21話 そこに理論は存在しない
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「きゅいきゅい!!」
銀色に光る小さな龍が僕たちの周りをビュンビュンと飛び回っている。その軌跡はまるで、生まれたことが嬉しくて嬉しくてたまらないことを身体で目一杯表現しているようだった。
飛んでいるあの子の見た目は「龍」ってより、「ミニドラゴン」って感じ。このニュアンス伝わるかな?
神聖だけど神聖すぎず、カッコいいと言うよりは親しみやすい系。ほんのりぬいぐるみみたいでちょっと可愛いみたいな。
そんな楽しそうな龍を見て、僕達家族は自然と顔をほころばせていた。
「にゅふふ、おいでー」
僕は両手を広げて龍を迎えた。すると龍は、僕に向かって弾丸のように飛んできた。
「うぐっ」
なかなかの威力だったぜ。みぞおち痛い。
僕がそんな風になっているのはお構いなく、龍は僕に頭を擦り付けて甘える。
「可愛い!」
この世界で真っ向から可愛い生物が生まれたのって、実は凄いことじゃない!?
っていうか冷静に考えて、可愛いとか関係なく凄いことが起こっているのか。
確かセカイ様によれば、今この世界には五種族しかいないらしい。最初はもっといたが、殺し合いの中で滅んでしまった種族も多いんだそうだ。
その五つの種族の中には、龍は含まれてなかったはずだ。
「そっかあ。この世界に新しい種族が生まれたんだね。
……でもあれ? 龍って人種に当てはまるのかな? 動物? 魔物?」
甘えてくる小さな龍を撫でながら、疑問を口にした。
すると龍が僕の身体から離れ、
「きゅい!」
鳴き声とともに突然輝きだし、龍の身体が光に包まれた――
「ふふっ、カナタ。私は人種だよ。龍族ってことになったみたい。これからよろしくね!」
僕の目の前に、中学生くらいの女の子が立っていた。
「うえ? なんで突然人型の女の子が……あっ、さっきの龍?」
どうやらこの子は人型になれるようだ。
「もちろん! カナタ! みんな! 私を生んでくれてありがとう!」
爬虫類っぽい大きな尻尾がゆらゆらと揺れている。猫耳を尖らせたような三角錐型の二つの耳が立っており、銀色の長髪がサラリと光る。
そんな可愛い女の子が、愛嬌ある笑顔を僕達に向けている。
「でもあれ、学校指定のジャージに……制服のスカート? どうしてそんな恰好なの?」
果てしなく暗い森しかないこの場所に、制服を着た女の子。なんともこう、このアンバランスさが……いや、ある意味なんか似合っている気がしてきた。
「ふふっ、おしゃれでしょ! 私って輪廻の輪にアクセスできるから、カナタが忘れてしまった前世の記憶も読み取れるんだ! その知識を元に、カナタの中学の時の格好を真似してみました!」
龍娘はくるっと回ってスカートをひらりと膨らませた。それから、じいじや母にも突撃していって、全力で甘えに行く。
そんな様子を僕はぼけっと見ていた。
ほえー、輪廻の輪にアクセスできるとは、あの子すんごいね。どれくらい凄いのかはよく分からないが、ある意味神様級に凄いことな気がする。
「そうだ! みんな、私に名前を頂戴! なるべくなら、可愛い名前がいいな!」
彼女がそう言うと、じいじと母が僕に視線を向けた。
「え? 僕? ママは僕のネーミングセンスとか期待してないんじゃ……?」
(それはそうだが、私やチタン様には可愛い名前など到底思いつかないだろう。なにせ、可愛いものを見たのはカナタが初めてだったのだからな。私達の中で可愛いとは、カナタ以外に存在しないのだ)
(うむ、可愛い名前と言われると、流石にお手上げじゃの)
なるほど。
「全く覚えてはいないけど、僕って前世では「可愛い」の研究者だったかもだし……頑張ってみるか」
僕、可愛いに造詣が深いもん。絶対そうだ。
「いや、カナタは前世では可愛いの研究者じゃないよ?」
「うえ? まるで見てきたように言う……ああそっか、実際に見てるんだ」
「うん! カナタの前世の記憶についてなら、私の方が詳しいよ! まあでも、見られたのは記憶だけだから、それに付随する感情は分からないんだけどね!」
なるほど、僕は感情や欲望のみ色濃く残っているから、ある意味僕と逆だね。
「ま、僕の前世のことはいいや。名前、名前ね。うーん、キュアプリティーラブリーエンジェル――」
「却下」
「じゃあ、キュアバハムート――」
「そのキュアなんちゃらっていうの、禁止! ほら、いっぱい考えて!」
えー、可愛いといえばこういうのだと思うんだけど……まあ、嫌なら言われた通りたくさん考えるか。
「じゃあ、夜空に光り輝いてたのがお月さまみたいだったから……満月、ムーン、ツクヨミ、クレセリア、兎、ルナ――」
「あっ、それ! やればできるじゃん! それがいい! そのルナって名前、気にいったよ!!」
彼女の耳がピンと立った。
「え? そんなのでいいの? キュア白竜とかの方がセンスあると思うけど……」
「そんなプ◯キュアとポ◯モンを足したような名前は嫌!」
彼女が僕の横腹に頭をグリグリして抗議をしてくる。地味にくすぐった痛い。
「分かった、分かった。君の名前はルナだ。今日からよろしくね」
「ルナ! 私はルナ。ルナはルナだよ! みんな、今日からよろしくね!」
(ああ、よろしく頼む)
(うむ、よろしくの)
「にゅふふふふ、ルナも今日から僕達のファミリーだね。僕の妹として、よろしくね!」
「妹……? なるほどね! でも、ルナはカナタの妻でもいいよ! うっふん!」
ルナが腰をくねらせながら、両手を頬に当てる。
「いや、僕、グラマラスな美女とイチャイチャするために男として生まれてきたから……うん、ごめんね」
確かにルナは可愛いけど、明らかに妹枠だ。胸がペタンコ超えてペタコンだもの。
僕がルナの胸を見て小さくため息を吐くと、ルナはがーんと実際に音がするくらいショックを受けていた。
っと、流石にちょっとノンデリカシー過ぎたか。胸へのこだわりは僕の欲の芯の部分でもあるから、こだわりが強すぎて思わず素直に言っちゃうみたいだ。
「ルナ、ごめん――」
僕が謝ろうとしたのをルナは遮る。
「でもでも! 胸がない方が色んな服がおしゃれに着られるんだよ! しかも、胸がない方がスタイルがよく見えるよ!」
「違う。違うんだよ。ルナ、聞いて」
ルナの肩に両手を置き、力強く目を見る。
「大きいおっぱいはね、そういう理論を超えた遥か先にある、尊い概念なんだよ。僕の魂がおっきなおっぱいを求めてるんだ。そこに理論なんてちっぽけなもの、介在し得ないんだよ」
僕のあまりに真剣な目つきに、ルナもおののいてる。
僕の魂の叫びがルナにも通じたよう――
「うわーん! カナタのバカ!! 意気地なし!! おっぱい魔神!! 変態天使!!」
「うわわわわ! ごめーん!!」
僕はルナにジャイアントスイングをされ、遥か彼方へ投げ捨てられたのだった。
――ステータス――
名前:ルナ
種族:龍族
固有特性:神様見習い:世界を背負う覚悟があるものに与えられる。神力を使う素質を秘める。
ユニークスキル:トモダチの輪
体力:S
攻撃力:S
防御力:S
魔力:■■??
器用さ:S
素早さ:S
【ルナ:戦闘力8192】




