17話 この世界に技の伝授は存在しない
評価やブックマークをしてくれると嬉しいです。お願いします。
(なるほどのぅ、それがワシらを無意味に殺し合わせとった元凶というわけか)
「そう。僕が刈り上げ君のいる場所へ案内するから、いつか倒しにいこうね!」
僕はピクニックへ誘うように、気軽にじいじを誘った。
僕のユニークスキルと、前世でセカイ様と話した記憶のおかげで、今すぐ刈り上げ君のいる場所にいくこともできると思う。
でも、やるならもう少し念入りに準備を整えてからにしたいよね。
(うむ、それは楽しそうじゃの。ガハハハハ!)
にゅふふふふ、復讐は時に人生にときめきを与えるからね。
心が復讐に囚われすぎるのはあまりよくないが、自分の人生の道中に気軽に復讐できる機会があるというのは、ある意味幸せなことなのだ。
それも、生きる意味や目標を失っていたじいじみたいな人には、特に。
(面白い話を聞いたことだし……そうじゃ、じいじから魂力に関するちょっとした秘伝の技を教えよう。見たところ、お主らは魂力をまだ最適化できてないようじゃしの)
「わあーい!」
魂力の最適化とは何かは知らないが、多分じいじだけの「色」だ。もらえるものはもらっておこう。
(ちょ、ちょっと待って下さい。そんな気軽に……いいのでしょうか?)
この世界では強さは財産だ。一人で戦いながら死に物狂いで積み上げてきた、自分だけの宝物。それに加え、自らの生存戦略的にも、気軽に自らの強さの秘訣を教えることなどまずありえない。
(構わん構わん。どうせもう、ワシはお主らと敵対することはないんじゃ。今から殺し合えと言われても、ワシにはできん。それが家族というものじゃろう)
(家族……そうですね。ふふふ。そっか、カナタだけが特別じゃないんだ)
母がほんのりと頬を赤らめる。じいじは視線を宙に彷徨わせながら、ポリポリと頬をかいた。
にゅふふふふ、ママが幸せそうで、僕も幸せー。家族って最高だね。
(コホン、秘伝の技といえど、ちょっとした魂力に関する小技みたいなものじゃ。これを理解すれば、実質的に魔力総量を今の十倍にまで増やすことができるであろう)
「え? それってかなりすごくない?」
(まあ、そもそも魂力を使える時点で相当の逸材なんじゃ。自らの力でそこに至っておる時点で、お主達なら数十年、数百年すれば、自らの力で最適化を覚えるじゃろう。ただそれを早めるだけじゃ)
さも簡単なことみたいに言うが、どう考えてもすごいことだよね。
僕達の身体は伸縮する魔力の器みたいなものだ。魔力にも質量があるので、器以上に魔力を貯めることができない。だから僕達は魔力をなるべく圧縮したり、器を鍛えたりして魔力総量を増やしてきた。
(お主らは魂力と魔力を混ぜて使っておるであろう? 見たところ、十の魔力に対し、一の魂力といった具合かの)
「うん。それが一番バランスが良くて、しっくりくるからさ」
今の僕達は、一割の魂力を軸に、その周りの魔力でコーティングするイメージで使っている。
魂力というのはとても繊細な扱いが必要で、その程度の量を強引にコーティングすることでしか、上手く扱えなかったのだ。
ただ、それだけでも今までと全然違うものってくらい、魔力の質が変わったんだけど……
(うむ、その感覚は間違っておらん。魂力と魔力のバランスはそれでよい。その若さでそこまでの境地へ至るとは、見事じゃ)
母は何も言わないが、ピクピクと口角が動いている。羽もこころなしかふぁっさと揺れている。
(じゃがの、その技術には先がある。魂力には不思議な性質があっての――)
じいじによる魂力の授業が始まった。
なかなか難しい話で、お馬鹿な僕が理解するまで、かなり時間がかかった。
「……なるほどなるほど、ようやく分かった。要は魂力と魔力を融合させればいいんだね!」
今までの僕達は、例えるなら、ソフトクリームのミックスみたいに魔力と魂力を混ぜて使っていた。混ざってはいるが、一体化はしていない。はっきりとした二色だ。
じいじは、それをぐちゃぐちゃに混ぜて、ならして、均一な一色にしたそうだ。それだけで魔力の質は全然違うものとなるらしい。
混合から融合に。これがじいじの言う、魂力の最適化だそうだ。
(魂力の最適化をしても、今までの魂力と魔力を混ぜて使っていたのと質自体は変わらん。じゃがの、魔力の圧縮度はまるで違う。魂力は魔力を質量以上に圧縮できる不思議な性質があるからの。
故に十倍もの魔力量を扱えるようになるのじゃ)
授業をしながら、実際にじいじは指と指の間に魔力と魂力を混ぜたものを見せてくれた。
基本的に魔力というのは透明なので、それを見るために僕達は魔力を目に流す。
……なるほど、そうなっているのね。確かに均一に混ざっているし、魔力とはもはや別物ってくらい密度がある気がする。
さっきまで、二つの混じり合わないものを融合させることを上手くイメージできなかったが、ここまで親切に教えてくれたのなら僕でもできそうだ。
「うぬぬぬぬぬ……最適化!!」
と、叫びながらやってみるも、失敗。
魂力と魔力、お互い反発し合って全然融合してくれないんだけど。
「さーいーてーきーか!!!!」
……全然できねえ。てか、できる気がしない。なにこれ?
(ガハハハハ! コツはとにかく強引に二つを混ぜることじゃ! ここに繊細さなど欠片もいらん。必要なのは爆発的なパワーじゃよ)
パワー……僕の苦手分野だ。
(あっ、できました)
「えっ、もう!?」
さっきまでうんうん唸っていた母が、アドバイスを受け、最適化を身につけたようだ。
「ホントだ! できてる!!!」
(ふむ、これを習得するのに最低でも一年はかかると計算しておったのじゃが……とんでもないセンスじゃの)
じいじはもはや凄いを通り越し、呆れているように見える。
流石ママ、略してさすママ。
にゅふふふふ、ウチの母、最強なんで!
「ねえ、ママ! 僕の身体でもやってみて!」
(ああ、分かった)
母が僕の身体に魔力の糸を通し、僕の身体を操っていく。
それを不思議そうに見ているじいじ。まあ見ててよ。
「んっ、あっ、うぅうううう」
僕の身体を弄くられ、声にならない声が漏れる。
でも、集中だ。なんにも抵抗せず、集中。
うんうん、うーん、ああ、なるほど、思っている百倍くらい強引にやるんだ。
「なるほど! こうやってやるんだ!」
母のおかげで感覚は掴んだ。
「むむむ! 最適化! ――できた!!」
(は?)
にゅふふふふ、一度でもできてしまえば、未熟な僕だけの力でもできるんだよ。僕は自らの力を応用することが大の得意だからね。
これが僕と母の親子の絆だ!
(ええ……そんなことある? いや、そんなのは……)
これには流石のじいじも開いた口が塞がらないようだ。
「さすがママだね!」
さすママ。ちょっとチート過ぎるね。うんうん。
(確かにお主も凄いが、カナタもカナタじゃ。魔力というのは自らの意思に従って自然と他人の魔力には抵抗してしまうはずじゃがのう……あまりに心を許しすぎじゃ)
そりゃあ当然だよ。だって推しだもん。飼い主にお腹を見せて甘える犬ってくらい、母のことは信頼してるんだから。
推しのために命を捧げられないような雑魚、日本人にはいないからね。




