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さしすせそで攻略する異世界 〜ショタな天使族による無自覚な“可愛い”が止まらない〜  作者: ながつき おつ


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11話 この世界にユニークスキルを持たない人種は存在しない

評価やブックマークをしてくれると嬉しいです。お願いします。



 僕の叫びも虚しく、僕は様々な場所に引きずられ、あらゆるパターンの死を疑似体験した。


 こうやって過酷な日々を過ごすことで、僕は徐々にこの世界の過酷さを身体で理解していく。


「守ってもらえればいいや」という甘い考えは、自然に消えていた。


 この世界では「守られる」というのも簡単じゃない。守られるにしても、最低限の強さが必要だというのが、痛いほど身にしみたのだ。


 そのおかげか、母も驚くほどあっさり魂力が身についた。通常魂を認識するのが死ぬほど難しいらしいが、何故か僕にとって魂力の習得はとても容易だった。


 ……もしかしたらこれも、前世で魂だった頃の記憶を覚えていたから? うーん、分からない。



 何十回目かの臨死体験は、マグマの中に沈められ、マグマを泳ぐ何万匹ものピラニアのような魔物に食いつかれる経験だった。


 なんとか逃げ出したボロボロの僕を、母は魔力の糸を使い治療する。


(ふむ、通常死の淵において、爆発的な力を巻き起こし、一皮向けるはずなのだが……息子は死の淵を超えても、薄皮程度しか向けていない。どうやら息子は絶望的に生存本能が薄いようだな)


 そんなハードな修行をさせておいて、母は眉間にうっすらとシワを寄せ、少し不満げな様子を見せていた。


 いや、見せていたっていうのは、心の目で見ていただけなんだけど。今の僕、ゴア表現がちょっとあれな姿だからさ。たとえ目が食われようが、推しの姿を心の目で見ることなんて簡単だ。それに、天使族の回復力ならどうせ回復するし。


 

 僕は何度も死の淵を超え、成長している。魂力もあっさり身につけた。だが、母の思うレベルには至ってはいない。


 その原因は、生存本能の薄さと、極度のマイペースさ。それが合わさり、僕は死の淵だろうがあまり態度が変わらず、生存をすぐに諦めてしまうそうだ。それが僕の最も悪い癖だって。


 ……いや、そんなこと言われましても。それは努力でどうにもならなくない?


(だが、少なからず収穫はあった。空間支配能力や、微細な身体のコントロール、サポート能力においては群を抜いて優秀だ。この修行が効果をなさないのなら、息子の場合は長所を重点的に伸ばしていくべきだな。ふふふ)


 母は修行が上手くいかなかったことすら楽しそうだ。本当に人を守り育てることが楽しいのだろう。羽をふぁっさふぁっさと震えさせ、ニンマリと口角を上げている。


 ほんと、僕の育成方法を考えている時、すっごく楽しそうに笑うんだから……


 そんな表情をされると、嫌なんて言えないじゃん。推しが幸せで僕も幸せです。はいはい、母のことが好きですよーだ。今更どうひっくり返ったって、母のこと嫌いになんてなれないんだからね。分かってるの? はー、好き。


(ということで、ここで死の淵を乗り越える修行は中止だ。ここからは引き続き基礎の底上げをしながら、長所を伸ばすことにしよう。大丈夫だ、どんな短所だろうが、私が長所に変えてやろう)


 どうやら母は、どんな状況であろうがもっと「マイペース」でいられるように修行方法を変えるそうだ。


 

――それから、また何日も時が流れた。


 長所を伸ばす修行は、とにかく試行錯誤の連続というだけだ。とにかく自分に何ができるのかを見つめ、実践し、修正していく。


 この地道な修行が、僕は一番楽しかった。


 その理由は二つあるのだが、その一つは、この修行が「魂との対話」という側面があるからだ。


「にゅふふふ、僕って天才だ」


 数分前にやり合った魔物との戦いの反省会が終わり、閉じていた目を開き、一人つぶやく。


 僕は自分を卑下しないので言うが、僕はわりと天才だ。なぜなら、前世から引き継がれた三つの大きな才能があるからだ。


 一つ反省するたび、僕の動きに前世が垣間見える。

 一つ反省するたび、僕は前世の才能を発掘できる。

 一つ反省するたび、前世の才能がくっきりと形になっていく。


 そうやって覚えていない前世と対話し、しだいに三つの大きな才能が垣間見えたのだ。


 一つは応用の才能。僕は自らの覚えた力を応用して繰り出すのが大の得意だ。


 母によって強引に身体で覚えさせられた様々な身体の動きは、組み合わせることができる。あらゆる無数のパターンがあるが、その時の最適な答えを選ぶことが僕にはできる。


 もう二つの才能、これは……うん、現状だとあまり強さとは関係ないかな。それに、今世で役立つのかもまだ不明だ。だってその才能、とびっきりの「女の子」の才能と、「舞い」の才能だもん。


 でも、このうちの舞いの才能の方は、強さにも活かせるんじゃないかって今考え中。そろそろ形になりそうだから、乞うご期待ってところかな。


「さて、そろそろまた次の指定された魔物を狩るための移動を始めなきゃね」


 この世界ではただの移動ですら過酷だ。どこもかしこもわんさか魔物がいるから。でも、圧のない僕は案外魔物に見つかりにくい。


 そおーっと、そおーっと移動させてもらうからね。多分どこか遠くで母が監視してくれているっぽいけど、相当なことがないと助けてくれないだろう。だから魔物さん、僕に襲いかからないでよ。頼むから。



 隠密しながら、地道な修行が楽しいもう一つの理由について頭を巡らせる。


 この修行が楽しいのは、僕が異世界に転生して覚えたユニークスキル「さしすせそ魔法」がようやく力を発揮するからだ。


 そう、実は僕、ユニークスキルを持っているんだ。


 というか、全ての人種は自分だけのユニークスキルを持って生まれてくるとセカイ様から聞いている。その事実が広まっていないのは、自分がユニークスキルを持っていることに気づいていない人も多いからだ。


 僕のユニークスキルがどういうのかに気づいたのも、とにかく自分に深く向き合い続けていたおかげだ。唐突に「あっ、僕ってこんな能力を持っているんだ」と気づきを得たんだよ。


 母のように魔力を糸にしたりもユニークスキルだし、他にも身体を硬化させたり、相手を麻痺させる声を出せたり、特殊な毒を出せたり……それこそ時を止めたりなども、全てユニークスキルだろう。



 ただ、今まで僕のユニークスキルはまったく役に立たなかった。


 だって僕のユニークスキルは「世界を創造し、人々を導く」力だからね。基礎の底上げにおいては使い道はない。


 せっかく異世界に転生して覚えた僕だけのスキルなのになあ……


 でも、こと応用に関してなら、このユニークスキルはとても便利だ。なんたって僕のさしすせそ魔法は、万能だからね。



 様々な環境、様々な魔物と戦い、あらゆる手段を試す日々の繰り返し。


 その合間には母との実践練習も挟まるので、気の休まる暇はない。


 でもさ、やっぱり女性は「それはそれとして」が得意なんだ。僕のさしすせそ魔法で、おしゃれしたり、身綺麗にしたりという、クオリティ・オブ・ライフを上げてみたりなんて寄り道もしたり。


 苦しくも充実した楽しい日々。


 そうしていると、あっという間に時は過ぎていった――





「いやあ、ほんとこの一年、濃密で濃厚な日々だったよ」


 地下三千メートルの洞窟内、魔力が吹き荒れる特殊な環境で、僕は立っていた。


 ここは植物一つ咲いていない、とても寂しい場所だ。壊れた異常魔力の渦がひしめき合い、ただただ濃密な重さを持つ風だけが吹き荒れている。ここは呼吸をすることも、身体を動かすことも、魔力を動かすことも容易ではない。とても過酷な環境でもある。


 この場所で、僕は母に最後のテストをされる。


 大丈夫、今の僕ならできるはずだ。



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