13話 この世界にパーティーは存在しない。
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(……コホン、まあいい。少しだけヒントを出そう)
「えっ、いいの!?」
(ああ、考えるにしても、何か取っ掛かりは必要だろう)
僕は母のテレパシーに耳を傾ける。
(おそらくだが、カナタの前世では、何かの“極致”が見えたのだろう)
「極致?」
(答えと言ってもいいのかもしれない。いずれにしろ、どこか目指すべき到達点が見えていたはずだ。そして、おそらく今のカナタにも、前世のカナタにも、その極致に届いていない)
「うーん、なるほど、そう言われればそうな気が……なんかもうちょっとみたいな感覚というか、何かが足りていないという感覚というか……」
極致――ってことは、前世の僕が最終的に導き出した「色」か。うん、そう言い換えるとすっごくしっくりくるな。
でも、その色が具体的にどんなのか、それは全く思い出せない。
「うー、結局モヤモヤしたままじゃん!」
(ふふふふふ、そのモヤモヤは大切にしたほうがいい。結局のところ今のカナタは、方向性のない力を手にしたまでなのだからな。これからの長い人生で、自分の納得する力を手に入れるんだ。分かったな)
「はーい」
そう言えば僕って生まれたばかりだった。天使族の寿命は大体二百年と言われているので、まだまだスタートダッシュを切ったばかりなんだ。
……でも、方向性のない力かあ。言われてみれば確かにそうだなあ。
(まあ、いずれカナタなら答えを見つけるだろう。安心してその極致とやらを目指せばいい。どうせ極致など存在しないんだから)
「ん?」
(その極致とやらにたどり着いたとて、またそこから見える景色を見れば、まだまだ先があることに気づくだろう。極致とは総じてそういうものだ)
なんだか妙に血の通った言葉だなあ。母も同じような経験を何度もしているのかな?
今度母にいっぱい昔話をしてもらおう。母って僕の話は聞きたがるのに、自分の話はあんまりしないから、頑張って聞き出さなきゃね。
「うん、まあいいや。とりあえず今は自分らしくマイペースにいこう。悩んで動けないなんて、僕らしくないしね。人生なんて楽しんだもん勝ちなんだから」
そう言って母の横顔を覗き見ると、わずかに口角が上がっていた。
とりあえずこれからは、もっと僕のさしすせそ魔法を磨いていって、僕だけの強さを手に入れよう。方向性のない力から、僕の望む力に変えていこう。
おそらく僕のユニークスキルは、どんな強者にだって通用する。
あっ、もちろんこの能力はただ一発芸をする能力ではないよ。
復習を兼ねて、僕は僕の持つ力について詳しく頭に思い浮かべる。
僕のユニークスキル、さしすせそ魔法は、魔法を発動してから、頭に浮かぶ五つの文字、
【さ】
【し】
【す】
【せ】
【そ】
これに当てはめた言葉によって効果が変わる魔法だ。
ただ、無作為に言葉を埋めるだけではこの魔法は効果を発揮しない。空欄に埋める言葉に統一感があって、初めて魔法は成功する。
……その仕組みが分かるまでほんと苦労したよ。さしすせそ魔法を持っているということは分かっても、なんとなく「世界を創造し、人々を導く」魔法としか分からなかったんだから。
僕が最初にこの魔法を成功させたのは、後輩ムーブのさしすせそ。前世のおぼろげな記憶を参考に、しっくりくる言葉を当てはめた結果、成功した。
やはり困った時に頼れるのは前世だね。おそらく前世で僕が教えてもらった魔法がこれだろう。正直、内容を具体的に思い出せなかったから、再現するのに苦労したけど……成功したってことは、合ってるはず!
その時にやったのはこんな感じ。
「さしすせそ魔法、後輩ムーブの世界!」
【さ】「最強っす!」
【し】「信じられない!」
【す】「崇拝してます!」
【せ】「世界一!」
【そ】「尊敬してます!」
その時は確か、事前に再現した言葉を全て埋めたんだ。すると、魔法の発動の条件を満たしたということが感覚的に分かった。
じゃあ何が起こるかと軽はずみに試してみた結果――母にとんでもないバフ能力が加わった。ついでに、母のテンションも爆上がりというおまけ付き。
……ただ、とんでもない魔力の消費量により、僕は半日ほど寝込むことになったんだけどね。しかも、寝込んだ時点で魔法は切れたようだし。
魔法自体は成功したのに、こんな失敗をしてしまったのは、僕が母を言葉通り「最強」にしようとしたからだ。そりゃあそんな身の丈に合わない力を使おうとすれば、無尽蔵に魔力を必要とするよ。
これはさしすせそ魔法の中でも、かなりの上級編に当たるだろう。
こんなに難しいのなら、前世でもこれを上手く使いこなせなかったはずだ。当面はこれをMAXの力で使いこなせるようになって、前世を超えるのが目標かな。
MAXの力でと言ったのは、魔力量を調整すれば、今の段階でも使えるからだ。僕のさしすせそ魔法、統一感のハードルさえ超えれば、かなり融通が効くからね。
「スカウター」
ふと僕がさしすせそ魔法で作った新たな魔法を発動させると、僕の脳内に二つの数字が表示された。
【カナタ:戦闘力4096】
【母:戦闘力524288】
この数字は僕が生まれたばかりの時の戦闘力を1として、他の者の強さの指数を量る魔法だ。まあ、あくまでこれは目安だけど。僕の中の男の子の気持ちに耳を傾けた結果、こういうのがほしいと言われたから作ってみた。
この数字が表すことは、僕は一年で約五千倍強くなったということだ。そう考えると凄くね?
もちろん生まれたばかりの僕が弱すぎたってことには目を背ける。そこら辺に生えている木ですら、戦闘力5もあった時は、流石にびっくりしたなあ……
ちなみに、スカウターを作った時の魔法はこんな感じね。
『さしすせそ魔法、初級・クオリティ・オブ・ライフを上げる魔法の世界、展開!』
【さ】索敵
【し】収納
【す】スカウター
【せ】洗浄
【そ】掃除
◆
地下三千メートルの洞窟から出て、母の縄張りに帰ってきた直後。
「ねえ、ママ。せっかく修行が一段落したし、パーティーしない?」
(パーティー……? それはどんなものだ?)
「美味しいものをいっぱい食べて、夜通しおしゃべりして、たくさん楽しむんだよ!」
(ふむ……それはなかなか楽しそうだ。では、二人でパーティーといこうか)
「わあい! ビバ、パーティー!」
ということで、地上に戻った僕たちは、パーティーの準備をすることに。
(だが、美味しいものとはどういうものだ? 天使族は食事を必要としないので、私はほとんど食事の経験がない。美味しいものとやらに詳しくないが……)
「大丈夫! そんなときこそさしすせそ魔法だよ!」
僕のユニークスキルは「世界を創造し、人々を導く」能力だ。人々を導くのだってお茶の子さいさい。
えっと、確か前世には料理のさしすせそがあったはずだ。それを再現すれば……
うん、案の定具体的には思い出せない。
えっと、ううんと…………よし! 全く思い出せないし、アドリブでやれば、なんとかなるだろ。
さて、まずは構築から入ろうか。
「さしすせそ魔法、料理の世界! 構築!」
【さ】
【し】
【す】
【せ】
【そ】
僕の頭の中に五つの空欄が展開した。
えっと、料理に必要な要素だよね。これを構築していこう。
「さ、さ、さ…… 【さ】才能? かな。これは絶対必要だよね。
次はし。これは簡単、【し】塩!
す、す、す…………【す】スパイス? うん、多分そんな感じだったはず。
次はせ、か。これも簡単だね。【せ】センス!
後はそ、そ、そ、そ……あっ、思い出した。絶対これだ! 【そ】素材!」
【さ】才能
【し】塩
【す】スパイス
【せ】センス
【そ】素材
うん、完璧だね。誰がどう見ても完璧。とてもしっくりくるし、非の打ち所もない。前世の料理のさしすせそも十中八九こんな感じだろう。
あえて文句をつけるなら、【し】を食材に、【そ】をソルトに変えるくらい? でもまあ、どっちでも大して変わらないからいいや。
さて、ここからが僕の腕の見せ所だ。
さしすせそ魔法の五つの欄が埋まりさえすれば、効果にはかなり応用が効かせられる。
五種類それぞれの魔法にするか、はたまた五位一体の一つの魔法にするかだって自由だ。今回は五種類それぞれの魔法にするとして。
はてさて、どういう塩梅の魔法に設定しようか……




