26話 この世界に家は存在しない
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家族団らんしながら日々を過ごしていると、あっという間にルナの修行期間である一年が過ぎた。
たった一年で、ルナは本当に強くなった。
ステータス面で言えば、こんな感じ。
比較のために、まずは修行前。
――ステータス――
名前:ルナ
種族:龍族
固有特性:神様見習い:世界を背負う覚悟があるものに与えられる。神力を使う素質を秘める。
ユニークスキル:トモダチの輪
体力:S
攻撃力:S
防御力:S
魔力:■■??
器用さ:S
素早さ:S
【ルナ:戦闘力8192】
で、これが修行後。
――ステータス――
名前:ルナ
種族:龍族
固有特性:神様見習い:世界を背負う覚悟があるものに与えられる。神力を使う素質を秘める。
ユニークスキル:トモダチの輪
体力:SS
攻撃力:SS
防御力:■■??
魔力:■■??
器用さ:SS
素早さ:SS
【ルナ:戦闘力1048576】
うーん、僕は僕のことをある意味チートだと思っていたが、ルナこそ本物のチートだね。
ステータスだけで言えば母を超えている。魔力や防御力なんて、測定不能だ。これはもはやじいじと並ぶということだ。
ある程度強者となればあまりステータスは関係ないとはいえ、これは凄いことだ。この世界でルナを傷つけられる者は、もはやじいじくらいの強者でないと難しいだろう。
「カナタお兄ちゃんは、ルナがどんな理不尽からでも守ってあげるからね!」
「ふふっ、なかなか可愛いことを言ってくれる妹だ。兄としては最高だね」
そうそう、僕はこういう慕ってくれる妹か弟がほしかったんだ。こんな素敵な妹ができて、本当に嬉しい。
ゆらゆらと龍の尻尾を揺らすルナの頭を優しく撫でる。すると、ルナは耳をピンと立て、「きゅい!」と龍形態の時の鳴き声みたいな声を出した。
甘える時は、自然とこういう声が出るそうだ。
「でも、浮気したら捻り潰すから、それは覚えておいてね。カナタお兄ちゃんはルナと家族だけを愛してくれればそれでいいの」
ルナが僕に正面から抱きつきながら、上目遣いで僕を見上げる。
いやでも、ルナは胸がなあ……今もこれだけ密着しているのに、柔らかさが皆無だから。僕はあの柔らかさにとても恋い焦がれている。
ということで、丁寧に説得しよう。
「あのね痛たたたたた――!」
骨がミシッって、ミシッって!!
「カナタお兄ちゃん、分かった?」
「あっはい」
どうやら僕のえっちでグラマラスなお姉様とキャッキャウフフするという夢は、ルナがいる限り叶いそうにないみたいだ。
◆
ルナの修行が終わり、当面のやることがなくなった今。僕達はじいじの縄張りの中心に来ていた。周囲は背の高い森に囲まれ、柔らかい砂と、流れる小川に、小さな花畑。
「じゃあ、ここに家を建てよう!」
ここに決めたのは、一番安全でかつ環境がいいからだ。
別にこの四人で一生のんびりと家族団らんする生活も楽しいと思うんだ。でも、僕やルナにはやりたいことがあるし、母やじいじにだってこれから先、生きがいが必要だ。
だから僕達家族はたくさん話し合って、みんながワクワクできる方針を決めた。
家を建てるのが、これから進む道への一歩目だ。
「こうやってね、森の丈夫なツルと、丸太を使って組み上げていくと……うん、こんな感じ。これで最低限家っぽいものはできるはず。家の建て方はなんとなく理解した?」
僕にさしすせそ魔法と、自分の持っている力の応用力という才能があってよかった。これならログハウスが作れる。
ちなみに、家造りのさしすせそで、ある程度の基礎知識は共有済みだ。といっても【さ】作図【し】寝室【す】炊事場【せ】整地【そ】倉庫と、そこまで大した知識を共有したわけではないんだけどね。
(ああ、要は雨風が防げればいいのだろう。私の糸が役に立ちそうだ)
(ガハハハハ! 家造りというのもなかなか楽しそうだのう!)
母やじいじの天使族組は、何かを自らの手で生み出す時、とてもワクワクするみたい。だって羽がふぁっさふぁっさと揺れているもん。きっと今あの二人の頭の中では、いろいろなアイデアが生まれているのだろう。
もしかしたら天使族はものづくりの才能があるのかもしれない。思えば最初に母に教えた料理だって、今や母の方が上手だ。火の入れ方とか、素材の保存の仕方とか、魔力の使い方とかまで、料理する上で母はものすごくこだわる。
母が試行錯誤が好きだから料理が上手くなったと今までは考えていたが……ただ天使族という種に眠っていた「ものづくり好きの才能」が芽吹いただけかもしれないね。
「ルナはよく分かんないから、指示をちょうだい!」
「じゃあ、ルナには素材集めを頼もうかな。これからいっぱい必要になるだろうしね。ルナは魔力が多いから、収納魔法のスペースもとんでもないし、適任だと思うんだ」
木やツルだけでなく、魔物素材とかも利用できるだろう。この世界の魔物、すっごく丈夫だし。
「分かった! 行ってくるね!」
「あっ、やっぱり僕も行くよ。あの二人に家造りを任せたほうが、良いものができる気がするからさ」
見るからにあの二人はものづくり欲が爆発してる。そういう時は任せるに限る。
僕達は森の中へと進んでいく。そこで出会った魔物をルナが倒しながら、同時に生えている丈夫で真っ直ぐな木とツルを収納魔法に入れていく。僕はそのお手伝いだ。
「なんかさあ、ここの木って、すっごく顔に見えて怖くない?」
なんというか、「ムンクの叫びレベル百」みたいな、そういう顔の模様に見えるんだよ。おぞましい木の魔物にしか見えなくてさ。
「大丈夫! 擬態した木の魔物はルナの圧で襲ってこないから!」
あっ、この森には木の魔物自体はいるんだね。こわー。
「絶対に一人でこの森に来ないでおこう」
仲良くおしゃべりしながら、どんどん作業を進めていく。話題は尽きることはない。
今回の話題は、もっぱらルナが輪廻の輪から拾ってきた僕の前世の話が多かった。僕は覚えていないが、前世の僕はなかなか面白い人生を歩んでいたらしい。
元カレと勝手に別れて、それでも好意を見せ続けて、そのくせ相手からの好意には答えなかったり。世界征服を本気で考えて実行したり。なかなかやんちゃな女の子だったそうだ。
……まあ、全ては真実の愛のためにやってたことっぽいし、仕方ないね。
突然、ルナは何かを思いついたような表情を浮かべた。
「あ、そうだ。ねえ、カナタお兄ちゃん。自己紹介を考えたから、ちょっと見てて」
僕の前方へ行き、いたずらっぽく笑いながらクルンとこちらへ向いた。
「さあ、私の目を見て。知ってる? 五秒以上目が合うと、恋に堕ちるんだって。 ――なんて、本気にした? キラキラ光る闇より生まれた闇の妖精、ルナです。よろしくね」
……あ、あ、あっ。
「ぐふっ」
ルナの謎の自己紹介を見ていると、言語化不可能な謎の気持ちが僕に襲いかかってきた。
えっ、なに!? 何この気持ち、心の古傷が痛むような、消し去りたいような……
この気持ちはなんだ。
なんで僕、こんなに胸が痛いの!?
「ふふふっ、これ、カナタお兄ちゃんの黒歴史をモノマネしたんだよ。覚えていなくても、思うところはあるみたいだね」
「ちょ、ルナ、それやめて! 全く覚えていないのに、魂が恥ずかしくてのたうち回ってる! 魂が『うわああああ!!』って叫んでるから!」
「これいいね。カナタお兄ちゃんの弱点みっけ! ふふふっ」
どうやら前世の僕には何か痛い思い出があるみたいだ。




