第9話 僕は修行、奴隷は金稼ぎ
料理屋の中は、いつもより少し人が多かった。
珍しいと思ったが、来週から始まる町の祭りの準備のためらしい。
この祭りは、町の安寧と平和を願って始まった行事で、年々規模が大きくなり、今では年に一度にまとめられ大きな祭りになっている。
冒険者になる前、僕はスラム街の子どもたちと一緒に、露店の準備を手伝って小遣いをもらいながら楽しんでいた。
冒険者になったのも、この祭りで美味しいものや珍しいものを買いたかったからだ。
お金がなければ、見ているだけしかできない。
「じゃあ明日からの話だが、この町でやることはもうほとんどない。ジョンはスキル上げ、マクダフは露店で料理担当、つまりコックさんだ。」
おっさんは酒を飲みながら言った。
僕は料理を食べながら話を聞く。
また大金を稼ぐのかと思ったが違った。
確かに僕のスキルはまだ低い。今後も冒険者を続けるなら、スキル上げは避けて通れない。
マクダフがサンドイッチ売りを担当するらしい。
あれは大変だったが、将来を考えればスキル上げを選ぶしかない。
「トリポリオの旦那ぁ、俺は何を作ればいいんですかい?」
マクダフが聞く。
「戦場ではパン粥とか、よく分からない肉を焼くくらいしかやってませんがねぇ」
戦場の食事は想像以上に粗末らしい。
戦場で前線にいたマクダフは、僕たちよりもおいしい料理を食べているかと思ったが、実際は違った。
固いパンのおかゆや、何の肉かわからない肉を食べさせられることも多かったらしい。それでも戦場で戦い続けられたのは驚きだ。
僕ならあきらめるか逃げていただろう。戦争は、思っている以上に過酷で、食事も満足できるものではなさそうだ。
「ヘスサとパンポタを売る。材料は用意するから、お前は調理だけでいい。売り子もこっちで用意する」
おっさんが言った。
そのとき、僕は気づいた。
マクダフのステータスをまだ知らない。
「マクダフのステータスってどうなってるの?」
「旦那ぁ、鑑定スキルないですもんね。これですよ。覚えといてくださいねぇ……」
マクダフがステータスを見せてくれた。
――奴隷のマクダフの現在のスキルステータス
■武器系
刀剣スキル:16
槍スキル:36(最も得意)
盾スキル:21
戦闘技術スキル:20
■生産系
料理スキル:32(かなり高い)
薬調合スキル:6
■ その他
鑑定:1(最大)
ギャンブル
■ 負債
負債:1,000,000g
王法違反及び軍規違反支払い金額 ※1
※1 支払いは金貨または白金貨のみとする
僕よりはるかに強い。
鑑定スキルも持っているし、この町でも上位クラスだろう。
初めて見るスキルがあった。それは「ギャンブル」だ。
薬調合は錬金術に関係するスキルのようだが、ギャンブルというスキルは僕にとって全くの未知だった。
その下にある「王法や軍規違反の支払金額」という項目は、僕には内容が難しくてよく理解できなかった。
「このギャンブルってスキルは何?」
「旦那ぁ、これは幸運スキルみたいなもんです」
「ジョン、それは運のスキルだ。使い方を間違えれば破滅する」
おっさんが説明した。
どうやらこれが奴隷落ちの原因らしい。
「僕はスキル上げだけ? お金はどうするの?」
僕は不安になって聞いた。
「そこにお前の奴隷がいるだろ?マクダフが稼ぐ。奴隷の稼ぎは主人のものだ。負債もだがな。お前はスキル上げに集中しろ」
そして続けた。
「来週までに刀剣20、戦技15だ」
「無理だよ! 今は刀剣4、戦技2だよ!」
一週間でそこまで上げるなんて聞いたことがない。
だが、おっさんの言うことはこれまでも正しかった。
「明日も早い。今日は解散だ」
おっさんはそう言って店を出ていった。
宿屋に戻ることにした。
だが部屋にはベッドが一つしかない。
「仕方ない、マクダフには床で寝てもらうか…」
そう思っていたが――
部屋に入るなり、マクダフはベッドで寝てしまった。
しかも大男で動かせない。
「……」
結局、僕は椅子で寝ることにした。
(あのお姉さんの方ならきっとこんなことにはならなかったはずだ…)
そんなことを考えながら、僕は目を閉じた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 4
盾スキル 3
戦闘技術スキル 2
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
115g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・食料品ドロップスクロール 5枚
・奴隷のマクダフ




