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さしすせそで攻略する異世界 〜ショタな天使族による無自覚な“可愛い”が止まらない〜  作者: ながつき おつ


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27話 この世界に犬は存在しない。

評価やブックマークをしてくれると嬉しいです。お願いします。



 魂の古傷をいたわりながらルナと二人、森から帰ると、そこには真四角で真っ黒な建物ができていた。


「「え?」」


 意外な光景に思わず唖然とし、しばらく立ち尽くす。


 僕はログハウスみたいな家を想像していたんだけど……なにこれ?


 そもそも、何の素材? こんな真っ黒で硬そうな素材、見たことないけど……?



 とりあえず、僕らは家の玄関らしきところから家へ入る。


(カナタ、ルナ、おかえり)


 母は表情こそ変わらないが、羽をふぁっさふぁっさと震わせている。


(おう、帰ったか! おかえり!)


 じいじはそれはもう少年のような笑みで、いたく満足げだ。二人ともどこかツヤツヤになっている気がする。この家の出来にそれはもう満足なのだろう。



 家の中を見渡すと、案外内装は普通だった。森の丈夫な木を中心に、木の温もりがわずかに感じられるシンプルな設計だ。


「……ただいま」


「ただいまー。で、ツムギお母さん、チタンおじいちゃん、この家はなに?」


(ふふっ、いいだろう。この家ならば、どんな爆発だろうが耐えきって見せるぞ)


(ワシの力で魔物の骨や木材、石材、その他諸々の様々な素材をギュッと強引に圧縮し、さらに魂力で圧縮した素材を強引に安定させたのじゃ)


(その中心には私の硬質化した糸を施したことで、さらに耐久力をアップさせている)


「は、ははは」


 思わず乾いた笑いが出る。


 何を言っているのかあんまり分かんなかったが、母とじいじの創作意欲が爆発した結果、こうなったらしい。


 これじゃあ家じゃなくて核シェルターだよ……



 と、一瞬呆れはしたものの、よくよく考えれば何も問題はないか。安全だし、内装は普通だ。これはこれでいいのかもしれないね。


 こうして僕ら家族のための家ができたのだった。


(さあ、もっともっとたくさん家を作ろうか! まだまだアイデアは尽きない。どんどん建てよう!)


(ガハハハハ! そうじゃな!)


「え?」





 あれから一週間の時が過ぎた。ここには家族四人しかいないのに、数十もの家が無駄に立ち並んでいる。思った以上に何かを作ることが楽しかったのだろう。


「カナタお兄ちゃん! チタンおじいちゃんとツムギお母さんはしばらくいないし、ルナのペットを一緒に探しに行こっ!」


 ルナが僕に頭をこすりつけながら、上目遣いで僕を見上げる。


 なんとも頼み方のうまい妹だ。そんなことされたら、兄は答えざるを得ない。

 

「確かにあの二人は一ヶ月ほど帰ってこないだろうし、ちょうどいいね。ようやくルナのユニークスキルが火を吹くってわけか」


「うん! この能力はルナが強くないとあまり意味のない能力だから、今までは活躍できなかったけど……これからは思う存分使っていくよ!」


 ルナのユニークスキル――トモダチの輪は、簡単に言えばテイマー能力みたいなものらしい。


 この世界の魔物というのは心を持たず、他者への攻撃性のみを持つ害悪だ。同族や生き物を喰らい、生物濃縮の要領でどんどん強くなっていく。そんな魔物を制御するなんて本来不可能だが、ルナのユニークスキルはそれを可能とするらしい。


 魔物を圧倒し、力を認めさせれば成功だ。その魔物は、ルナの「トモダチ」となる。トモダチになれば、ルナに存在を作り変えられ、魔物に心が芽生える。そこで初めて、魔物が言うことを聞いてくれるようになるらしい。


 ……でもさ、力でトモダチにするっていうのは、なんか物騒……いや、それは今に始まったことではないか。



「最初はワンちゃんがいいな! せっかく家ができたことだし、番犬が欲しい!」


「犬ねえ……」


 この世界で犬なんて可愛い生き物を見たことがない。


 僕が知っているのは、実体を持たないゴーストウルフという魔物と、ゾンビコヨーテという触れるものすべてを腐らせるとにかく臭い魔物と、雪山に住むおっきくて真っ白な狼くらいだ。


 真っ白な狼の方は僕では倒せないレベルの魔物らしいので、実際に相手にしたことはない。母から話をうっすら聞いている程度だ。


 僕も強くなったとはいえ、基本的に生き残るためだけに磨いた戦力だ。火力不足な僕は、ある程度のレベルの防御力を持つ魔物には、負けることはなくても勝てないんだよね。


「大丈夫! ルナのユニークスキルで魔物の存在を作り変えたら、可愛い生き物に生まれ変わるはずだから!」


「ほえー、そりゃいいね」


 なにせこの世界では全ての生物、自然が生き物を殺す形をしているので「可愛い」が徹底的に不足しているのだ。可愛いはどれだけあっても困らない。


「ルナは『可愛いは世界を救う』っていうカナタお兄ちゃんの前世の記憶を信じて生まれてきたからね! この未完成な世界を可愛いで満たして、ゆっくり完成させていくつもりなんだよ! それがルナの夢だから!」


「ほう、可愛いは世界を救う……その言葉は覚えていないけど、なんかしっくりくる。多分前世の僕もそう思っていたんだろうね」


 黒歴史の時のように、この感覚は度々起こる。僕の魂は僕以上に前世のことを覚えているのだろう。



「じゃ、カナタお兄ちゃん。龍の姿になるから、背中に乗って?」


「おっけー」


 ルナは人型の姿から、龍の姿へと変化していく。


 龍の姿のルナは、以前見たときより一回り大きい。どうやら成長とともに大きくなっていくようだ。


「よし、準備完了。ルナ、振り落とさないでね」


 といっても、無駄に空中で旋回とかされない限りは大丈夫だろうけど。


「もちろん! じゃあ、出発しんこー!」


 僕を乗せたルナはビュンと勢いよく飛び立つ。


 僕も空を飛べるが、ルナの飛行能力は僕より圧倒的に速い。目にも止まらぬ速さで空を切り裂くように飛ぶというのは、なかなか気持ちの良いものだ。


「るんるんる~ん、カナタお兄ちゃんとお出かけ、楽しいな~」


「そんなに楽しい?」


「うん! だって、カナタお兄ちゃんと一緒に色んなところへ行くために強くなったんだもん! 今のルナには理不尽な力からカナタお兄ちゃんを守ることができる。それが嬉しいのっ!」


 ルナは空中を楽しげに旋回し始めた。


 あわわわわ! 危ない! 旋回のスピードが早くて落ちはしないが、それでもなかなかヒヤヒヤした。


「えへへへへ、ごめんね、カナタお兄ちゃん。テンション上がって回っちゃった」


「……まあ、いいけど」


 そんなに楽しそうに謝られたら、兄としては受け入れなきゃね。


「そういえば、どこに行くのか決めてあるの?」


「うん、ツムギお母さんから聞いた、雪山に行こうと思ってるよ」


「ああ、おっきくて真っ白な狼が住んでいる場所か」


「そうそう! 名前をブリザードダイアウルフって言うんだって。全長十メートルもあるのに、吹雪に隠れて見つけにくいらしいよ。あとシンプルに頑丈で早くて、噛み砕く力がものすごいんだって」


「十メートルもあるなら、犬小屋はすっごく大きくしなきゃだね」


「それも大丈夫。可愛くする時に小さくするつもりだから。最初は基本に忠実にいくよ」


 可愛いの基本の三原則――小さい、丸い、ふわふわ。それは僕達の共通認識だ。もちろん可愛いは奥が深すぎるので、例外は多数あるだろうが、なんだかんだ基本は大事。


 とはいっても、虫だけは三原則を守っててもダメだからね。僕、極端な虫アンチだから。


 あえてもう一度言うけど、僕、強烈に猛烈に虫アンチだから。


 虫は全て等しくゴキブリだ(過激派)。虫なんて生きてる意味ないんだから今すぐ滅んでくれ(感情論)。虫畜生にはそれが唯一できる善行だから(聞く耳持たず)。


 特に修行時代、寝ている間に僕の羽をもしゃもしゃしたGだけは……絶対に、絶対に許すまじ。


 頭を振り、虫という存在を頭の中から強引に吹き飛ばす。


 考えるのすら嫌だからさ、お前の居場所なんてねえから。どっか行けよクソが、でも自然のサイクルで世界を良くしてくれるなら、僕の周囲以外ではいてもいいよ(DV彼氏)。


「……」


 おっと、何故かルナが僕の邪悪なオーラに当てられて、少し引いている。もう少し態度を取り繕わないと。


 ……こほん、小さくて丸くてふわふわのワンちゃんかあ。楽しみだなあ。



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