす。
優しい温かさに包まれながら、僕の脳内は叫びだしそうになっていた。
うふふ、だって! エチエチなお姉さんが、うふふ、だって!!! うはー!!
ぐへへ、こりゃあとんでもないことになってきたぜぇ……!
「も、もちろ――」
(カナタ?)
「カナタお兄ちゃん?」
「あ、はいもうしわけございませんでした」
そんな事件があってから、母はエチエチお姉さんと火花を散らす関係になった。
最近ではよく僕の母という座を巡って、仲良く煽り合いしている。エチエチお姉さんが挑発し、母がつっかかり、エチエチお姉さんが「キャーキャー」言いながら笑顔で逃げる。この二人以上に強い天使族はじいじしかいないので、誰も彼女達を止められない。
そんな喧嘩を見て、なんだか僕にはえちえちお姉さんは母に好意があるように見えた。同時に母も案外エチエチお姉さんを心の内では認めているフシがある。
そう思い立った時、僕は母が昔語っていたある言葉を思い出していた。あれは子の生まれ方を解説しているときのことだ。
『私も経験があるな。たしかあれは、二十日ほどぶっ続けで殺し合いを続けていた時だったな。
結局決着はつかなかったが、あいつは強い女だった。
では、私とあいつの子もこの世界のどこかで生まれていた可能性が高いのか……』
それで生まれた子が僕だったらなあって妄想することがある。真実がどうかは分からないが、それだと素敵だなって。
で、だ。そんなエチエチお姉さんから聞いた話。これが結構重要だった。
(うふふ、この世界には五人の英雄がいるの)
エチエチお姉さんは、心眼というユニークスキルを持っているらしい。元はロックオンという能力だったらしいが、彼女はこのユニークスキルを見ることに特化させて使っていると、そう進化したらしい。
心眼は空や宇宙から映像を見たり、複数の視点で一つを見たり、ロックオンの時と同じように、見た場所に爆発を起こしたりと、なかなかに便利な能力だそうだ。
そのスキルで集めた情報を、惜しげもなく僕らに語ってくれた。
どうやらこの世界は、五つの大きな大陸に分かれているらしい。
(あれは空に浮かぶ忌まわしい衛星が赤から白に変わって、数日が経った頃ね。それぞれの大陸に、それはもう厄介な虫の魔物が同時に現れたの。あまりのおぞましさと強さに、この世界は終わりだと当時の私は絶望してたわ)
その雰囲気は今まで見たどんな魔物とも違う、あまりに異質な魔物だった。
突如、この世界の各地に大きなアメボウズのような虫が、五匹同時に現れる。アメボウズって分かるかな? 簡単に言えば、海底に住むデカいナメクジだね。
その魔物は漆黒の体液で世界をドロドロに溶かしながら、むしゃむしゃと猛スピードで世界を食べ始めた。海だろうが山だろうが大陸であろうがまるで関係なく、放っておけば一年もすれば世界は食い尽くされてしまうスピードだったそうだ。
そして、その魔物にはどんな攻撃も効かなかった。攻撃してもまるで空気に攻撃しているように、意に介さないのだ。
さらに、ある程度魔物に近づいてしまうと、体液でしっかり反撃してくる。それに当たると、瞬く間に溶かされて、食べられるのだそうだ。
「あっ、もしかしてそれ、『暴食の虫魔王』ってやつじゃないかな?」
僕は覚えている。セカイ様が転生する時の言葉を。
『創造神の野郎!この世界への追い打ちとして、禁忌である暴食の虫魔王を差し向け……』
全て聞き取れなかったので今まであんまり気にしていなかったが、この時に言っていたのはそれじゃないかな? やっぱ虫ってろくなやつがいないわ。
で、ここからは全て僕の予想。
刈り上げ君は「神力がなければ世界は運営できない」と言っていたが、多分じいじの自信のある瞳を見て、後から少し不安になったんだろう。だから念のため暴食の虫魔王を刺客として差し向けることで、世界にトドメを刺そうとした。
……ほんと、肝の小さい男だ。
(そんなどうしようもないような五匹の魔物の一匹を殺したのが、そこにいるチタン様なの。それから他の大陸でも、チタン様と同じくらい強い英雄が、その暴食の虫魔王とやらを殺してくれたのよ)
それからエチエチお姉さんは、その五人を「五英雄」と呼んでいるらしい。
……えっ、じいじと同じくらい強い人が、この世界には五人もいるの?
ハハッ、ワロス。
……この世界やっば。




